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===[2002-4-10]============
 「名古屋の不動産何でも相談室」がお送りする
        名古屋ビジネス情報
       主宰 川津商事株式会社
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名古屋・不動産に関するビジネス情報誌「名古屋ビジネス情報」
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  テーマ: 名古屋駅前エリアはクラスタに成り得るか

トヨタ自動車の本社機能一元化に伴い、名古屋駅前のトヨタ自動車 グループビル群に、本社社員が移動することが発表されている。中 部新国際空港をにらんでの豊田・毎日ビル再開発の高層ビルに入居 の予定だ。

午前中の豊田市にあるトヨタ自動車の本社一階ロビー、アポイント を取り、仕事の打ち合わせの人たちで所狭しとごったがえしている。 あの大きな敷地内の駐車場が満杯になるほどである。その活気はト ヨタの勢いを象徴している。世界に冠たるトヨタ自動車の本社が持 つビジネスチャンスの可能性の大きさを物語っている。

豊田市で昨年、破綻した生命保険会社のビルが売りに出された。通 常、何々生命保険会社と言われる企業が持つ信用を当てにして入居 していた企業は、破綻そして外資による売却がなされると、水をひ いた様に退居するのが通例である。

しかし豊田市の破綻ビルに限っては、全てトヨタ自動車に取引を求 める会社で満室であり、他に空きが出れば他の入居者が増床を申し 出るくらいだ。豊田市のそごうが撤退した通り沿いである。名古屋 市内の主要なエリアのオフィスビル空室率が6%台になりつつある 中で、豊田市のオフィスビル空室率は1%台である。

世界に冠たるトヨタ自動車の本社機能が名古屋駅に移転するのであ る。その影響は想像だにできる。今の名古屋駅前に、トヨタ自動車 のもつ可能性に集まるビジネスチャンスをサポートするインフラが 果たしてあるのだろうか。駐車場、交流スペース、アメニティー・・・・

クラスター(集積)とは他のエリアに対して競争優位を持った地域 である。特に優れた産業を核にして経済的、社会的に優れた地域を さす。世界を見渡せば、ワイン産業で成長しているカリフォルニア のナパバレー。ミラノファッションを支えるアパレル産業企業群の イタリア北部コモ湖周辺。自動車産業の集積地ドイツ南部シュツッ ツガルト周辺エリア、そして周知のハイテク産業で有名なシリコン バレー等が挙げられる。

クラスターとは、優れた高度な産業があり、それを支える公共施設 が充実していて、産業を支える教育水準が高く、絶え間ないイノベ ーションが起き、情報が集まる等優れた要素等等がコラボレーショ ンされ、高い収益性、成長性を持った高度集積エリアである。

昔も今も呼び名は違えど、全国で自治体が、ハイテク工業団地を誘 致すると言う歌い文句で、工業団地を造成するケースが後を絶たな い。その多くは失敗して地方財政の大きな負担となっている。地方 行政として、それなりの誘致合戦をするのであるが、成果はまった く上がらない。

ハイテク産業の誘致によって、インフラが何も整備されていない地 域がいきなりシリコンバレーに変身したと言う間違った解釈が、地 方をその気にさせてしまっている。無責任なプロパガンダである。

ハイテク産業に必要な高度な知識を備えた有能な人材が、理由も無 く、東京等コアとなる都市にアクセスが可能であり同時に優れた住 環境、世界に通じる高い教育施設、家族の快適な生活・高い賃金等 が保障されないところに集まる必然性はない。

当地の近隣で、ハイテクソフトビジネスの育成を目的としたエリア 開発を行っているエリアでも、企業誘致の旗振りをしている大学の 教授が、東京に在住している。

シリコンバレー等のようなクラスターは、あたかも突然生まれ、あ っという間に成長したのではなく、いずれも優れた教育機関、豊富 な人材、温暖な環境、優れた住宅が整備され、常にイノベーション する行政、コミニティーがあり、成長の可能性があったエリアであ る。

カリフォルニア州サンノゼには、温暖で快晴が多い快適な気候を 背景にし、スタンフォード大学と言う世界トップレベルの歴史的な 研究教育機関をはじめ、多くの研究機関があった。ロサンゼルス、 サンフランシスコ等のコア都市にアクセスが可能であり、アメリカ 南部の果敢にリスクテークをする投資資金が潤沢にあった。

何も無いところにいきなりシリコンバレーと呼ばれるクラスターが 登場したのではなく、その成長過程を見れば当然成長すべく必然性 がある。イタリアコモ湖周辺、ナパバレー、南ドイツなども、何れ もそれなりの背景と要素を持ちえていた地域である。

名古屋駅前に世界で競争優位ある企業グループの中核が集積しよう としている。他の要素を考えてみると、名古屋は、住環境が短時間 のアクセスできる都市近郊に供給が可能である。気候は決して快適 ではないかもしれないが、豊富な水があり、北アルプス、志摩、三 河、遠州灘等日本有数の観光資源がある。その他日本の中心にあり 全国へのアクセス手段も他に対して優位性がある。

逆に必要なのは、公共財のイノベーション、情報インフラの整備、 先進企業人のビジネススキルをバックアップする教育、研究機関等 だろう。スタッフとしてサポートする人材は量的には問題ないだろ うが、質的に満足させれるだろうか。何れも公共投資に関するもの である。それも東京、大阪に並ぶための物ものはなく、世界で通じ るものでなくてはならない。

オフィスビルを考えてみると、以前旧態依然のビルしか周辺には無 い。情報インフラもあるとはいえ無い。アメニティーも東京に比べ たら十分とは言いがたい。トヨタ自動車に新しくビジネスを求めて 集まってくる企業は、30年も前に建ったビルにしか入れない。

ビジネスチャンスを高収益に実現できる社会インフラが求められる。 ビジネスマンをサポートする事、それが新しいニーズであり、ビジ ネスチャンスである。名古屋駅前では社会インフラの更新も財政難 を理由にほとんどされていない。

トヨタの社員は社命によって名古屋にやってくる。これらの社員が、 名古屋での職場に満足し、定着し、更なる活躍を期待したい。 この移転が失敗であるなら、それはトヨタにも失敗であり、 当然地域経済にも失敗である。このようなチャンスを目前にして、 行政、コミュニティー、財界がしなくてはならない議論があるはず である。

「2005」万博2005、中部新空港の開港2005、名古屋駅前の再開 発等2007、名古屋にとって100年に一度と言われるビックチャレ ンジが始まるまであと3年である。2005は名古屋が向こう何十 年と言う都市間競争に優位な立場となる、クラスターとなりえるビ ックチャンスであろう。

以上



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