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主宰:川津商事株式会社
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歴史研究が観光産業の源になる。

〈2019年5月25日〉

琵琶湖から京都市内通じる琵琶湖疎水という運河がある。今この運 河を遊覧する観光が人気を博している。シーズンには予約が取れな い程らしい。非常に注目される観光資源となって甦った。

実はこの琵琶湖疎水に対する研究報告が先の社会経済史学会の全国 大会であった。滋賀大学の筒井教授の報告であった。明治の京都産 業の振興の目玉として発電、工業振興、水運など様々な目的で開発 された。京都の史跡である。これをあまり仲のよろしからなる滋賀 県再度からの報告とみると、またこれ下種の勘繰りになってしま う。

そもそも滋賀県サイドでは琵琶湖の治水利権から反対があった。そ れがなぜ反対が覆ったかという点が議論のポイントである。当時琵 琶湖東岸では上布と呼ばれる麻布の一大産業地であったが、明治に なり需要が減り停滞する状況で、近代化(機械化)が標榜されてい た背景があることが滋賀県サイドからの賛成の意向であったよう だ。

また琵琶湖東岸は古くから近江商人が存在するエリアである。この 近江商人の蓄財した財力を京都に取り込みたいという意思が京都サ イドからあったことも新しい知見と言えよう。

弊社の興味は、琵琶湖疎水のような産業史跡が、いま観光資源化し て大きな成功を収めている例が日本中で登場していることだ。伊豆 韮山の反射炉、富岡製糸工場群、石見の銀山等々だ。これらは歴史 的な研究が盛んになり、その結果として観光資源化したのか?ある いは観光資源化しようとして歴史的研究が増えたのか?どちらが先 だろうか?という点である。

結果としてはどちらが先でもいいが、その観光資源化の経済効果は 非常に大きく、今後の日本御観光産業の大きな柱になることは事実 である。歴史研究と観光振興が非常に強いリンクを持っていること を再認識できたわけだ。

ということは、もっと歴史研究、郷土史研究が隆盛することが、観 光産業振興の起点になるということである。そもそも社会経済史学 会の前身は土地経済史であった。土地の利用の歴史がそのまま高度 化した社会経済史になっているといっても過言ではない。

今本屋に行くと、新書などで郷土史を書いている人が多い。しかし なぜか史的理論学者ではなく郷土を愛する一般の人達が多い。これ には新書本マーケットの事情があるのだろうが、民間の郷土歴史家 が面白おかしく食い散らかしてしまうと、学者先生は研究室に閉じ こもってしまう危険がある。名古屋はこの弊害も多少あるのではな いだろうか?

今回のように、琵琶湖疎水の研究が著名な学会で報告されること自 体、非常に重要な情報発信である。名古屋は情報発信が下手だと言 われる。木曽川の治水の歴史、名古屋城下街の歴史、三菱製作所の 産業史、堀川・運河の歴史的意義等々、もっと研究が露出してもい いはずだ。

最も研究による情報発信が期待されるのが明治村だ。明治村の資産 が歴史研究の対象として情報発信されれば、その可能性は非常大き なものとなる。それはそのまま運営に直接かかわっている名鉄の企 業価値にも大きく影響するはずだ。逆に歴史的意義が学術的な評価 につながらなければ、明治村はいつまでたっても単なる懐古的な遊 園地でしかない。

明治村は現在財団法人になって資産の保存を目的とした運営がなさ れている。資産の中にはもちろん文化財としての価値を認められて いるのもある。一方で各地に散在している重要な文化財は、その保 存方法が危惧されている事実もある。明治村を新しい学術研究の保 存の在り方と、明治史を検証できる観光ビジネスとの共存が提案で きるはずだ。

そういった研究活動を発信することによって、又新しい環境資源と しての価値も上がってくる。これは時代のトレンドであり、新しい 市場ニーズでもある。名古屋も歴史学者、歴史有識者が、もっとも っと舞台で活躍すべきであり、もっとスポットがあてられるべき だ。

以上

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