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主筆:川津昌作
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経済事件五輪汚職をどう考えるか?

〈2023年3月15日〉

東京オリンピックの汚職事件が底なしと言うか、ほぼすべての分野 に広がっている。

これだけの賄賂事件になると官製談合と言わざるを得ないだろう。 そのうえで日本的文化ではタブーの領域になってしまう。当然当ニ ュースレターでも控えたくなる話題だ。今回議論したいことは経済 事件を軽く容認してはいけないというポイントである。

大きな歴史から事例をいくつか引用しよう。かつて中国は、毛沢東 亡き後改革開放路線を取り大きく成長し今に至る。日本ドイツの戦 後経済の成長を成功、奇跡の象徴とされるが、中国の改革開放の成 功も21世紀の奇跡の一つとなろう。

この中国の改革開放の成功の要因とされるのが、中国社会特有の儒 教文化社会に根付く親子間、親族間、身内間の特別な縁故主義であ る。儒教に基づく忠義より考が優先され、例えば、親が犯罪を犯し たとき、警察官である息子が仕事の忠実な忠義より、親孝行の考を 優先して、逃がすという逸話話がある。

これは明らかに、外部の第三者から見ると縁故主義に基づく「汚 職」である。しかしこのような慣習を少しでも改善して、海外に対 して透明性をしめし、市場開放を行った。必ずしも完ぺきではない が、この改革開放が功を奏し、今の超経済大国に成ったと言われて いる。

方や、ソ連は1990年代のソ連崩壊時に、本来情報公開による市場 改革の機会があった。しかしソ連崩壊以後の現ロシアの再構築にお いては、従来からのロシアの悪癖であった汚職を一掃することを怠 り、むしろ逆戻りしてしまった。

結果的に、海外からのロシアへの投資は限定され、中国のような市 場開放が海外に認められず、結果的に経済は低迷し、以前からの鉱 物資源に依存した国家体制に逆戻りしてしまった。

このロシア経済の低迷が、現在のウクライナで起きている紛争の原 因となっている。こうしてみると汚職などの経済事件、はたかが 「社会の必要悪」、「社会的慣習」、「国家的アイデンティティ」では 片づけられないものとなる。

20−30年前になるが、アジア開発銀行の法務部トップの方のお話 を聞く機会があった。当時、アジアの多くの諸国が、まだ発展途上 国のカテゴリーにあった。発展途上国での汚職の実態の話であっ た。

本来日本など経済先進国では、効率的な経済システムが存在してお り、そのシステムを使えば、効率よく経済行為である商取引が行わ れることになる。当然この効率的な経済システムを利用するために は税金と言うコストを支払う。

一方、先進諸国のような効率の良い経済システムをまだ持ち得ない 発展途上国では、商取引をうまく効率よく実行するために、様々な 仕事を税関の役人、都市の警察・管理者などに「個別で」依頼する 必要がでてくる。この時当然コストがかかる。

このコストが賄賂となる。そしてこの賄賂がやり取りされ、特定の 商取引が優先かつ安全に執り行われる仕組みが汚職、談合となる。 このアジア開発銀行の方の話は、善悪の議論ではなく、成長段階に おける経済の為の必要悪と言う意味であったと受け取った。

今回の五輪汚職だけに限らず、日本でもいまだに多くの汚職が新聞 紙面に登場する。その多くが何らかの便宜を要求する賄賂のやり取 りであり、また談合である。

ご当地愛知県で見れば1994年に愛知県芸術文化センターの建設に 絡み、建設会社から設計変更の便宜に関連して、時の副知事が賄賂 を受託したとして県政に司直が入った。

さて五輪汚職である。次に札幌が冬季オリンピックに手を挙げてい るせいか、官製談合に対する国民文化なのか、あるいは管制報道は ないだろうが、世論の判断はもう一つ盛り上がりをかけている。こ の盛り上がりの無さを日本的和のよき文化としてしまっている。

札幌冬季オリンピックの誘致は、個人的には賛成である。応援した いくらいだ。しかしそのためにも明確なけじめが必要だろう。

しかしその一方で、ラグビーの35年男子ワールドカップ、37年女 子ワールドカップ誘致に名前が挙がってしまっている。これは報道 を見る限り、21年の成功をもとに主催者協会からの秋波があるや に聞こえる。

汚職談合を、社会の必要悪なコストとして放置するのではなく、ビ ジネスの公明性が担保されており効率が良いという評判がたてば、 向こうから投資機会がやってくる。今回の五輪汚職は、中国の改革 開放の成功と、ロシアの汚職経済国家への逆戻りのまさに分岐点で ある。

日本はこれから少子高齢化に向かい、優秀な人材、海外の高いマネ ーの投資を海外から呼び込まなくてはならない。今まで以上に信頼 される市場を作らなくてはならない。今までと同じことをしていて は、いけないわけだ。

身内をかばう。ある意味、儒教に根差した中国の縁故主義と同じで ある。これを改善することによる経済市場へのインパクトは中国の 経済成長が証明している。「変われるときに変わる」「変われるチャ ンスを見逃さない」。これがマネイジメントである。

                         以上

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