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主筆:川津昌作
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オフィスオアシス 西柳公園

〈2023年5月20日〉

先般東京大学の仮想現実VRバーチャルリアルティ―の紹介を見て いた。ケンダマの、ひっくり返してお尻で球を受ける「灯台技」 が、VRを使うと短時間で習得できるそうだ。

VRで時間をスローにしてコツを習得するらしい。実際に素人がい とも簡単にできるようになるらしい。これが本当なら、ゴルフのイ ンストラクターは失業するだろう。スポーツのコーチ、大工などの 職業スキルの親方等々あらゆる分野に可能性が広がる。

スキルの習得が短時間で可能となり、VRはあらゆる身体機能の拡 張を可能とする。あらゆるスキル革命が起きようとしている。以上 前置き。

名古屋駅前で面白いポイントを見つけた。名駅4丁目の西柳公園 だ。興味のある方はぜひ天気のいい12−13時の時間帯に見に行 ってほしい。多くの近隣オフィスビルのビジネスパーソンが、昼休 みの時間になると日向ぼっこしている。

特に名古屋駅前に、なかなかなかったユーティリティースペースと なりつつある。名古屋で同種類のユーティリティースペースの例を あげれば、最近ロフトの閉店が決まった栄4丁目のナディアパーク の南にある矢場公園である。

この両者が持つ可能性の共通点は、都心の高度な集積エリアにあり ながら、本来なら高度に有効利用されてもいいところであるが行政 資本、民間資本の整備がなされず、公開スペースになっている。

特に都心の限られた場所で、公開スペースとして非常に大きな価値 を生み社会的資本化している公園は、世界で例にとれば、NYマン ハッタンにあるブライアントパークがある。

ブライアントパークは、NYの五番街と六番街に挟まれた公共スペ ースである。周辺が50階を超える摩天楼に囲まれた唯一の空間で ある。50階を超えるオフィスビルは、そのビルだけで独立した縦 の回遊性を形成してしまい、非常に閉鎖的となる。

これら息が詰まるような閉鎖的な摩天楼に従事するビジネスパース ンは、当然グランドレベルの太陽を見ることができる空間で一呼吸 を置きたくなる。これらのニーズを元にフリーなテーブル、チェア ーなどが設置されており、だれでもが、昼食のランチ会、あるいは ビジネスミーティング、様々なオフ会だけでなく、目的にない休息 ポイントとなっている。

公園自体はNPOにより管理され、ポリスが常に立ち回り、様々なル ールで守られている。最近では人気のスポットなり、冬季にはNY 人気のスケートリンクが設けられている。特徴あるマーケットも企 画される。つまり都心の窮屈な空間で様々なニーズに対応するユー ティリティースペースとなっている。

ブライアントパーク内では、きれいな管理者がいるトイレがあり、 隣が図書館となっている。レストランも常設されていた。筆者がコ ロナ禍前に訪れた時には、ポリスが皆の見える場所に立ち非常の安 心感、秩序をもたらしていた。

NYの7月の熱暑の中、この見回りの警察に隣接するレストランか ら、フローズンドリンクが手渡されていた。日本では、すぐのワイ トとか、特定の利益供与とか言って絶対に見られない景色だ。

ナディアパークなど大きなビジネス街がある所では、ユーティリテ ィースペースが機能する。逆にこのようなスペースがあるからナデ ィアパークのような周辺高層ビルの有効性が出てくる。オフィス街

のオアシスである。これが自然発生的に顕在化してきたわけだ。日 本的にマネイジメントすれば、桜の木と紅葉を交互に植栽してあれ ば、自然と人は集まる。まさにオフィスオアシスとなろう。ただ日 本の行政手続きから言えば、市民が自由に使えるスペースは都市管 理上許されない所でもある。

筆者がこの西柳公園に注目するのは、この公園がある地域はかつて の失業者の名古屋の象徴的なエリアであった点である。かつては東 京の山谷、大阪の西成などと比較されたエリアである。

今でも、年の瀬になると炊き出しが行われ、救護テントが登場する のが、この西柳公園である。ある意味聖地でもあり、行政が簡単に 手を付けられない場所でもある。

前出の矢場公園は、地下に松坂屋来客用の駐車場が古くからあり、 百貨店と言うかつての中心市街地のメインビジネスモデルの要であ った。そういった意味で今でも都市管理者が簡単に手を付けられな い所でもある。行政が簡単に手を付けられない場所に、間隙を縫う ように都市のある意味アクセスフリーなエリアが生まれているわけ だ。

都市と言うのは、一定の所得がある生産年齢の同質性の高い集団だ けで構成されるものではない。あらゆる世代、あらゆる所得、あら ゆる属性の人が集まり、多様な化学変化を生み出す必要がある。

アメリカの再開発では、原設計には必ず低所得者などの居住エリア を確保され、あらゆるマイノリティーのアクセシビリティーが要求 される。日本ではこれだけ「多様性」が情宣されているにもかかわ らず、様々な階層が隔離されている。都市管理の基本は、まさに保 守的なまでの同質性の保護である。

こういった、様々な属性のアクセシビリティーがあり、場所的にウ ォーカブルなニーズがあり、回遊の求心力があるポイントがオアシ ス的な魅力を持つことは非常に意義がある。

とりあえずお機能を邪魔しない程度に桜・紅葉などの季節的な彩を 付加する等々、ちょっとした工夫がなされることを期待したい。と 同時に、管理の手を加えず放置すると無法地帯になりかねないリス クも明記しておきたい。

人気のあるスポットは管理に手がかかる。これを怠ると無法地帯に なってしまった例はいくらでもある。現時点ではこのリスクと可能 性を両方備えた公園でもある。

高度に集積する大都市の都心部に、出生率などの社会的資本を期待 することはできない。しかし都心では人の交流による情報スピルオ ーバー機能が求められる。

オフィスオアシスがあり、そこで多様な交流が生まれ、化学反応が 起き、新たなイノベーティブな起源となる事。都市管理に最も必要 な要素である。

                                      以上

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