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主筆:川津昌作
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英字論壇のキーワード apocalyptic levels

〈2022年7月5日〉

盛夏暑中お見舞い申し上げます。選挙報道を見ていると野党の中で は維新が伸びそうだ。維新の政策が他の野党とそんなに大きく違う のだろうか?維新だけが伸びる理由は何処にあるのか?弊社の考え は最後に。

今年から来年にかけて西側先進諸国では主要国の国政選挙が続いて いる。その中で様々な争点が議論されてきた。今回は、最近の英字 新聞で記載された“apocalyptic levels”と言うキーワードを使い 世界の論壇のトレンドを紹介しながら、日本の今回の国政選挙の争 点を点検したい。

“apocalyptic levels of food price inflation”と言う英語表現 で論評された記事がある。「食料の驚異的なインフレ価格」という 意味であるが、このapocalypticは日本語にすると「黙示録」程度 の訳になってしまう。

黙示録は解りやすく言えば、宗教上の最後の審判がなされ、世紀 末、大惨事が起きることを連想させる言葉だ。つまり欧米諸国では 最終的な大惨事に格付けされる形容詞である。要するに、最近のイ ンフレ問題であるが、インフレの問題視の程度が日本と世界では全 く温度差が違うという話である。

食糧価格の問題は、一般に言われているようにロシア侵攻問題、コ ロナ禍のパンデミック、エネルギー問題、気候変動が複雑に絡み合 っているという論点は日本と同じだ。ただ一時的ではなく、長期に わたり悩まされる問題であり、それがポピュリズムを引き起こした り、食糧危機になったりして、社会に重大な脅威となると海外では 懸念しているわけだ。

言わずもがな、市場経済導入の大義名分は理論的に資源の適正な配 分ができることにある。しかしそれは平時であって、いったん何か 大きなリスクイベントが生じると、価格変動が乱高下し、バブルが 発生する。

バブルの経済的理論的功罪は、古い市場を壊し新陳代謝をもたらす が、一方で資源の適正な配分を妨げる。つまり需給のバランスが崩 れ価格が乱高下する。

今回の供給ショックにより、食料価格が世紀末を起こすくらいの価 格になり、それによって一部の途上国では壊滅的な食糧不足が生じ 生存の危機にさらされる状況だ。

今欧米で、一番政権に圧力がかかっているのがエネルギー価格の高 騰である。もちろん直接の原因はロシア侵攻問題にあるが、国民が 感じている恐怖は、一時的なものではなく長期的に生活を脅かす問 題と感じ取っているからだ。

現状の日本は、欧米に比べて比較的穏やかなエネルギーの価格上昇 となっているらしい。それは国からの補助金など公的資金が出動し ている点にあると言われている。いわゆる財政支出が機能している わけだ。

欧米の状況と違う点がこの財政支出にもある。世界では、コロナ禍 で公的債務が膨らんでいる中で、これ以上の債務による財政支出が できないという財政規律が働いている。これに対して日本には現状 全く財政規律が機能していない。

いまだに異次元の金融緩和以上に無限の財政支出(MMT)がなされ ている。国の借金は世界の中で戦争当事国を除くと日本だけが突出 してしまっていることは周知の事実である。現況の全ての政治家も 全く意に介さない。いくらでも使えるのは自分たちの権利であるか のようだ。

「10%ぐらいのインフレを5年間ぐらい国民に強いれば、現在の国 の債務も半分くらいに目減りする。今まで国民はいい目をしてきた のだから、5年くらい我慢できるはずだ」とは誰も言っていない が・・・。

もし野党が自民党を押し切って、金融緩和、財政出動、低金利、国 債債務を争点にすることができれば、結果はどうあれ日本の民主主 義もレベルアップするだろう。誰もノーと言えず戦争に突入するよ うなものだ。

エネルギー不足、食糧不足だけでなく、様々な産業資材、生活必需 品、例えばレアメタル、精密機材、ハイテク機材そして社会インフ ラとなるような医療品などなどが、グローバル市場で適切な配分が なされなくなっている。

これらは、世界で統一価値観がシェアされ、グローバルスタンダー ドの下で自由な規律のあるサプライチェーンが機能していた時代の 比較的優位競争論の一時停止、あるいは終焉を意味する。

その中で、このような世界状況で、今後、生き残る国、躍進する国 はどのような国かと言う議論がある。それは経済安保で勝ち残り、 必要な財物の確保を持続できる安保政策で成功を収めた国が生き残 るといわれている。

コロナ禍のワクチンの配分を例にとると、均等に世界中に行き渡 るグローバルスタンダードは機能しなかった。経済安保では有効な ワクチンをどのように確保するかが問題となった。ここで重要にな るのが、持てる者と持てない者との「ウインウインのフレンドシッ プ関係(friendly relationship)」の構築だ。自由なブロック経 済ではない。

半導体、レアメタル、ワクチン、小麦、石油、鉱物資源、水、軍事 資源など今後不足すると考えられる資材の相互融通関係だ。悔しい 話だが、中国が実施してきた相互互恵関係がまさに、ポストグロー バリゼーションで効果を奏している。

極端に言えば、極めて同質性が高い親密な価値観を共有できる同盟 ブロック経済ならいいが、多様ながらも規模を求めた自由なブロッ ク経済に、自国の存亡をゆだねる時代ではないと言う事だ。

日本は、一昔前の今ではほとんど機能しなくなったWTOの自由貿 易の理念をよき思い出として、いまだに至上命題としている国であ る。これも今回の国政選挙の争点にならなければならない重要な問 題だ。

では日本が、持てる国との間でどのような互恵関係が築けるか? これは中国と同じ考えになる。豊富な外貨資産を元にビジネスチャ ンスを提供するしかない。外貨を使い切った後は?それまでに恒久 的な有効な関係を築くしかないだろう。

以上をまとめると、世界の論壇では、日本では想定していない驚異 的なインフレ、食料問題に対する畏怖が生じ始めている。それがポ ピュリズムの台頭など政治不安を引き起こしている。

クロ―バル関係のトレンドは、スケール効果を求めた大規模なブロ ック経済ではなく、安全保障、経済安保を実現する二国間関係の構 築である。もちろんそこではイデオロギーを超越した唯物史観的な 世界になるかもしれない。

今の一強の政治体制では、争点の自由度に極めて制限がかかってい る。安定を求める代償はこれらの争点が将来大きなリスクとなった 時支払わねばならなくなる。

日本では皆が勝ち組に入りたい。その結果第一党は勝者となり、第 二党以下は敗者となる。残念なことに野党では争点の提起すらでき ない。ちなみに日本では東京に居なければ勝ち組にはなれない。

さてそんな野党の中で、維新だけが頑張っているという報道がなさ れている。維新と言う政党の本質は「大阪」と言う地域政党と言う 理解でしか、その答えが見いだせない。大阪地域社会のファンダメ ンタルズは今万博に向けて上り調子でもある。

もし日本の政治体制が、皆勝者に群がり、第一政党以外すべて敗者 で争点すら提起できず民主主義が維持できない状況は残念である。 これを、もし自民党VS地域政党の戦い構図にすれば、また変わっ た観点から日本の民主義の再構築ができるかもしれない。

勝者の自民党を支持して東京にいるが、実は出身は大阪で大阪を応 援している人が、地域支持をすれば票がバラけるかもしれない。そ んなことをすれば地域対立を起こすという懸念もあるが、現実に現 在の自民党は東日本を大きな票田とし、大阪の維新、中部の民主の 色分けが長いことされてきた経緯がある。

むしろ一時的には、ガリバー「東京」概念の構造変化をもたらすか もしれない。

参考文献:“THE COMING STORM”The GuardhianWeeklyVOL206.22

以上

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