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主宰:川津商事株式会社
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2013年年末特別号−ビックデータ革命

〈2013年 12月25日〉

今年もいよいよ年末を迎えました。今年一年当ニュースレターをご 利用していただきまして大変ありがとうございました。感謝ととも に 今年一年を総集し、振り返りたいと思います。

今年の特集号のテーマは「ビックデータ革命」です。ビックデータ と言う言葉は今年になり市場で大ブレークした言葉ですが、一般的 にはIT分野の言葉にしか聞こえていません。

しかし実際の実務においては、20世紀末以降の情報革命、IT革命 の総括ともいうべき非常に大きなインパクトを市場にもたらしてい ると感じます。今年当ニュースレターが取り上げた様々なテーマに おいても、背景にある大きなトレンドでありました。そう言った意 味において年末にあたり「ビックデータ革命」を総括したいと考え ております。

*マーケットの変革
従来の市場では例えば2:8理論(ニハチリロン)の様に一部(2) の特徴ある属性が市場の大半(8)を占めていた。一部の金持ちが百 貨店の売り上げの大半を占めており、この金持ちに対して市場コン トロールができていれば、ビジネスを制する事が出来た。この市場 を支配する一部のキー属性の特徴を如何に推定するかがマーケット マネジメントになった。

ビックデータ以前は、市場のデータすべてを見ることができないた め、市場の一部のサンプルから市場の特徴を抽出し、それが有意で あることを統計技術で証明してきた。過去にも大きなデーターでよ り精度の高い特徴を得ようとする動きはあったが、統計技術者が大 きなデータを入手するコストより自分たちのスキルの方が合理的で あるとして、大きなデータの効率性を否定してきた。

しかし市場構造がネットビジネスなどの進化により、必ずしも大き な特徴に集約するのではなく小さな特徴が連続し、またロングテー ル型の市場となり、それだけで市場の大半を独占するような属性に ならなくても大きな利益を上げることができる市場になると、特定 の大きな特徴だけを推定しようとする統計技術では市場をマネジメ ントできなくなっていった。

市場インフラが百貨店、商業モール、コンビニなどのリアル店舗か ら大量のモバイル機器(スマートフォーン)、アプリを通じて集まる データがクラウド化されて非常に大きなびくデータが形成される。 スキルに関係なく効率的にビックデーターが形成される。逆に一部 の属性の有意性だけを証明する統計技術は、意味をなさなくなって いった。

かつてマーケティングの世界では、消費者行動を解明するためにア ンケート調査を行い商業エリア・市場での消費者の「回遊性」を推 定する研究が盛んに位行われた。しかし今ではスマートデバイス、 アプリそして店内のあちらこちらにある監視センサー、そしてレジ のポスシステムを通じてすべての消費者の導線が瞬時に出来上がり、 それを受けた本部で即消費者行動を解析し、瞬時に商品棚の変更、 陳列商品の入れ替えを行っている。

有る飲食店では、店舗内のフロアーの接待係の導線をすべて割り出 し、無駄な動きを省くために設備の配置を変え、配膳・調理の時間 の最適化に成功する。回遊行動の解明から実用にステージが変わっ たのである。ビックデーターの解析利用が企業価値を高めることが 明確になってきた。

コンビニのミニストップでは店舗内の客の導線をすべて割り出し、 商品の欠品削減、廃棄率の削減を実現し企業価値を上げることに成 功した。以前からたったPOSシステムは売れる商品と売れない商品 を明確にした。売れ筋商品以外は開発投資の多寡に関係なく瞬時に 市場から葬られた。

しかしビックデーターはその中間の商品のマネジメントを可能とす る。客がどの商品の前で滞留し、どの商品とどの商品をを選択肢と し、そして最終的にどの商品を買うのか?すべての消費者行動を明 らかにしてしまう。

かつて企業の倒産審査をするプログラムでは「過剰在庫」「調整」「欠 品」「損失」・・・と言った倒産につながる言葉を設定して、それら をすべての企業内テキストから抽出し、その偏りによって判定して いた。現在ではすべてのテキスト全体の意味を解析して企業の状況 を推定する事ができる。

以前の様に全体のほんの一部のデータから有益な情報を抜き出すの ではなく、市場・エリア・店舗内のすべてもしくはほとんどの情報 の入手が可能となるのがビックデータ時代である。

ビックデータにおいては、非常に多くのデータから有益な関係性を 抽出して関係性から新しい価値を生む。企業は新製品を作ることが 価値を生むのではなく、「価値を生む関係性」を見つけ出しそれに見 合う新製品を作り、それを介して利益を実現していく。

日立の担当者が「企業価値を生み出すのは新製品ではなく価値を生 むデータである」と先般開催された日経のビックデータセミナーで 説いていた。かつて日本では、より安くて品質の良い商品をつ切り 続ければ市場は必ず支配できると信じていた。これまで企業は新製 品を出せば企業価値が上がった。それは新製品が市場を支配できた からである。今でもこの考えに取りつかれているのが供給サイド主 義でありガラパゴス症候群である。

有効な関係性を見いだせず、市場が要求するヒット商品を生み出せ なくなり、市場の頂点から陥落したのがソニーであった。アップル のiPhonは品質の良いものを安く作ったから売れたのではない。他 にない「差別」「斬新さ」と言う人がいるがそれも大きな間違いであ る。マーケティングサイエンスの解釈すると、市場の「価値を生む 関係性」が必要とするデバイスがiPhon等のスマートフォーンであ った。

そこでは新製品が価値を生むのではなく、関係性が価値を生むので ある。

*インテリジェンス
関係性は昔からあった。市場、エリア、組織等の集合体がある限り 関係性があった。集合体の構成単位が、何らかの似た属性などを通 じて相関性を持つ事が関係性であった。しかしそれは単なる相関性 であって価値を生む関係性ではない。価値を生む関係性こそが「イ ンテリジェンス」である。従来の統計学者が見つける関係性は有意 ある「相関性」でしかない。

アメリカのCIA(中央情報局)はCentral Intelligence Agencyの 略である。Iは情報のInfoではなくインテリジェンスである。「情 報」と「知識」の違いである。知識は価値を生む。

かつてITと言えばIT部門(情報)の専門家によるオペレーション であったが、ビックデータでは違う。データを実際に使う現場(知) の人間によるビジネスモデルである。情報から知識化する事。見え ない物を可視化する事である。ビックデータ革命によりビジネスプ レーヤーの総入れ替えが市場で静かに起きている。

革新的なビジネスモデルが生まれるとビジネスプレーヤーの総入れ 替えが起きる。かつて金融界でポートフォリオ理論が生まれた時、 感と度胸のばくち打ちは市場からいなくなり、オプション理論が生 まれると多くの数学系の人が金融に入ってきた。

それまで統計の手法で大きな特徴を推定するモデリングを専門とし てきた人は去り、ビックデータをアルゴリズムによるモデリングで 有効なパスを推定する専門家が活躍している。システムを作る人で はなく利用する人である。

アルゴリズムと言うのは簡単に説明すると、例えば質問に対して答 えがイエスなら右、ノーなら左のやじるしに従って進み、次の質問 に行き又それでイエス・ノーのやじるしに進ませる。この質問を繰 り返し行い最終的なゴールに至る。そしてこの処理の繰り返しを行 う事(学習)によりゴールに至る有効なパスを見つける。単なる情 報を学習して知識化する行為がインテリジェンスである。

ある商品とある商品を検索した人は、何パーセントの確率で有る商 品を買うと言うパスである。これが価値を生む関係性つまりインテ リジェンスである。

*社会会インフラとなるビックデータ
人生の医療記録がビックデータになるとしよう。何年生まれでどの 様な医療水準世代で、何歳でAという病気をし、何歳でBとい問う 病気をし・・・何歳で口唇ヘルペスを発症した人は、何歳でアルツ ハイマーの病気になる確率が20%と言う結果がビックデーターに よって明確になったとしよう。ある日突然製薬会社からこれに該当 する貴方宛てにアルツハイマー治療のダイレクトメールDMが来る。

なんで民間から私の病歴にもとずいたDMが来るのか?プライバシ ーは?個人情報は?と思う人は考えてほしい。今社会生活で最も重 要なインフラは何か?東京-大阪間の高速道路、新幹線?違うでしょ う。最も重要なインフラはインターネットである。インターネット は国は運用しているい社会インフラでしょうか?これも違う。今市 場で顕在化し始めたビックデーターも官によるものではない。

もし将来の医療技術がビックデーターに依存するものであるならビ ックデータに、より積極的に参加し、より優先的にビックデータ(関 係性)が生む価値を享受しなくてはならない。ビックデーターは人 の行動にかかわるヒューマンデータ、物づくりの係わるマシンデー タ、位置情報などのロケーションデータ、市場のマーケットデータ、 そして社会災害環境破壊のスマートデータ・・・・に広がり、ビッ クデータがやがて重要な社会インフラになる。

「プライバシー」と言う概念は守る、隠すことを前提としている。 出る釘は打たれると言う概念になる。ビックデータに参加するには 積極的に公表しなくてはならない。それがよりよい先端の治療法に アクセスする事になる。より有意な社会インフラに参加しなくては ならないと言う必要性が表に出てくると、今の概念のプライバシー は死語となる可能性もある。

ビックデータが可能となることが次世代の社会インフラに対する社 会的ニーズとなる。無線LANなどでビックデータ化が可能となる空 港、大学、病院、ホテル、アリーナ等が競争優位ある社会基盤とな る。

*監視社会
昨年以来アジア、アフリカ、中東においてアラブの春と言う民主化 革命が生じた。かつて革命には革命家がいた。孫文、カストロ、ス ターリン・・・・。革命の父がいて初めて民衆が従い導かれていっ た。しかし近年のアラブの春には見える革命家が居ない。革命は民 衆の意思の集合体である。

この集合体を具現化したのがソーシャルネットワークである。民衆 の関係性が価値を生み出すとそれは革命をも引き起こす大きなエネ ルギーとなる。かつてソニーを市場の奈落の底に陥れ、アップルを 勝者としたように。

社会の変革者は、カリスマリーダーではなくビックデータになる可 能性がある。誰か一人巨悪を懲罰的に罰すれば社会の治安が守れた 時代ではなくなる。一つ一つのデータすべて監視する必要がある。 これが最近の監視社会である。夜警国家である。社会のいたるとこ ろに監視カメラが設置され、個人メールがすべて監視される社会である。

そしてそこでは、不幸にして、ビックデータの構成要素である市民 を直接拘束する規制が必要になる。その一方で先般、アメリカのNSA によるすべての個人の通話記録の監視に対して憲法違反の判断が下 された。振り子のように社会が大きく振れている。

セキュリティーに関する概念も変わってくる。関係性はは多く の人との共有によって初めて有効になる。多くの人 との共有は、従来の機密セキュリティーとは相いれない考えである。 ごく一部の秘密がセキュリティーの概念の核となっていた時代とは社会 スキームが違ってくる。

現在、世界中で従来の社会システムからの機密漏えいが頻繁に生じ、従来の が年からの法律による締め付けが起きている。今のままではビッ クデータの運用自体が法律違反になりかねない。今後しばらく新しい ビックデータが要求する社会システムと、従来の機密による規制との 違いが様々な軋轢となって出てくる。

*ビックデータの本質はオープンソース
「ブランドは誰のものか?」と言う記事を今年見かけた。商行為の 本質は裁定行為である。安いところで物を仕入れ高いところで売る。 高い安いの価格の差を裁定する行為である。かつて企業による大量 生産時代では、企業が圧倒的な商品情報を持ち消費者に小出しして いた。情報の格差がビジネスであった。

今はこの情報の非対称性が逆転して存在している。企業が市場に投 入する商品は、市場で消費者により口コミ行為等を通じ商品情報が 作られる。企業はこの情報を欲する。口コミのにより作られる情報 こそが消費者と生産者との関係性になる。そして関係性が価値を生 み、それが企業価値となる。新商品はそこに介在する媒体物でしか ない。

価値を生む関係性がブランドを育てる。オープンソースで消費者に よって育てられるブランドは市場で大きくなる。企業の独占排他的 所有物として、市場で一切オープンにされないブランドは、効率よ く育てることが難しい。

最近の世界に冠たる企業であるアマゾン、アップルは本売る企業、 スマートデバイスを売る企業ではない。情報を仕入れて価値ある情 報のする仕組みを作った企業である。まったく関係ないように思う トヨタといえども安くより品質の良い商品だけを目指しているとソ ニーの二の舞になりかねない。

*ビックデータ時代のビジネスモデル
ビックデータは大量の「スマートデバイス」の情報が「クラウド」 に集められ「ビックデータ」化し「アルゴリズム」により学習され て知識となる。ちなみにガラケイ人間はビックデータに入れない。

そこでは「データーの収集」「特徴(問題)の抽出」「特徴(問題) の解明」「答えの評価」を通じて価値がる事が証明されていく。スマ ートデバイスにより情報が集められ、クライド化された中であらゆ る分野(社会、科学、工学、物理、生命、宇宙、マーケティング、 金融、倫理、哲学・・)にわたり関係の相関性が繰り返し抽出され、 より精度の高いつまり価値を生む関係性を作り上げていく。

ビックデータで登場する言葉、概念は「スマートデバイス」「クラウ ド」「インテリジェンス」「リレーションシップ」「データコンバージ ョン」「スマートデザイン」「モデリング」「キューレーター」「アル ゴリズム」「評価」「フィードバック」「セキュリティ」「オープン」 「可視化」・・・。これらこそ来年以降のビジネスモデルの主役にな るわけです。

「イノベーション」と言う言葉が見当たらないことに皆さんすぐに お気づきでしょう。イノベーションはリアルな実物製品の変革であ る。又、不動産は市場の「場」を意味します。市場の「市」が変革 すれば不動産ビジネスも変わらなくてはなりません。

*ゲーム理論
関係性をマネジメントするモデルがゲーム理論である。有名な「囚 人のジレンマ」では、二人の囚人が自分ひとりだけの利得を最大に する選択肢と、二人の囚人の関係において利得を最大にする選択肢 が異なる。そのような関係性の中でどのような選択行動(消費者行 動)が必要かと言う事になる。

以前より株式市場では美人投票場であると言われてきた。つまり自 分が最も美しい思う株を選ぶのではなく、皆が美人と思い、皆が購 入し上がる株価を選ぶ市場である。これも従来の選択行動と関係性 の中で選択肢が違う事を意味する。

例え誰も見向きもしなくても自分だけが魅力を感じる選択肢以外に、 皆との関係性の中で価値を見出さなくてはならない選択肢があり、 市場ではこの後者の選択肢が支配する事になる。どの様な選択肢が 関係性の中で価値を生むか?これを求めるモデルがゲーム理論であ る。

ゲーム理論は関係性を最適化するものである。そしてこの関係性を 最適化するためのハードがfacebookやツイッターなどのソーシャ ルネットワークである。これらのビジネスモデルはまだまだ黎明期 で不安定である。今後次から次へと開発されてくることが期待され ている。

いつもながら不確かな事を、つたない知識で予想していろんなこと を書いてみました。不確かな世界の中で猛スピードで走っていくの が現代の状況なのかもしれません。来年も皆さまの隆昌を祈念して 今年の筆を置く事にします。

本文内容参考:日本経済新聞社主催ビックデータフェア

以上

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