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====[2008年年末特別号]==
「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
名古屋ビジネス情報
主宰 川津商事株式会社
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名古屋・不動産に関するビジネス情報誌「名古屋ビジネス情報」 へのご登録ありがとうございます。当社は不動産にとどまらず 広くビジネス情報をお届けいたします。今回は、

  テーマ:今年の総括と来年に向けて

今年も年末を迎えました。今年は名古屋の地元に関するビジネス情 報が極めて少なかったことが非常に残念でありました。話題がけし て無かったわけではないが、ネガティブな情報をあえて強調して配 信する必要も無く、必然的に不動産を取り巻くマクロな話題が多く なってしまいました。

今回の世界的な金融恐慌によって上場企業がすでに31社破綻して います。過去最も多かったのが2002年の29社でした。しかも今回 の破綻のうち多くが不動産建設業であり、更にそのほとんどが黒字 で倒産と言うことです。

借り入れのリファイナンスがストップされてしまったことが原因で あることは周知のとおりである。世界に日本はバブル破綻の経験を アピールするといっているが、金融恐慌の第一段階として流動性リ スクになる経験が学習になっていない。

アメリカでリーマンブラザーズが破綻した。財務長官は税金で投資 銀行を救済する理由は何も見当たらないと今でも公言している。し かし市場ではリーマンを破綻させたショックが非常に大きくその責 任を問うている。

リーマンが破綻したことにより、市場の流動性が一気に無くなり今 回のバブルがソフトランディングせずにハードランディングしてし まった。その影響は世界的な規模の大きな損失となっている。

破綻した31社が公金で救う価値があったかどうかの問題ではない。 放置して破綻することによって市場に与える影響である。貸し渋り のあわずにその後ゆっくりとこれらの企業が破綻しておれば、日本 の市場も今年の一年で急転直下することもなかったであろう。

まったく予想もせずなんら対処せず、31社もの上場企業が資金ショ ートで無残にも破綻した状況は、ハードランディング以外の何者で もない。今後歴史の中で今回の金融政策のあり方が検証されよう。

1980年当時世界のGDPの総合計額と同額のマネーが世界中に還 流していた。2007年には世界中のGDP総額の実に3.5倍の金額が 世界中に流動していた。伊藤元重先生の言葉をかりれば2000年以降 のデジタル技術に代表されるテクノロジーショックにより金融が膨 らんだことを意味する。

新自由主義により、アメリカで自由に積み重ねられた消費、いびつ な貿易、そしてこれらをサポートした金融技術、ビジネスモデル、 そしてレバレッジにより過剰なまでに信用が大きくなったのが今回 の世界規模的なクレジットバッブルを生じたのである。

地球温暖化で溶け出した極の氷の水分が大気に蓄積され、何か問題 が生じる度にゲリラ豪雨となるように、突出する市場にマネープッ シュが生じ大量のリスクマネーが集中した。それが石油などの商品 市場であり、中国ロシアインド等の新興国市場であった。

しかしこれらの過剰なまでに積み上げられた信用バブルが破綻して 一気に信用が収縮した。世界のGDPの3.5倍のマネーが一気に収 縮し、市場の末端の中小零細企業から、アイルランド、韓国などの 弱小新興国まで一気に流動性をなくした。

先般の日経ヴェリタスの表紙に「マネーはどこへ行った?」という 見出しを飾った。

バブルは過剰投資でありバブルの破綻は過剰投資の償却である。ま ずバブルの破たん処理としてアメリカの過剰な消費の収縮が始まっ た。アメリカの過剰消費は中国、日本、EUその他新興国の経済を 牽引してきた。

このアメリカの消費の縮小により世界中で消費不足が生じることに なる。経済対策として世界中で一斉に有効需要の創出政策が行われ ようとしている。30年前のケインズ経済学の再登場である。

歴史の教科書でしか見たことのない1930年代のアメリカ大恐慌の 後のニューディール政策の再来である。

中国でも2年間で57兆円の財政支出を持ち上げている。一方日本で は2兆円の低額給付すら、すったもんだして決断できない状況である。 アメリカが日本を通り越して中国と経済懇談会を進めるも無理はない。

日本では800兆円を越す借金があり、2兆円の支出すら誰も決めら れない状況にある。では日本はまったく無策かと言うとそうではな い。毎年25兆円以上の財政赤字を垂れ流している。これは立派な消 費に替わる政府支出である。

しかし問題はこの巨額な財政支出が国内の景気を刺激していないこ とだ。ではどこへいったのか?すべて中国などのアジアの経済を刺 激し続けてきたわけだ。例えば定額給付が実施され一人一律12000 円給付されたとしよう。

このお金を仮に全額消費に回したとしても、日本の国民がみな中国 産の餃子を食べれば、それはすべて中国の労働者の所得を膨らませ る仕組みである。日本国内の労働者に対して最も効率の良い景気刺 激とはならないわけだ。

世界協調で、世界的な有効需要の創出によって始めて日本も恩恵を こうむることになる。これは又他の国も同じことが言える。アメリ カが今まで世界中に供給してきた過剰消費に変わる消費需要が必要 になるわけだ。

そこで今各国が考えることは、輸出依存型の経済構造ではなく、内 需主導型の経済成長構造である。内需主導型の経済成長構造とは、 簡単に言えば、日本の1960年代の高度経済成長時代の日本である。

今世界中で懸念されているのが保護貿易である。サミットでは保護 貿易の禁止が連呼された。これは世界中で一斉に自国で財政支出に より内需を喚起し、それを他国に持ってかれないように保護する方 向に向かうと言うことである。特にオバマ率いる民主党は保護貿易 を取りやすい。

内需主導型の経済構造とは、人口動態があり、市場にダイナミズム があり、高金利、高物価、高消費、高イノベーションの市場である。 すべてにおいて今の日本の経済政策の逆である。

低金利政策と自由貿易は日本の輸出産業に非常に大きく順風となっ た。しかし内需のためには高金利、高消費、高公共投資が必要とな る。

さて前置きはこのくらいにして、世界的に内需の拡大が必要である ことを前提に、名古屋の話をしよう。名古屋の不動産投資市場は、 現在日本の中でどのようなポジションにあるのだろうか?東京の不 動産アナリスト石澤氏によると、

日本の地価の動向は人口動態(増加)で説明できる状況にある。今 日本で人口が増加しているのは東京と名古屋だけである。しかし名 古屋の市場は、ここ数年のバブルでわかったことは、市場が小さす ぎるため、少しでもマネープッシュが起きるとすぐに飽和状態にな りバブルになってしまう。

従って日本で不動産投資の市場といえるのは東京だけである。と言 う評価である。弊社が東京で連呼してきたとおりの解説がなされて いるわけだ。

かと言って名古屋がこれから市場規模を急成長させることは現実性 がない。現実的には、今までどおりの強みを継続しつつ、新しいス テップを踏むことである。トヨタを中心に輸出産業の回復を待つこ とは当然ではあるが、世界的な需要不足でその先端にあった企業が、 今日明日にもすぐに回復する事を過剰に期待する事はできない。

又、消費指標のひとつである名古屋地区の百貨店の売り上げが全国 平均より悪いという事実は、今現実にこれまでの名古屋地区の輸出 関連産業の好業績に支えられたバブルの調整が起きていることが理 解できるわけだ。

名古屋の市場で外需に頼らない内需を拡大して、日本経済を牽引し て初めて「名古屋は元気」と言われるのである。

内需は、新しい技術のイノベーションと消費市場の効率による収益 性の向上である。無駄遣いを奨励するものではない。技術のイノベ ーションとは画期的な商品の発明ばかりではない。市場を効率化さ せるビジネスモデルも含まれる。つまり効率よく消費を拡大するも のである。

内需を拡大するための都市構造を考える必要があろう。特に1990 年のバブル経済以降の日本の経済構造は輸出志向の国土形成の上に 成り立っていた。低金利、円安、内需より外需、輸出産業への集中 であった。

地方都市への再配分、また都市の成熟サービス産業への資源の再配 分を怠ってきた。地方の活力を再生して、地方と都市部における価 格差の裁定が生じるような国内市場のダイナミズムが必要となるの である。地方の活力の再生と収益の高い都市へのアクセスシテムの 再構築である。

名古屋の都心部、特に栄は一大商業地域である。百貨店に依存して いた商業施設である。しかし今や松坂屋を始め前年月比二桁の売り 上げ減となっている。来年の店舗改装を中止する計画である。

この状況でこの地域の従来どおりの百貨店に頼った内需拡大はありえな い。むしろ百貨店が高収益を上げられる革新的なインフラを地域が 提供しなければ虎の子の百貨店がつぶれてしまう。

百貨店すべてが悪いわけではない。銀座三越は最近来場客数が増え ている、銀座にH&Mが進出効果だそうだ。

リテール市場も大きく変わってきた。インターネット市場、メガス ーパー市場、専門ショップ市場が急成長している中で従来型の百貨 店への期待は縮小している。これと一蓮托生ではやはり都心部自体 が衰退してしまう。

イノベーションが恒常的に生じ、長期的に人口が増加している愛知 県の三河地区の需要を取り込む新しい交通システム。インターネッ ト市場、スーパー市場の急成長と共に新たの急増する需要に応える 新しい「ショールームビジネス」、「エンターテイメントビジネス」 が生まれる都心構造を含めたグランドデザインの構築が必要となろ う。

今東京の銀座で新しいトレンドが起きている。多くの自治体のアン テナショップが出店し始めているのである。特に北海道、鹿児島、 岩手、鳥取など遠方が多い。都心部でのPR効果を目的とし、観光招 致或いはインターネットなどによるお取り寄せ販売につなげるビジ ネスである。都心の商業施設はショールームエリアとなる。

いろんな販売チャネルが存在する状況で、高コストのかかる都心部 で他と同じ商品を価格のみの競争では到底勝ち残れない。都心の商 業施設のニーズを明確につかむ必要がある。

しかし各地方都道府県のアンテナショップが東京以外の大阪、名古 屋などの主要な地方都市に出店していない。名古屋は物産事務所は あるがむしろ求人、事業所誘致目的の出先機関である。

栄のオアシス21に子供用のアニメ、おもちゃ、玩具のショップが集 まり家族ずれの集客を行い、それに伴うエンターテイメントが行わ れている。特徴的な都心型産業である。今後地域限定のワンセグな どの規制緩和により更に特徴あるプロモートが期待される。

時代は、アメリカの大恐慌時代の新ニューディール政策が連呼され るような需要創出型の経済政策が世界的な主流となっていることを 理解しなくてはならない。アメリカの需要に頼らない内需を高める ためには、公共投資、高金利、高い消費を生み出す政策が必要とな る。

名古屋駅前エリアでは2011年以降新しい高層ビルの構想が進んで いる。笹島に新しく大学などが進出する。名古屋ターミナルビル、 中央郵便局跡地の再開発。などなどである。ここでも民間の投資に 対して効率が良くなる都市構造の議論が必要になる。

名古屋の市場の内需をどのように高めるような都市構造にするかが、 政策論争になるべきである。アメリカのオバマは、既存の効率の悪 い自動車産業を日本のバブル経済破綻時のゾンビ産業とみなし、こ れをつぶし余剰の労働者に対してグリーン産業を推進して何百万人 もの雇用の創造を目指している。

営業赤字が出たからといって、日本のトヨタを誰もがゾンビ企業と はみなしたくないのは当たり前である。しかし企業再生は体力があ るうちが勝負である。今のトヨタの最も強いところは体力があるこ とだろう。

既存のメリットを延命させるのではなく、既成概念を破壊して一気 に新しいものへ向かおうとするダイナミズムを感じる。今の日本に はないエネルギーである。選挙という節目を利用してパラダイムチ ェンジを起こそうとしている。ある意味で非常に良いタイミングで ある。

環境政策が新しいビジネスとして実施でき得る実務家が必要になる わけだ。名古屋市も環境政策に力を入れている。ただ市民の負担と なるだけの環境政策では長続きしない。環境で成功している都市は すべてビジネスに直結している。市長選挙がタイミングの良い討議 の場となることを期待する。

今、世界中で不足する需要に対して、最近のサプライサイドの政策 から有効需要を生むべき財政支出政策に転換しようとしている。需 要不足のままであれば世界的なデフレ時代の到来である。

財政支出が行われて景気が浮上する状況になれば、それは世界的な 財政赤字とインフレの時代への始まりである。市場のメカニズムで は、バブルの調整が始まった時点ですでに次のバブルが始まるので ある。これが経験による学習である。

世界に君臨する企業中心の経済成長から内需完結型の都市マネジメ ントが必要になるわけだ。

年末にかけて、名古屋駅前のJR東海と日本郵政の都市開発プロジェ クトのニュースが駆け回っている。商機にはタイミングが重要で、それ を最も理解しているのが民間企業のJR東海であるわけだ。

しかし少々急ぎ過ぎの感がする。まさか消費税の値上げ前を狙ってい るわけではないだろうが。名古屋駅前の良さはグランドレベルで人の 流れがあることである。これを補完するバイパスが地下街である。

高島屋の2階のデッキは、むしろ名古屋駅前に不足するろユーティリ ティースペースの機能を果たしている。非常に機能が補完しあってよい 結果を出している。

そもそも本来裏方である土地屋から言わせると、デッキなんていうのは グランドという最上のものから隔離する最もナンセンスな構築物であ る。隔離させる必要がる場合は優れた機能をするが、アクセスの重要な メイン機能としては力不足である。

デッキがメインとなり成功すればグランドがだめになる。又アクセス が複雑になる。デッキが成功しなければアクセスが無くなるというこ とである。ゲームの理論である。

大阪梅田駅前は非常の短雑な車、人の流れがありこれを解消するため にデッキが機能している。しかしそのために東京の銀座のようなウイ ンドウショッピングを楽しむ機会は無くなる。

東京駅前丸の内の新ビル郡にデッキは絶対にありえない。八重洲口でも 導入されていない。

ウインドウショッピングの無い回遊性なぞありえない。そこに百貨店 というエンターテイメント性もない。グランドレベルの回遊性がある 大商業施設栄エリアに逆転することはありえないだろう。

かつて仙台駅前の商業ビルにデッキがあったが非常に見劣りしていた。 他と隔離してしまい回遊性の拡張がまったくなくなってしまっていた。 それをどう再生するかという案件が持ち込まれた事がある。

もちろん名古屋市のバスステーションの問題があるが、「3人の歩み寄り」 にもう一工夫を期待したい。

名古屋駅前がまだ潜在的な力があることは否定しないが、投資効果は 先のセントラルタワーズ程ではないはずである。もしJR東海、日本郵 政の民間投資が期待した投資効果を得られないとそれはそのまま名古 屋駅前の地勢に大きな打撃をもたらす。

名古屋駅前にこれだけの巨額の民間投資をする企業に対する期待は非常 に大きい。必要ならば道路をつけかえるぐらいのダイナミズムが必要で ある。拙速をせず巧遅を良しとすべきである。

以上

 


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