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主宰:川津商事株式会社
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年末年始特別号 −クライメットチッピングポイント−

〈2019年12月25日〉

今年も一年ご利用いただきましてありがとうございます。今年を通 じて株価も2万円台をキープし、今や2万円半ばを探ろうとしてい ます。終わってみれば経済が無風の一方で、台風水害などの災害が 年々拡大し甚大化しています。地球温暖化のリスクがすぐそこまで 来ているような気がします。

まず今年のニュースレターを振り返ってみると、グローバル経済で は「プラットフォーム」とか現代貨幣理論等の「非均衡理論」の話 題が多くありました。次いで仮想通貨に関する話題を多く取り上げ ました。三菱UFJ銀行が店舗を大幅に減らすというリアルな社会構 造変化が顕在化した年でもあります。

筆者に一番インパクトを与えたのが、米経済の株主資本主義見直し と言うニュースでした。更にGoogleが既存のスーパーコンピュー タを超える量子コンピューターに成功したニュースもインパクトが ありました。現在の監視だけでなく、GAFAが将来予測をも独占監 視する時代の幕開けです。

一方で地球温暖化問題が、昨年の環境運動家高校生グレタの登場以 来、日本でもブームが起きるかとみていましたが、日本ではほとん ど何も起きず、特に日本の若者の反応が低く、弊社でも取り上げる ことが無かったことが印象的であった。しかし水害の甚大化はそれ をあざ笑うかのように、大きな被害をもたらしました。弊社では沖 積層の住生活問題でこの点を議論しました。

科学技術系の雑誌(MIT)に、「クライメットチッピングポイント (climate tipping points)」と言う言葉が登場している。従来の 研究報告では今世紀中はないとされていた、後戻りできない壊滅的 な生態系の破壊につながる臨界点だそうだ。しかもここ十数年足ら ずで達する危険性があるそうだ。それが自動車の自動運転より早い 時期に達するという報告だ。今後環境が最優先になるのは確かだ。

ラクビーワールドカップが豊田スタジアムで成功裏に開催された。 多くの都市再開発が始動し、投資を誘発した成果が結集され、この まま来年の東京オリンピック大イベントイヤーにはいり、いよいよ 多くの外国観光者が来日することを予感される年でもありました。 外信による「東京の夜明け」と言うテーマで取り上げました。

消費税が導入され、ポイントビジネスが市場を席巻した。

さて本題である。今年、日本では新しいモーブメントとならなかっ たが、世界中で巻き起こったムーブメントがあった。まずこれから 論じよう。12月17日の日経朝刊に日本では見慣れない論調表現が 登場した。「若者の創造的破壊に備えよ」である。もちろん記者は 日本人ではない。エコノミストのコメンテーターだ。日本の紙面で はあまり登場しなかった論調である。

今年、世界中でデモが起きた。香港のデモは毎日のように日本でも 映像が映し出され、かつての大学紛争さながらの映像であった。実 はこの世界中で起きたデモは、その求める社会問題は、格差、貧 困、地球温暖化、民族問題、香港問題などそれぞれ違うが、共通点 が一つあることが英字新聞などで話題になっている。それが「若 者」行動である。今、世界中で起きている多くのデモなどの社会ム ーブメントの中心に若者がいる。

香港の問題は明らかに若者世代が、自分たちが育った民主的自治が なくなる将来を憂いた行動だ。環境少女スエーデンのグレタ・トゥ ーンベリにみられる欧米の環境問題のデモも、明らかに若者が自分 たちの将来を憂いたものだ。

世界中で起きているポピュリズムの本質は経済格差問題であり、こ の問題の主体も十分な職に就けない若者の不満であり、彼らの不満 が臨界点の達したのである。

しかしながら、日本では若者が行動を起こすことがほとんど見られ ない。その因果関係は不明確ではあるが、結果的に環境問題、地球 温暖化問題も、国内で社会問題化にまで達していない。むしろ社会 問題化を経ずしてポピュリズムは危険と言う考え方が浸透してい る。

海外では暴力デモ、テロを経てポピュリズムが危険と言う考え方に 至るが、日本ではある意味超越している。これが日本の美徳である なら素晴らしいと考える。ポピュリズムは反対意見を絶対に認めな いことから始まり、やがて暴力で敵を叩きのめだす。日本でも強者 と弱者の間で、全く譲らない関係はあちらこちらで見かける。

そして、経済格差問題も、確実に日本社会をむしばみはじめてい る。明らかに結婚・出産という明るい将来を享受できない貧困若者 たちがいる。しかし一見静かだ。炎上覚悟で言えば、時々起こす若 者の無差別殺人行為が不満の臨界点と言うのであるなら、日本の若 者ももう少し賢くなる必要があるだろう。



次に、世界中の都市経済の成長においても、若者がキーワードとな ろうとしている事例を紹介しよう。英紙ガーディアンに掲載された 最近の記事である。“How the super cities stole a continents wealth(どうやって巨大都市は富を吸収してづけているか?)”。

副題として「イタリアのミラノのようなハイテク都市が潤う一方 で、従来の産業都市は縮小している。」と言うものだ。(注:ガーデ ィアン紙のペーパー紙面とWEB記事には記載内容に違いがありま す。本稿はペーパー記事記載内容に基づいて論じています。)

今、ヨーロッパの都市ポジションのソート(順序の置き換え)が始 まっているという報告がなされている。ポスト産業都市として、ハ イエンドのサービスビジネスによる巨大な富を築いている都市が、 順序の前に来るという考えである。ハイエンドサービスビジネスが ミラノで言えばファッション、文化、ファイナンス、革新的な技術 等々だそうだ。

問題はこの新しく置き換わるミラノ、パリ、ロンドンなどの都市が 必要としている人々が、高い学歴を持ち、高い所得を得ている若い 世代だという結論に至っている点だ。

ポスト産業都市としてさらに発展する都市は、ハイエンドサービス ビジネスの対象となるハイソサエティな若者が絶対に必要になる。 ここでの若者のキーワードはデモの主役とは違う。成長の主役であ る。前出のデモの主役と、市場成長の主役と言う両極端に登場して いるわけだ。

東京も、まさに脱産業都市、ポスト産業都市になろうとしている。 そしてそのためにはハイソサエティな若者を必要とするのだろう か。少なくとも産業都市時代の熟年化したパーソンメインでなくな る。オールドエコノミーの新宿、港区からクリエイティブな渋谷に 東京の副都心が移行していることもその表れだ。

リニアの開通を契機に市場を大阪まで広げて、産業都市の機能を名 古屋大阪に譲り、代わりにリッチな若い世代を受け入れ、ハイエン ドのサービスビジネスに特化する東京。こんなイメージが出来そう だ。



次にグローバル経済の変化を抑えておく必要がある。地球温暖化問 題は、台風の水害を見ても待ったなしでリアルな生活に差し迫った 問題となっている。しかしその一方で国際的な話し合いのパネルで は解決では時間がかかりすぎることが十分過ぎる程わかってきた。

これに対して企業の技術革新で乗り切る必要があるという論調が今 年顕在化し始めた。株主資本主義が過度に効率化を求める姿勢は、 地球規模の問題をあまりにも無視し続けてきた。地球温暖化問題の 解決には、資本主義の考え方にもメスを入れなくてはならなくなっ てきたわけだ。

企業が、株主と言う特定の利害関係者だけでなく、地域、従業員、 そして地球家族の利益をも考えようと声を上げだした。これが今年 声を上げだした米企業の株主資本主義の見直しである。現時点では 本当かどうか懐疑的ではあるが、確かに声が高まってきている。

今既に、欧米市場では、環境問題、社会貢献をする企業の株価が高 く評価されることが確認されてきている。いざとなると、日本に比 べて欧米企業の動きは速いかもしれない。市場評価に弱い企業に、 市場が圧力をかけるのである。

日本は、欧米企業と比べると株主資本主義が際立っていない。一般 論ではあるが、従業員、地域の利害を重要視して、逆に株主のガバ ナンスが効かないと言われている。株式価値が重視されないという ことは、市場での株式評価によるガバナンスが効かないということ である。

極端な話、企業が環境性能の低い環境負荷の高い古いビルに入居し ていても、高いビル施設に入居していても株価に影響ない。欧米で は、企業が率先して環境重視にパフォーマンスを示し、環境性能高 規格ビル施設の需要は高い。地域を利害関係者として重視している と言えども、環境重視が行動に現れてはいない。そもそも世界の日 本の地球温暖化対策に対する評価は低い。

その結果、都市のビル施設なども環境性能に関係なく、30年40年 経ったビルが大きな顔をして都市のど真ん中に建っている。特に地 方での都市構造の更新は放置されている。もしこの切り口で地球規 模の環境問題の解決が始まるのであれば、日本のインセンティブは 低いかもしれない。



リニア関連の話題を総括しておこう。名古屋ではリニアが開通する と東京市場とのストロー効果が生じるという内生的な議論しかな い。残念極まりない。まず、名古屋の経済ポジションの大原則を考 えてほしい。

名古屋は、大阪から東京と言う世界に冠たる経済基軸の真ん中に位 置し、その成長に上質な労働力と潤沢なリスクマネー、濃尾平野・ 伊勢湾と言う産業スペース・産業インフラを提供して、それに対す る大きな報酬を得て成長してきた。この経済基軸の成長こそが名古 屋の経済圏の成長の源泉である。

今世界では、人口の集中が各地で起き、メガシティーからメガリー ジョンが形成され始めている。世界中で高速鉄道の需要が高まり、 スーパーメガリージョンを標榜し始めている。メガリージョン化 は、まさにこれからのグローバル経済をけん引する市場の規模拡大 競争だ。

世界で最も平和で完成度が高いスーパーメガリージョンが、東京─ 名古屋─大阪の太平洋沿岸メガロポリスである。この市場の生産性 を上げるのがリニアである。ミニ東京になるのは嫌だとか、大阪延 伸までの期間メリットがあるという議論は、あまりにも内生的すぎ る。稚拙だ。経済基軸の発展があって初めて名古屋が成り立つはず だ。名古屋が率先して大阪延伸を後押しするべきである。

現実に考えてきてほしい、名古屋駅前が今の姿に変えたのは名古屋 の地場資本力ではない。東京資本である。栄に多くの再開発プロジ ェクトは起き始めたと期待されている。これら起爆剤も松坂屋の東 京資本帰りである。名古屋が日本の経済力を吸収する力が名古屋を 又発展させている。

もっと言えば、名古屋駅前に、三井、三菱、トヨタ、JR、JP資本 群の新しい高層ビルの周辺ビル群の波及的な再開発が起きているか と言えば起きていない。40年-50年前の中層ビルが立ちはだかりま るで境界が敷かれているようだ。名古屋資本だけでは何もできな い。東京資本でしか再開発すらできないのが現状だ。

東京-名古屋間40分は、現況、東京駅を中心に中央線では吉祥寺、 東海道では横浜、千葉方面では船橋、あるいは埼玉当たりの鉄道圏 内である。この市場に名古屋が組み込まれるというのが東京の考え 方だ。名古屋から大阪へもアクセスも格段に良くなる。

このアクセスを利用して、ポスト産業都市化する東京に変わり、産 業ビジネス部門を名古屋が担うと考えるのが妥当だろう。前述のよ うに東京はハイエンドのサービスビジネス都市になる。リニアでつ ながるスーパーメガリージョンで東京のハイエンドサービスビジネ ス、名古屋のマニュファクチュアビジネスの住み分けがイメージで きる。

もう一つデータを加えるなら、愛知県の製造品出荷額に対して、東 京都が6分の1、大阪府が3分の1にまで縮小している。更に全国 の製造品出荷総額(319兆円2017データ)のうち東海4県が25%  関東6県が22.8% 近畿6県16%を占め、東海関東近畿16県を合 わせた、いわゆる太平洋沿岸メガロポリス圏で83.5%を占める。 注目すべきは大阪府が東京同様、既に金融保険・観光サービス業中 心のポスト産業都市構造に移行しつつある点だ。

このことを考えると、今後の太平洋沿岸メガロポリスをイメージす ると、東京、大阪の両端でポストインダストリー・ハイエンドサー ビスビジネス型の都心が形成され、その中間で製造産業が維持され る姿だ。つまり東海地方に投資がなされ、その成果を両極の東京大 阪で消費する構造になる。

名古屋は東海地方のビジネス産業の中核都市となり、名古屋の都心 は、東海地方の投資を推進するビジネスサービスの拠点となる必要 がある。そのためのビジネスインフラの整備が求められるわけだ。 東京大阪がハイソサエティの若者を取り合い、労働生産年齢の若者 を中部が求めるという構図だろうか?

当ニュースレターの読者から、コワワーキングスペース需要が爆発 的に増えているという報告受けている。東京・大阪のハイエンドサ ービスを差別化されるビジネスサービスとは何か?名古屋がもっと つき進めていく課題だ。

株価が2万5千円台をつければ、その先の3万円台をうかがうこと になる。だんだん1990年に近づいてきた感がする。筆者はオオカ ミ少年になっている。何度も言う。所詮山より大きなオオカミはい ない。しかし今回の山は大きい。

以上

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