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===[2002-年末特集号]============
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   テーマ: 2002大きなトレンド

市場原理と不動産投資ビジネス
 −トレンドと新しいビジネスの胎動−
今年は一言で言えば、不動産投資市場に市場原理、特に競争原理の考え方鮮明になった年であり、しかも非常にダイナミックに導入が始まった年といえる。特に最近不動産ビジネスの世界に、新しい外来言葉が非常に多く登場しました。今年は当ニュースレターにおいても、「証券化」をはじめ新しい考え方を多く紹介してきました。

好むと好まざるにかかわらず証券化の影響が大きくなってきています。「また証券化か?」と言って、敬遠したがる方は確実に新しい市場トレンドから取り残されていくでしょう。

市場トレンドとは、従来の簿価会計から時価会計への移行、取引事例価格から収益還元価格への移行、担保価値主義から市場価値基準主義への移行等がその代表です。

今年の企業民事再生法を出す企業の多くは、昔のように手形ジャンプに代表される資金ショートではなくなった。バランスシートが債務超過である会社に対する金融機関の「貸しはがし」が主な理由である。従来日本の中小企業の多くが債務超過、もしくは赤字会社であった。それが通用しなくなるのである。

実に日本の中小企業の6-70%が赤字会社である。特に不動産を運用している会社は、その多くが節税対策、資産保有を目的としていたが故に、公開している会社と違い財務内容は債務超過、赤字体質が一般的であった。金融機関も担保価値と資金繰りさえしっかりしていれば良しとしていた。

不良債権問題に絡んで、たとえ返済に問題がなくても財務内容が悪く要注意先、破綻懸念先などのいわゆる第2分類、第3分類になると銀行は引当金を積まなくてはならない。当然銀行としてはコストアップにつながる。

このように個々の企業と金融機関との関係における担保・融資審査基準ではなく、グローバルスタンダードと呼ばれる、BIS基準、自己資本基準、金融庁の指導基準に縛られることになる。

今年特に顕著にこの基準が適用されるようになってきた。しかもこのような変化はまだ始まったばかりである。前出の60-70%といわれる赤字体質の中小企業が、業績の良い悪いに関係なく今後その財務改善を強いられることになる。

*新しいファイナンスのガバナンス 具体的な処方としては、自己資本率を高め、間接金融からの負債を圧縮することである。日本の企業文化は、高い銀行借入率がある意味で企業統治(ガバナンス)をもたらしてきた。現在まだ高い自己資本率による企業統治の企業文化はまったくない。

実際にある例を挙げよう。10億円ほどの売り上げで順調に成長しているネット関連、ファンシーグッズ等を取り扱う今様の若い新興企業がある。このまま行けば5年後には倍の20億円になる予測が立つ。業績は良くても資産のたくわえなど当然なく銀行は相手にしてくれない。ベンチャーキャピタルファンドからの資本参加を得て一気に成長をしようとする。

企業体質としては、まさに自己資本率が高く借り入れが少ない。理想の体質かもしれない。しかしこの新興企業の若いオーナーは、ブランドの服を着て、高級な外車に乗り、新築のマンションに住んでいる。つまり高給を得ている。東京などでアンタイド(ネクタイをしないカジュアルな仕事スタイル)で高級車を乗り回している新興企業家などを想像してほしい。

従来の銀行借入により企業を運営しようとする企業オーナーは、給料を減らしてもまず借金の返済をしようとする。決して贅沢な外車を乗り回したりせず、長期的スパンで借財の返済に責任を果たそうとする。これが従来の企業文化であり企業統治である。

新興企業の多くは、景気が悪くなればそのまま消え去ってしまう。ベンチャーキャピタルファンドも、リスク分散の範疇でそれ以上の回収をしない。さらにそれ以上に企業家にリベンジできる機会を与えてほしいという考え方がある。従来の企業家から見ればまったくのモラルハザードである。この実例は決して極端な話ではない。

新しい姿に変わろうとしている金融機関の基準についていけない企業は、市場から強制的にドロップアウトさせられることになる。企業のほうも、新しい再生を目指して、銀行より早く、民事再生法を申請して自らの再生を模索する。

*証券化トレンドの本質は過酷な市場競争 市場原理による市場淘汰である。しかもこのトレンドは不動産を使用して企業活動するすべての企業、金融機関のローン等を使って資産の蓄財をする個人すべてにかかわってくることである。

今年の11月末に、東京三菱銀行が賃貸用マンション等の購入資金を証券化し、機関投資家に販売することを表明している。リスクマネー市場の登場である。東京三菱は債権を証券化することにより投資家にそのリスクを移行する。これら仕組みにかかわる手数料による企業活動である。

証券化の仕組みがわからない人であっても、考えなくてはならないのは、証券化の対象になる不動産しか東京三菱はビジネスの相手にしないと言う点である。金融機関のリーディングカンパニーのこのような動きはいずれすべての金融機関に波及することになろう。

現実に、商業不動産の証券化の市場が昨年から一気に成長して、企業の一般社債並みの規模になろうとしている。不動産投資ビジネスにかかわる人、不動産を通じて生活の基盤を持っている個人すべてにかかわってくる、いうなればパラダイムチェンジである。

たとえば個人に関係のある住宅ローンにおいては、すでに住宅金融公庫の廃止が決まっている。今後は、市中の金融機関が住宅ローンを取り扱い、これらの債権を証券化によってオフバランスするのが新しい金融システムである。

住宅ローンの証券化において問題になるのが期限前償還リスクである。つまり期限前に住宅ローンを返してしまうことである。また金利が変動する時に自分に有利な金融ローンに借り換えをするために期限前に返済してしまうことである。これらがすべて証券化にとっては、途中解約ができない仕組みを組んであるとリスクとなる。 今までのローン利用者のメリットがペナルティーの対象ともなりかねないことになる。

「証券化」と言う言葉を聴いて一番拒絶反応を示すのが不動産ビジネスに携わる不動産屋さんである。証券化による市場原理とは、証券化の対象となる資産がよしとされ、証券化の仕組みの中でのみ、ビジネスチャンスがますます増え、そうでないものは市場からドロップアウトされる。

「証券化」というのは、市場性がない、たとえば、代替性のない個別性から相対取引でしか取引ができない不動産資産のようなものを、市場で互換性を持たせるために「証券」にして流通性を持たせるものである。証券は「元本」と「配当」に分けられる。

証券には必ず配当(利息)を支払わなくてはならない。つまり利益が良いものしか証券化の対象にならないと言うことである。さらに証券同士の競争が生じれば、利益が良いものはますます強くなり、有利になり、資金が集まる。しかし利益が弱いものまったく利益が上がらないものは不利となり、競争原理に中で負け組みになってしまう。

これが市場原理である。「これからは資産を保有する時代ではなく、利用する時代である。」と言う言葉をよく耳にする。こんな扇動にのり、競争原理に勝てる技術を持ちえていない人が利用をしたら、バブル経済の破綻と同じ失敗を繰り返すことになる。

資産をより優位に利用する力があるものは勝ち組に入り、利用する技術、力がない者は負け組みになる時代である。より有利に利用する力がない者は賃貸事業等の投資をしないことである。技術のないものに利用を強要させるのは、バブル経済の破綻に見られた行為である。

そして重要なことは、投資とは、利用によって得られる収益を上げることが目的ではなく、資産価値を高めることである。これは保有するものにしか手にすることができない利益である。証券化を日本に導入した「外資」でも投資の目的は価値の増加、成長である。

「収益還元価格」と言う考え方は、高い収益を得られる資産が市場で結果的に高い評価を得ると言う考え方である。収益還元方による時価会計、減損会計の導入は、まさに競争力のない資産、企業を整理して、競争力のある資産、企業を中心とした日本経済を作り上げようと言う考え方である。

そして証券化において一番必要とされる考え方は、不動産収益から得られる収益を確定させなくてはならないことである。収益が確定できない投資資産は、市場原理においては評価されえない。立退き金がいくらになるかわからない。土壌汚染浄化費がいくらかかるかわからない。投資の出口が見えない等様な資産は市場評価が低い。 

現在の日本の不動産ビジネス経済の不況は、このようなダイナミックな変動に対して、新しい解決策が見い出せていないゆえに、将来への投資に対するモチベーションが非常に低いと考える。

*このようなダイナミズムに対して、不動産市場環境はどのような状況あるいはトレンドを示しているのであろうか? 弊社が、今年出版した書籍「不動産投資における成長メカニズム」の中で、日本の主要都市エリアの不動産収益とリスクについてのポジショニングを解説した。東証一部の株式投資は1970年代から一貫してリスクが低減されているにもかかわらず、不動産投資は1970年以来リスクポジションが減ったり増えたりしている。

あらゆる面から分析しても、不動産投資市場において投資インフラが整備され、情報の対象性(公開の信頼性)がなされ新しい投資技術が開発されて、市場が育成熟成いているとは言いがたい。

ここで言う投資インフラとは投資収益のベンチマークとなる投資インデックスであり、公的な第三者機関への家賃等の情報公開、プロパティマネジメント・アセットマネジメント等の戦略的な投資技術である。

投資インデックスは、現在公的民間を含めて開発が進められている。また先行して住信基礎研究所STIX、生駒商事等が公表した経緯がある。しかしSTIXは東京のインデックスのみであった。

需要のないところに技術は育たない。新しいニーズに新しい技術で応えることが市場の成長につながる。これがマーケティング戦略の基本である。市場原理により東京以外のエリアでの不動産投資がますます落ち込み、負け組みになってしまうのも当然なことでもある。

卑近な例で、タブロイド誌「週間ポスト」等で良く紹介される全国のうまいラーメン屋に名古屋の店が紹介されることがあるだろうか?東京と関西のみである。名古屋あるいは地方に関する情報が週刊誌市場で価値をもたなくなっている。

東京も最近「関東圏」と言う考え方が見かけなくなってきた。関東一円ではなく明らかに東京集中である。東京以外の関東圏が市場価値を持たなくっているということである。これがまさに都心への回帰が進んだ状況である。東京一極への過度の集中は、以外にも早く都心への回帰の弊害をもたらし、反動が生じることも考えられるであろう。

ラーメン屋だけではない、住宅着工件数、マンション着工件数、オフィス空室率等不動産投資に必要な情報は、特にメジャーな新聞等では東京大阪だけである。地方が紹介される時にようやく地方のひとつとして名古屋が登場する。

その一方で、社会基盤整備(道路、公共施設、大学等)、に地方自治体だけの財政でまかなえる状態ではない。また都市開発においても地元コミュニティー、企業の民力だけで開発できる時代ではない。名古屋の吹上サッポロビール跡地、笹島国鉄跡地がその例である。

全国から見て、ラーメン屋の情報すら市場価値を持たない地域となった名古屋に、東京から、全国から、グローバルな投資資金が魅力ある投資先を求めてやってくるわけがない。

これが市場原理である。情報を発信して投資の信頼性を勝ち取らなくてはならない。

*市場の成長は新しいニーズと技術開発
不動産市場での新しいニーズに、新しい技術で応える。これが不動産市場の成長になる。では賃料の下落など厳しい経営環境にあるマンション経営者にとって今のニーズとは何であろうか?収益を上げる技術、空室率を下げる技術、優良な賃貸人を見つける技術などなどである。

現在ほとんどの大家さんは、不動産業者任せである。技術を持たない。経営努力したいというニーズがないのか?技術を開発する能力がないか?どちらかであろう。不動産業者もしかりである。インターネット業者に情報コンテンツのいいところを持っていかれてしまっている。

最近の事例で、電気製品プラズマテレビの開発において、それぞれ特許を持っている家電大手電気メーカ松下、NEC、パイオニア、富士通、日立等が合同で商品開発をすることになった。グローバリゼーションの中での新しいトレンドである。

国内、局地的な海外市場での競争であれば、個々の各企業の差別化による戦略がとられたが、世界の中でその優位を争うことになれば、企業一社では到底太刀打ちできないし、経営効率が悪すぎることを意味している。

不動産投資のプロパティマネジメントもしかりである。一棟のビルに経営資源を集中投入してもエリアでブランドを持った不動産資産に太刀打ちできない。汐留、品川、六本木、丸の内、大崎などがその例である。不動産投資ビジネスにおける新しい技術であるプロパティマネジメントもパワーブランドを目指さなくてはならない。

東京の2003年問題は不動産市場特有のオーバービルディング(供給過剰)である。供給過剰の中で市場競争はますます熾烈なものとなる。力のないもの、努力をしないものが負け組みになるのはいたし方がないことである。資本主義国家である日本において、経営努力をしなかったものに対して安易に救済の手を差し出すことは、市場の平等性を欠き、返って市場を混乱させることである。

しかしその一方で、これら市場からドロップアウトした不動産資産が、不良債権となったり、また地域のホームレスの溜まり場になったりしてお荷物となり、環境問題、社会問題を引き起こす要因にもなりかねない。

過度の競争原理は強者をますます強くし、弱者を排除してしまう。しかも市場が大きくなればなるほど強いトレンドを示す。市場原理は「富」のと、「貧困」を生み出すものであることを認知してなくてはならない。市場原理を導入するところ、しないところを初めから線引きする必要がある。

2002年はこのように、不動産ビジネスにも、市場原理の導入がいよいよ始まった年といえよう。そしてそれに伴う市場の混乱が顕在化してきた年でもある。2003年はまだ混乱が続くことが予想される。しかしその一方で、着実に新しいニーズに対応する技術による、市場の成長が始まりつつあることを期待して、今年の総括とさせていただきたい。

以上



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