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主筆:川津昌作
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7年ぶりのニューヨークマインド

〈2022年11月20日〉

7年ぶりにニューヨーク(NYC)に行ってきました。今回はそのと りとめのない雑感をご紹介させていただきます。

まず第一に感じたのが、街から新聞紙がほとんどなくなっていた。 NYC(ニューヨークシティー)、マンハッタンと言えば、朝の通勤に は必ず、コーヒーカップと新聞紙をもって足早に人が出勤する姿が ビジネス街の有様であった。又、朝のセントラルパークでは、ベン チに座って新聞を読む人が多くいた。

その結果公園内あるいは街中道路に、新聞紙がごみとして散らかっ ているのがNYCのイメージであった。しかしそれら姿がほとんど見 ならなかった。NYCでは町中にnewspaperと書かれた、新聞専用の ごみ箱が設置されている。しかし中を見ても新聞が一つも入ってい ない。

リアルな新聞紙から、スマホなどのデジタルニュースに移行してい るのだろう。野暮な心配だが、これから冬に向けてホームレスが新 聞紙なしで寒さが防げるのだろうか?心配になった。

新聞紙からデジタルのへの移行は、ある意味日本が一番遅れてるの ではないだろうか?それがまた日本社会全体のデジタル化、社会の 効率性改革の遅れになっていると考える。

そしてついに、NYCの象徴であるタイムズスクエアー一帯から日本 の企業広告が一切姿を消していた。かつては東芝、TDKと言った日 本企業の広告が輝いていた。残念なことである(スウォッチの広告 にドラゴンボールのキャラクターが使われていた。)。

次に、マンハッタンの街全体が暗い。これはイメ―ジではなく、照 明である。特にNYC名物の夜景の明かりが暗い。新しいiphoneの 撮影の不具合かなと思いつつ、比べてみたが、やはり街の照明が減 っている。

以前は、夜になっても摩天楼のオフィスビルが、全室電気がついて いた。今回はかなりそれが落ちている。理由がテナントは減ってい るのか、エネルギー対策で省エネになっているのかは解らない。ち なみにホテルの部屋設定温度も上限があった。

一番衝撃なのが、NYC名物の摩天楼のスカイライン(建物の屋根 線、空の境界線)が崩れてしまっている。理由はここ5年ぐらい で、従来の高さをはるかに超越したペンシルビルのような細い、 100階近くある高層ビルがところどころに登場しているからだ。

この超高層ペンシルビルがあるのはセントラルパークサウスの周辺 であるが、結果的に、既存の50階建てクラスの従来のNYCの摩天 楼を形成していたビルのスカイラインが後退してしまっている。高 層さを感じなくなってしまっている。何か、ところどころ折れた櫛 の歯みたいな景色だ。

NYCマンハッタンは、1900年代初頭に建てられたいわゆるアールデ コ様式の古典的な10階建てクラスのビル、次に戦後のアメリカの 復興成長期に登場する50階建て台のビル群によってこれまでのス カイラインが形成されてきた。 おそらく今後50年くらいで100階建ての超高層ビルが次なるスカ イラインを形成するのかも。更にその100、200年後スターウォー ズに出てくるような未来都市になるのかも。

5番街も暗い。ビルの改修工事ばかりやっており、自慢の商業ビル のブランドブティック店舗のきれいなファサードが、隠されてしま っている。この問題の背景には古くなったビルの大規模修繕工事と テナントの空き店舗の改修工事がある。

5番街の商業ファサードがかつての輝きを見せていない。工事ばか りで通りの見通しも暗く、歩きにくい。空き店舗も目立ち、かつて の華やかな5番街の面影がない。

マンハッタンのビルの老朽化はホテルが一番顕著である。どのホテ ルも古いイメージだ。最近の新しいホテルが建っていない。客室は 改装を重ねきれいだが、建物がくすみ古く、低層イメージができて しまっている。

それに代わって新しく登場しているのがコンドミニアムである。い わゆるマンションだ。例えば2015に完成したイーストリバーから セントラルパークまで眺望が楽しめれる96階建ての 432PARKAVENUEなどの超高層のペンシルビルが、新しいコンドミニ アムとして登場している。

432PARKAVENUE は2017年に1700万ドル(一戸330平米)で売り出 されたが、現在2000万ドルあたりのようだ。特にセントラルパー クが見下ろせるミッドタウン界隈に多く登場している。やはり、こ こ数年の金融緩和による投資マネーがあふれているのだろう。

次に物価の話をしよう。とにかく飲食などで高い。チップが最低で 18%になっていた。通常20%だ。特に日本の円安ドル高からする と、驚異的なアメリカの物価水準である。

日本でもおなじみのNYCの有名店であるサラベス(SARABETH)で朝 食として、何か卵料理プレート、コーヒー、ジュースを頼むと48- 7ドル、約50ドル弱になってしまう。これに20%のチップ、合計 60ドルを円ドル145円で計算すると8700円である。昔のイメージ では30ドル3-4000円と言ったところだ。

一方、コモディティー価格を見てみると、例えばノースフェースの ダウンジャケットは、中心価格帯商品で220ドルから340ドル、最 高級のプロの登山家が着るダウンジャケットでも600ドル台であ る。

ほんの二年前の円ドル110円時代の感覚で換算すれば、デフレの象 徴の日本より安いかもしれない。アメリカのインフレの問題は人件 費の高騰問題と言っても過言ではないだろう。

おりしも米国中間選挙があり、インフレがバイデン大統領の失政に よるものであるという主張が共和党の攻撃であり、物価対策の金利 上昇政策がトーンダウンしているが、アメリカのインフレをコモデ ィティー物価水準と人件費の物価高を混同して考えると、後世に残 る本当の意味での失政になりかねないと考える。

日本のインフレは逆である。円安によるコモディティー物価が高 く、人件費が抑えられている。

この物価高、更には最近のコロナ禍問題に起因していると考えられ るが、街中のデリカショップが姿を消している。アメリカのデリカ ショップはベーグルなどのファストフードショップも兼ねていた。

コロナ禍、更にコロナ禍からの復活を妨げる人件費の高騰が原因だ ろ。特に個人的経営のデリカテッセンが極端に減っていた。逆にリ バティー・ベーグルのようなチェーン店舗化したビジネスが増えて いる。もちろんリバティー・ベーグルは美味しい。

昔のデリカショップでは、朝の「ハーイ」から始まる店員とのコミ ュニケーションで、今日はどんな種類のベーグルに何を挟むのか、 各人のカスタマナイズした注文をしていた。このコミュニケーショ ンこそがNYCマインドだった。

これがチェーン店化すると、例えばマックの店のようにすべて写真 でメニューが紹介されていて、指で指すだけである。店員も、ベテ ランではなく、スタバのような若い女の子たちが、アルバイト感覚 で働いている。

時間をかけて、NYCなりのコミュニケーション文化が大きく変わっ ていく感じがした。小資本の小売店舗の隆盛が景気の波により生き 残れなくなり、やがて大資本店舗に吸収されていく都市経済を如実 に物語っている。

最後に、夜のイーストリバーサイドを走っていると、川を挟んだク イーンズの方が輝いていた。新しいコンドミニアム、オフィスビル がクイーンズ地区で旺盛に建てられている。従来クイーンズ側から マンハッタンの夜景を見て楽しんだが、近い将来、反対にマンハッ タンから見るクイーンズの方が有名になるかもしれない。

とりとめもない雑感になりましたが、NY徐々に人が戻りはじめて ています。しかし日本人は見かけません。日本は貧乏な国になりま した。これが感じた本音です。

インフレは経済循環で言えばファンダメンタルズの成長ではなく、 リスクプレミアムの成長です。しかし経済成長には変わりありませ ん。インフレはいずれ収まりますが、価格が元に戻ることは通常あ りません。通常でないのはデフレです。インフレについていけない と言う事は経済成長から脱落と言う事です。

昔は、インフレに強い不動産などに資産を変えてインフレを乗り越 えたわけです。しかし今のインフレの本質は人件費の高騰です。そ の人件費が日本だけが世界の成長についていけないわけです。

以上

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