ニュースレター

主宰:川津商事株式会社
名古屋の不動産何でも相談室がお送りする、不動産・ビジネスに関するニュースレター「名古屋ビジネス情報」へのご登録ありがとうございます。
不動産にとどまらず、名古屋のビジネス情報、街づくり話題、不動産経済、市場トレンドに関するニュース、物件情報など時代の変遷とともに広くお伝えしています。

特記事項 弊社ニュースレターは、弊社の関係者及びお得意様に限定して、不動産ビジネスを行う上で注目すべきテーマをタイムリーに取り上げ、問題点を共有する為の ワーキングペーパーであります。公的機関を含む他のセクターへの提言、請願、上奏、不特定多数への拡散を目的としたものではありません。転用を禁止します。 取り上げる内容については、成熟した定説を取り上げるのではなく、早熟なテーマを取り上げるため、後から検証すると拙速な結論になってしまっていることもあります。 そう言った事を十分にご理解したうえで、ご参考にしていただきますようお願い申し上げます。

イノベーションパラダイムチェンジが起きるのか?

〈2019年11月25日〉

最近になって筆者の購読するネット配信ライブラリーが新しく増え た。通常筆者の専門の対象は社会科学であるが、今回は技術雑誌系 である。従来でも自然科学の論文雑誌ネイチャーのネットブリーフ 版は時々見てはいたが、それに加えて新しい理工技術系の雑誌を読 みだした。市場で明らかに科学技術知識に対するニーズが顕在化し ているように見受けられる。

弊社のニュースレターで頻繁引用してきた理論・ビジネスソリュー ションに「ゲームの理論」がある。直近の10年前後を通じて、ノ ーベル経済学賞の対象ともなって来た、現代社会科学の中心的な理 論となっていると言っても過言ではない。

広くグローバル経済におけるサプライチェーン等はまさにゲームの 理論を背景にしたビジネスソリューションであった。所与の条件の 最適化のソリュウションがサプライチェーンあるいはプラットフォ ームであった。そして更に広く地球環境問題などにもその解決の一 助となると期待されてきた理論である。

しかし現実には、ゲームの理論で考えるソリューションである「最 適化」は全体的な地球的な公益を生むのではなく、自分たちの周 り、グループだけの利益を最適にする選択が求められてしまってい る。

地球環境問題では、温暖化の源とされるCO2排出量の削減を手持 ちカードとして、最終的には都合よく自国の経済的利益を優先して しまう状況だ。何はともあれ、今の国際的な話し合いで解決しよう とする枠組みでは、地球環境問題は悪化の一途をたどり、改善の道 筋は見つからない。この枠組みにすでに市場が見切りをつけ始めて いる。

国際社会の場、国連の様々なパネルが開かれても、地球環境問題の 解決の有効なソリューションがなかなか見つまらないまま、いよい よ人間社会に壊滅的な異常気象の被災が起こり始めた。つまり現状 の国際パネルなどで時間をいくらかけても解決できない現実が明ら かになり始めたわけだ。

その中で、今新聞などの論壇で、イノベーションによる社会変革と 言う論調が頻繁に登場し始めた。イノベーションとは企業間競争の 競争優位を勝ち取るための戦略と言うのが従来の位置づけであった はずである。イノベーションに今何が起きているのであろうか?

従来では一企業の立場から、地球温暖化対策は縁遠すぎる分野であ った。企業のイノベーションも自身が市場の中で企業間競争に生き 残る手段でしかなかった。しかし今や、市場で生き残る以前、に地 球環境に負荷をかけ続けること自体企業の直接的な存続にかかるま でに、環境問題が直接身に迫ってきたのである。

グローバル規模の指針、国の指導、市場の規範によって新しい環境 に負荷の少ない技術開発を目指すのではなく、一企業自ら自己の存 続維持可能性のために、自ら進んで持続可能な新しい技術革新を標 榜しだしている。つまり企業競争のためのイノベーションではな く、社会維持のためのイノベーションである。

そういった背景で、新聞などの論壇で、企業競争、利益追求のため の新しい食糧技術、エネルギー技術、モビリティ技術、医療技術、 通信技術の技術開発ではなく、食糧問題、エネルギー問題、モビリ ティ問題、医療問題、通信問題などの社会問題を解決するためのイ ノベーションの認知と言う表現が登場し始めたと考えられる。

国際的な国同士の話し合いを待っても解決できない地球環境問題、 地球規模で蔓延する様々な社会問題を、一企業の立場から新しイノ ベーションによって解決せざるを得ない状況になってきた。地球規 模の問題・社会問題を解決する技術を開発しなければ市場すら分断 し生きられないということだろうか?

もしこのような論調にイノベーションの論調が変わりだしたら、イ ノベーションの手法も大きく変わるのではないだろうか?結論を言 えば「創造的破壊」と呼ばれるシュンペーター世代のイノベーショ ンはなくなるのではないだろうか?

例えば、従来のイノベーションに旗手ともいえるアップルの iPhoneはこれと言った基礎的技術におけるイノベーションを自ら するのではなく、他社の未成熟のイノベーションを集めて市場で実 効性ある新商品を開発した。つまりマーケットにおける従来商品の 優位性の破壊と、その後の自社の優位性の確立がそのイノベーショ ンモデルの本質であった。

よく当ニュースレターでも何度となく言ってきた、「破壊」こそア メリカの真骨頂である。和食の寿司でもなんでもアメリカがいち早 く取り入れるが、アメリカ国内で和食・寿司は完全に破壊されてカ リフォルニア巻きなどの新しい和食文化をいい意味でも悪い意味で も作り出してしまう。

それが新しい和食のイノベーションとして評価されてきた。和食だ けではない。フランス料理でも、イタリアンでもメキシコ・トルコ 料理も、ラーメンもなんでも取り入れて破壊してしまう。そしてア メリカスタイルにしてしまう。

ハリウッドは、かつて邦画ゴジラをリニューアルして米国の映画化 をした。しかし初代のハリウッドゴジラは日本古来のゴジラを完全 に破壊してしまった。新しいゴジラをつくろうとしている。さかの ぼれば黒澤明の「七人の侍」をリメークと言う破壊を通じて西部劇 にしてしまった。

アメリカはその社会的優位地位から他国の文化を破壊しても何にも 文句を言われない。そもそもアメリカには歴史的な継承が少ない。 だからこそできる破壊である。破壊をしてしまえば新しいものを生 むことは簡単である。これが欧米流イノベーションの本質でもあっ た。

日本のように、昔からの成功体験にいつまでもしがみつき、破壊で きない文化は、継承的改善による創造しかできない。これが創造的 破壊イノベーション競争で欧米に勝てないと言われた点である。

ビジネス市場ならば壊して新しく作ることは可能かもしれないが、 社会は新しい創造のためと言えども壊すことはできない。社会変革 のためのイノベーションは、従来型の創造的破壊とは違うのではな いかと筆者は考える。これが表題の、インベーションに新しいパラ ダイムチェンジが起きているのであろうか?という問いかけであ る。

最近金融、経済の話題より様々な理工系の話題の方が注目されるよ うな気がするのは筆者だけだろうか?直近のGoogleの量子超越の コンピューティングの話題が、どうしてあそこまで盛り上がったの だろうか?もっと言えばどうして、このような基礎技術の開発を大 学などの基礎研究機関でなく、新興のGAFAが手掛けたのであろう か?

素人目に見ても、Googleの今回の行動は従来のマーケティング上 の競争優位のための創造的破壊をしてきた企業とは違うような気が する。もしパラダイムチェンジが起きているのであれば、今後生き 残る企業、退場する企業がどこだろうか?

皆さんは最近のイノベーションの論調をどのように思われるでしょ うか?言えることは、このニュースレターでも社会に変革をもたら す科学技術の話題が多くなるであろうことである。

以上

イノベーション創造的破壊環境問題温暖化対策名古屋ビジネス情報