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主宰:川津商事株式会社
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育つか!メルカリ世代

〈2019年8月20日〉

既にメルカリを利用している人も多くいるだろう。いらなくなった いろんなアイテムを売却するネットサイトである。テレビのトレン ド番組でも取りざたされ、幅広い世代に普及しつつある。

最近、このメルカリの若者利用者の消費行動が変わってきたという 新聞報道を見かけた。要は、メルカリで売ることを前提として、売 りやすい物を買う消費行動が顕在化しだしたということである。

メルカリで売ることを前提としたということは、メルカリで高い値 段が付きやすい、もしくは売却速度が早い、メルカリ映えする商品 を選んで買うという消費者行動である。

当たり前の行動であるはずであるが、今までの日本ではなかった非 常に重要なトレンド変化である。使い切る、お蔵入りになることを 前提として買うのではなく、売ることを前提で購買行動をすること である。

これは、消費者から言わせれば、売りようにも売る手段、売るシス テム自体が無かった。システム側から言わせれば、中古市場が見下 されてそもそも市場参加者がいなく、市場自体が育たなかったとい う、言い合いになっていた。

このような消費財の購買行動を、消費財以外の株などの金融商品、 家などの不動産で考えてみるとわかりやすい。アングロサクソンの 文化は、売ることを前提に売りやすい株、家、売価が高い評価を得 やすいものを選んで買う。もっと言えばアングロサクソンの金融投 資行為は、買う(コール)ことより売る(プット)ことから先に入 るともいわれている。

株式市場に投資目的で参加する場合、日本では上場企業の株を買っ て保有することが投資である。アングロサクソンでは、株を買って 投資を始めるのではなく、先に株を高く売って安くなったら買い戻 すということから始めると言われるくらい、日本文化と真逆であ る。

投資行為で最も重要なことは何か。それは「投資期間」である。期 間には始まりと終わりがある。始まりは株式などを購入・売却する ことである。そしてある期間が過ぎてその投資を手じまいする。手 じまいして初めて利益が確定する。そこで最も重要になる投資戦略 はどのような期間を想定するかである。日本ではいかに安く不動産 を買うかに関心が集まるが、その後の価値は全く関心が無い。

「出口戦略」つまり“イグジットストラテジー”が投資では重要に なる。と考えると、投資で設定した期間の終了で売却するときにい かに高く売れるかが重要になる。この売却時の価値が高ければ投資 も成功となる。期間を考えるということは、期間終了時の価値を考 えるということである。

この期間終了の価値をターミナルバリューという。日本語はあまり 使われない。あえて言えば「期間終了売却価格」である。アメリカ では不動産で居住用家を購入する場合でも、常にターミナルバリュ ーを意識する。そしてこのターミナルバリューを高くするためにと られる手法がプロパティマネジメントという仕事になる。

日本では、アメリカから順序を逆に投資文化を輸入してしまった。 目的であるターミナルバリューの重要性を輸入する前に、その手法 であるプロパティマネジメントなどのビジネスモデルを輸入してし まった。その典型的な例がDIY産業である。

DIYとは工具修理部材販売の大型スーパーマーケットである。アメ リカの家庭のお父さんが、家を常にメンテナンスして価値を高く維 持したいというニーズに応えたビジネスモデルである。日本では、 ターミナルバリューのニーズなしにこのビジネスモデルを輸入して しまった。結果的にプロの大工のための問屋化してしまった。日本 的ガラパゴスビジネスとして進化している。

投資行為、消費行動における出口戦略ニーズの欠如は、最近のシェ ア文化にもおかしな現象をもたらしている。上述のように購入して もある程度の期間で売却をする前提の所有では、結果的にレンタル に近いコストで、売価できる。その結果所有とレンタルビジネスが 良い意味でお互い競合していた。

所有不動産を常に手を入れて価値を維持されたため、レンタル物件 も所有に負けない上物の賃貸にも使われた。その結果所有物件が賃 貸可能となり、投資資産となりえた。しかし日本で所有される家な どの不動産は、一生同じ家に住む覚悟でしか家を購入できない。賃 貸することもできない。したがって価値を維持する必要もなく、不 動産でありながら投資の対象とはならなかった。日本では購入する とすべてが空き家予備軍となる。

アメリカで日本の借地借家法のような制約がなく、居住不動産で も、いつでも賃貸の対象となりえた。そして借り手の満足を高める ように商品としての進化が求められた。投資概念の「期間」そして 「ターミナルバリュー」は、まさにメルカリによって変わろうとし つつある消費文化である。

メルカリによってようやく、出口を意識した消費行動が日本で芽生 え始めたことになる。消費の出口を明確に意識し始めたメルカリ世 代が育つことによって、日本の市場システムも大きく変わることが 期待される。

以上

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