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===[2001-3-20]================
 「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
        名古屋ビジネス情報
       主宰 川津商事株式会社
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名古屋・不動産に関するビジネス情報誌「名古屋ビジネス情報」
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   テーマ:定期借家契約の導入

三菱地所、森ビルなどが2001年度から新規賃貸オフィスビル契 約のすべてに定期借家契約を導入することを表明している。定期借 家契約の導入によりどのような影響が出るのか?

弊社では過去に何度もこの定期借家契約の動向について取り上げて きた。現在賃貸市場は借りて市場となっていて、導入のタイミング がまずく、現在この契約が導入されているのは、一部地域の商業施 設を除いてほとんどない。

賃貸不動産市場が不景気にあり、借り手が強いポジションを持つ状 況にあり導入されにくいのが現状である。更に定期借家契約の本当 の意味を理解せず、ただ単に借り手に不利な契約と決め付けて、不 動産業者がこの契約に消極的なことなどが大きな原因にもある。

逆に、三菱地所、森ビルが導入を進める背景には、東京都心の空室 率が極端に改善されてきたことがあげられる。定期借家契約の大き な特徴は、契約期間終了を持って更新拒絶ができる点である。従来 のように正当な事由無くして契約終了ができず、多額の立退き料を 要求されることがない。更に契約賃料に増減額請求権がなくなった 点である。

定期借家契約の導入の本質は、簡単に言えば法規制によって規制さ れていた賃料、契約期間、賃貸方法等に市場原理を導入することと 言える。貸し手、借り手が自由に期間、賃料、その他の方法を取り 決めることを是認するものである。

この法律が導入されると、一般的に弱者と定義される借り手が一方 的に不利になるというのが、新定期借家権の導入にあたっての反対 意見であった。市場原理に則ると言うことは、市況のファンダメン タルな状況によって、例えば現在のように借り手が強い時期、反対 に貸し手が強い時期に応じてそれを反映した契約条件が決められる という事である。片方が一方的に不利有利と言う性格のものではな い。

更にこの契約のメリットは、今まで借家権の壁に隠れていた優良な 住宅が供給されることである。その他に市場原理の導入によって市 場が活性化されることである。不動産の証券化には欠かせられない 要素でもあった。

従来の借家法では近隣の賃料相場と著しく変動した場合、賃料の減 額を要求できる請求権があった。したがって貸す方は賃料情報を絶 対にオープンにしなかった。これが賃料の情報公開を遅らせ、不動 産インデックス等の整備がまったく進まなかった。

貸し手の大家は、賃料の減額請求される根拠となる賃料に関する情 報を秘密にすることによって、この減額請求権に対抗したのである。 当然これらの情報が集まる不動産会社は守秘義務が科され、益々情 報は開示されなくなる。これが逆に不動産の投資を環境を進歩させ ずに、結果的に今日のような構造的な不動産流通不況を強いる事と なっている。

今回の三菱地所の導入は、この契約方式の市場への浸透の大きなイ ンセンティブになるものと考えられる。すぐに右へ習えしたがる企 業、生損保も貸しビル等で導入されれば非常に大きな影響をもつも のと考える。

具体的にこの契約方式の導入により出る影響は、賃料が市場動向に 敏感に相関するようになる。つまり名古屋駅前などで、一貫して高 い入居率を維持している新しいビルなどの賃料が上がり、空室率の 高い古いビル、マネージメントの悪いビルの賃料が下がる事になろ う。

一律の横並び賃料が解消され、当然古いビルの建替えなどが促進さ れ市場が活性化される事になる。しかし市場原理の導入の悪い側面 も頭に入れておく必要がある。市場原理ではいい不動産は益々人気 が出るが、悪い不動産施設は更に人気がなくなる。

本来ならそこで悪いビル施設が、再投資リニューアルされて再度市 場に復活してくる姿が望ましいのであるが、資金難、マネージメン ト力不足、その他の理由で市場原理から完全に落ちこぼれてしまっ た不動産施設は、一体どうなるのであろうか?

想像できるのは、アメリカの映画に出てくるハーレム、劣悪、悪の 巣窟となっている不動産ビル施設である。アメリカのマンハッタン ではこのような負の遺産を大変な時間とお金をかけて再開発をして、 現在の繁栄にたどり着いている。

環境問題により、劣化した不動産施設の廃棄処分の難しさ、人口減 による空家の絶対的増加、不良債権の未処理、社会悪の増加等など、 この先市場からドロップアウトする不動産施設を生む要因は数多く ある。

古くなった分譲マンションの建替えの法改正とあわせて、このよう なことが生じない法整備が必要である。例えば今の行政手法では、 公共施設例えば、廃校となった小学校に住み着いたホームレスを 排除できるのであろうか?

ましてや民間で、経済的破綻をして、権利関係が複雑になった不良 不動産施設に入り込んだ社会悪を排除する力は、今の行政にはない だろう。早い段階でこれが阻止できれば言いが、時間がたてばわけ のわからない既得権が生じる。こういった外部不経済は結局国民が 負担することになってしまう。

名古屋で考えるであれば、エリア間競争に敗れて経済基盤は低下し ている商業エリア内において、将来このような可能性を持つ事が懸 念される。

以上



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