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主宰:川津商事株式会社
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均衡を追わなくなった市場が追うものは何か?

〈2019年7月5日〉

前々回から市場の均衡理論と非均衡化する社会の関係を議論してき た。均衡を求めても、有効な均衡がないことが今の市場あるいは社 会の特徴である。その結果、あちらこちらで拡散する現象が今の時 代を象徴しているわけだ。

専門用語で少々説明すると、現代貨幣理論(MMT)では自国通貨建 てで発行する国債は「非制限支払い能力」を有するという考えが重 要視される。非制限支払い能力とは、要はお金にしても借金の国債 にしても、どれだけでも印刷して増やすことができる。それに制限 がないという考えだ。ただし自国通貨、基軸通貨に限られる。

もし均衡が求められれば、財政規律と呼ばれる国の借金と税収のバ ランスが求められるが、全く真逆の考えが容認される。ちなみに、 世界から見ると、日本はこのMMTを実践している唯一の国という批 判がある。もちろん日銀は否定しているが、財政赤字を本気になっ て解消しようとしていない姿勢がMMT政策と言われるゆえんだ。

ということで収束する均衡が、社会そして市場の唯一の解決のソリ ューションでなくなってきたのが今のありさまである。では、均衡 の代わりに社会、市場は何を求めているのだろうか?その答えが 「最適」である。

この「最適」の正当性を理論づけるのが「ゲームの理論」である。 近年のノーベル経済学賞の多くがこのゲームの理論の分野であるこ とは言うまでもない。社会の中で勧善懲悪により絶対的な善と悪に 分けてそれを求めるのではなく、与えられた所与の要件の中で最適 な答えを求める理論である。

今、社会を見回すと「最適化」するという派生語が頻繁にみられ る。「最適」に「化(ば)かす」ことを意味するのだろうか。最適 化の問題点は、与えられた所与の要件の中で最適を求めるときに、 手に負えない都合の悪い所与の要件を無視してしまうか、あるい所 与の要件の組み合わせを作り替えてしまうところにある。ただしそ れを問題と言ってしまうとビジネスが成り立たなくなる。

最適化を目指す社会の顕著な弊害が、地球規模で進む気候変動問題 の先送りなどである。個々の企業、国との因果関係が明確でないあ るいは手におえない場合、所与の要件を所与とせず無視して自分の 利益の最適を求めてしまう。その結果、気候変動問題が先送りばか りされて解決できず、悪化するばかりである。

これは、私どもの極端な考えであるが、ノーベル経済学賞でゲーム の理論を賞すれば賞するほど気候変動・地球温暖化問題御の解決が 据え置かれることになる。

日本の住宅の空き家問題も、不動産の専門家の間では、住宅市場が ゲームの理論のナッシュの均衡に陥っているからだと言われてい る。持ち家に投資をして価値を高めても何も利益がないのが日本の 住宅市場である。価値を高めればもっと高く売れる、金利が安くな る、保険が安くなる、投資価値が上がると言った得があれば、空き 家にならずにもっと大事にする。

日本の住宅は何もしない方が得なわけだ。これが最適な答えであ る。つまり最適な答えを求めてそれで行動すると、社会全体は何も しない人の集団社会になり、その集団社会は何もしないわけだから 当然価値も生まない社会になる。これが日本の価値のない住宅を生 み続ける住宅市場の現状である。

そしてグローバル経済のビジネスの現場でも、この最適な意思決定 が優先される。絶対的な善悪を追求しても会社の利益にはならな い。利益を最適化することが良い経営者である。という考えに偏向 してしまっているわけだ。

そしてビジネスソリューションの最適化が、自社の利益の極大化に なるように、ゲームの所与の要件を作り替えてしまうことが、市場 あるいは社会を支配する努力目的になっている。

20世紀の市場の価格は市場の均衡できまった。しかしその価格を 自社の利益が最大になるように都合よく支配できれば、企業を成長 させることができる。そのための資本を巨大化してその力で市場を 支配した。これが20世紀の資本主義の姿であった。

21世紀の資本主義も、同じく市場のヘゲモニーをとることが企業 の最大の関心事である。Google、Amazon、フェーズブック、アップ ルなどが力をもって、自社の利益の極限化を実現する所与の要件に 作り替える。自社の利益の極限化を実現する所与の要件こそが、彼 らが作り上げたプラットフォームである。

GAFA以外にも自社の利益を極限化しようとする、新たな挑戦者が 次から次へ現れてくる。それが中国であり、ファーウェーである。 彼らは皆、市場・社会の最適化が自社の利益を最大になるための新 たなプラットフォームの覇権争いをしているのである。

以上

均衡拡散最適プラットフォーム名古屋ビジネス情報