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┏┏┏[2004-7-20]┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏
 「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
 名古屋ビジネス情報  主宰 川津商事株式会社
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   テーマ:新しい都心への回帰トレンド

都心への回帰に対する考え方は、最近の不動産ビジネスにおいて欠 くことのできない重要な要素となっている。弊社では、名古屋にお いては都心への回帰は決して強いトレンドを示していないという考 え方を従来からとってきた。さてここで新しいトレンドを紹介する。

まず最初に、弊社が従来から紹介してきた都心への回帰とは? 都心への回帰は高齢化社会、少子化、低成長時代など社会生活の変 化にともなって、新しく生じてきたニーズが都心に集中するために 生活の拠点が都心に回帰する現象である。

新しいニーズとはまず高齢化社会に対応した医療サービスに関する ものがあげられる。日本では誰でも平等に国立病院などの最高級の 医療サービスを受けることができる。したがって最高級の医療レベ ルを持つ施設へのアクセスがニーズとして重要になる。

東京のベットタウンでは、これらの施設に通うのに1時間も2時間 もかかるような居住エリアから、施設が集中する都心への移転が生 じた。しかし名古屋の場合は郊外のベットタウン、例えば春日井、 多治見などから都心へのアクセス時間は1時間未満である。

医療機関へのアクセスが居を移転させるほどの明確なトレンドとは なっていない。

次に、新しいニーズは他に少子化に伴う子供の教育の高度化が上げ られる。子供が少なくなった分高度な教育に対するニーズが高くな った。或いはこのような都心に住んでいる孫たちに会いたいがため に近くに高齢者が住みたくなる傾向がある。

しかし名古屋においては教育機関のレベルにおいてそれほどの差は 無く、又私立学校も都心から東に位置した住宅エリアに近接してい る。当然孫たちの顔を見るのに、1時間も2時間も必要とする状況 にはない。郊外のベットタウン・ニュータウンから居を移転させる ほどの強いトレンドとはなっていない。

最近の名古屋でも、都心部への新築マンションなどへの購入し実際 に入居する人は確かに高齢化を示している。しかしこれらの多くは 新しく住宅を買う第一次取得者がたまたま都心部で格安物件が出て いるために都心を選択していると考えられる。

決して今ある郊外の住居を売却して買い換えても都心に戻らなくて はならないという強いニーズが、市場ニーズとして顕在化している わけではない。

つまり名古屋での都心への回帰は、都心の地価が低迷して、都心で 新築が買いやすい時はトレンドとして現れているが、都心の地価が 反転すれば不明確になるような、非常に弱いものでしかない。これ が弊社の従来の考え方であった。

さて最近日本で紹介された、海外の論文の中から新しいトレンドを 予想してみる。この論文はアメリカのシカゴで行われた調査におい て、CBD(都心)からの距離によって住宅の価格が影響を受ける 時期とそうでない時期があったという内容である。

論文自体は、ヘドニック法、リピートセールス法、フーリエ展開法 などのモデルを使いその実効性を論じたものであるが、結論を簡単 に要約すると次のようになる。

シカゴにおいて1980年代半ばにおいてはCBDからの距離が住 宅の価格に影響を与えていなかった。しかし1990年代の入ると CBDから1マイル離れるごとに住宅価格がある一定以上下がる事 が観測できた。つまり都心への近接ニーズが明確になり、明確に住 宅価格に影響を生じた(顕在化し始めた)というものである。

論文ではその要因としては、CBDでの雇用の増加、特にCBD内 における高額なサービス部門の雇用の増加挙げられるとしている。 これは東京で起きている都心への回帰を裏付ける根拠でもある。

この考え方を名古屋にあてはめると、今現在名古屋の雇用はご存知 の通りトヨタ関連の好調さによって高いレベルを維持している。し かしトヨタ関連の雇用は必ずしも名古屋のCBDではない。むしろ 東部の三河地区に中心があるといえる。

これが現在の名古屋において、都心への回帰が明確なトレンドでな いといえる根拠でもあると考える。

しかし、最近名古屋が注目されてトヨタなどの高収益の企業が名古 屋都心に進出し、名古屋駅前、栄などのエリア間競争がビジネス機 会の囲い込みを行い、これらのエリアで他エリアから資本、人、物 の流入が生じ、名古屋の都心で新たな雇用の増加、高収益の実現が 起きればシカゴで見られたような都心への回帰のトレンドが生じる と考えられる。

これらの一連のトレンドが都心部での住宅価格を押し上げ、ファン ダメンタルによる地価の変動ではなく、トレンドによる地価の変動 が生じる可能性がある。つまり都心への回帰である。

名古屋駅前などの都心への集中が、果たして高収益を実現するのか どうかを見守りたい。

引用文献
住宅土地経済No.53,2004,SUMMER
「都心への近接への重要度の増加」笠島洋一
McMillen,D.P(2003)
“The Return of Centralization to Chicago:
Using Repeat Sales to identify Chicago
in House price Distance Gradients”

以上



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