ニュースレター
主宰:川津商事株式会社
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栄久屋大通にオープンカフェの設置
〈2014年 9月 15日〉
先般ある会合で、最近新聞で報道されている栄地区久屋大通の再整
備について話題が出ていた。その中でも「もっとパリのシャンゼリ
ゼ大通りの様に規制緩和をしてオープンカフェを開設したらいいの
ではないか」という意見が気になった。
「パリのシャンゼリゼ大通りの様に規制緩和をしてオープンカフェ
を開設したらいい。」言わんとすることは解るが、荒唐無稽の非常に
混乱した考え方である。ヨーロッパのカフェを見たことあるのだろ
うか?
まず第一にパリのシャンゼリゼ通りは、規制緩和をしたのではなく
規制強化をしたのである。厳しき規制をして、特定の基準を満たし
たカフェだけに独占的に様々な恩恵、歩道でのカフェの運営を許し、
他の安易な参入を規制した。高い賃料を設定していい加減な参入者
を排除したのである。
まずパリのシャンゼリゼ通りの真ん中に、ビーチパラソル、簡単な
パイプ椅子を並べて期間限定でオープンしているスタンドカフェは
ない。日本人の妄想である。そんなことしたら周りの常設店舗の経
営を圧迫してシャンゼリゼ通りの商店街の中心市街地衰退のシナリ
オを促進してしまう。
安価なソフトクリーム、紙カップのビール・珈琲のスタンド販売も
ほとんどない。シャンゼリゼ大通り沿道にあるカフェは、有名パテ
シエがいるスイーツ店、老舗の単価が高くレストランとして機能す
る厨房設備を整えて、黒と白の制服を身にまとった、サーバントが
行きとどいたギャルソンが居る高級カフェばかりである。
もっと言えばヨーロッパの主だった観光地の広場にあるカフェはす
べてがレストランで、ドリンクだけで居座る観光客を排除する店舗
も少なくはない。反対に中にはミシュランの星に手の届くようなレ
ストランが経営しているところもあり、ホテルのコンシェルジェで
勧められるディナーのレストランも含まれる。
間違ってはいけないのは、既存の店舗が気の向いたときにパイプい
すを並べてまるで利権の様にしたり、安いパイプいす汚いテーブル
のスタンドカフェがパリのカフェ文化を作っているのではない。
そんな安易なモデルで人は集客できない。きちっとしたビジネスで
投資し、地域のカフェ産業に貢献する店舗を育て、利権に乗っかる
だけのところを排除するメリハリが産業育成政策である。
このような誤解の根底には規制緩和に対する誤解がある。これは行
政だけの問題ではなく、行政に提言する有識者のレベルの問題であ
ろう。民間実務者が入っていないからこのような誤解が起きるのだ
ろう。
産業を育成すると言うことは規制緩和ではできない。むしろ規制の
新設が求められる。久屋大通りにカフェ産業を育成させるためには、
彼らの利益をコミットメントする必要がある。規制緩和だけで利益
が生むわけではない。
規制緩和で雨の後のタケノコのように、安いパイプ椅子を使ったス
タンドがいくつも出てきたら、本格的にレストランカフェに投資し
する老舗の経営を圧迫するだけだ。
この社会実験はすでに栄で行われている。TV等の電波塔の役目を終
えた時のその周辺に、地場の民間飲食店による白いテーブルクロスをあ
しらったテーブルを並べて、シャンパンなどをふるまい、カフェプレート
できちっとしたテーブルサービスを行ったレストランがオープンした。
しかしその周辺に誰も拭かない汚いパイプテーブルとパイプ椅子が乱
雑に並んだビール・ソフトクリーム等を売るスタンド売店が併設した。
この民間飲食店は記憶ではZ社であったが、筆者はこの時ついに名古屋
にもカフェができたと喜びこのニュースレターにも取り上げた。愛知県
の芸文センター等でコンサートを聴いた後余韻を夜の帳と共に楽しむ場
として期待した。
参照:当時のニュースレター
しかし残念なことに店舗を投資したレストランは利用者が無く即撤退した。
その後スタンドもいつ営業しているのかばらばらで、人も閑散にな
り結局カフェ文化は根づかなかった。
本格的なレストランと、スタンドを同じ土俵で競争
させてはだめだ。飲食店はいつ、何をやっているか解らない店舗に
は人は集まらない。スタンドのジャンクフードとレストランを併設してはだめだ。
この本末転倒な失敗は、名古屋にはカフェが根
付かないと言う誤解を生んでしまったに違いない。残念である。
NYセントラルパーク内にあるオープンカフェは、それ自体で何かイ
ベントが催される有名なレストランであり。ワシントンスクエアに
あるスタンドは、観光ガイドにも載るくらい有名な長蛇の列ができ
るハンバーガースタンドである。
やるべき事は、規制緩和が目的ではなく、目的は民間業者の育成で
あり、彼らが利益を上げられる環境をコミットメントする事にある。
必要ならば彼らに徹底的に恩恵(規制緩和)を与え、必要ならば徹
底的に他を排除し規制をしまくる事によって儲かる環境をコミット
メントすることだ。これが産業育成である。カフェも産業である。
恩恵とは、店舗の前の路上の様々な構築物をすべて排除うして、路
面におしゃれな車が置けるスペースを確保し、公共の店舗内を禁煙
にして、表の路上を喫煙可能にして、歩行の妨げとなる様な歩道の
占有を認めることである。当然これだけの恩恵は行政手続きでは緩
和できない。これを決断するのが政治力である。
日本でPFIがなかなか効果が出ないところにも同じような規制緩和
に対する誤解がある。利益に対するコミットメントなくして民間は
リスクのある投資をすることはできない。目的は民力を育成して市
場を成長させることである。規制緩和ではない。上質な民間業者が
リスクに果敢に投資をする環境づくりである。
期間限定にオープンするジャンクフードのスタンドは、たまたま来
た人は利用するが、長期にそれをあてにして人が集まる事はあり得
ない。「特定の業者だけに恩恵を与える事はできいない。広く皆にチ
ャンスを。」なんて青臭い事を言う有識者は排除されるべきだろう。
産業振興はイベントや学園祭ごっことは違う。
老舗のカフェが歩道に広がり、その風景にあこがれて人が来るよう
になれば、それに追随して飲食の路面店が参入してくる。これはカ
フェ産業の育成振興政策である。
以上
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