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主宰:川津商事株式会社
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プラットフォームとしての都市のイメージ

〈2019年2月20日〉

ある会合のセミナーで、近い将来輸血用の血液が絶対的な不足に陥 るという話を聞いた。本当かどうか、輸血可能年齢をGoogleして みると18歳−69歳(女性は一部目的で54歳)とある。

ネットで調べる限り、2027年に輸血用血液の供給に必要な献血者 数が545万人に対して、2013年の献血率をもとに2027年の献血者 数を予測すると459万人となるらしい。人口減少下で献血率をあげ ないと血液の輸入いよいよ始まるのであろうか?

前回のiPhone 販売の低迷が示す社会の大きなトレンドの議論で は、iPhone等クライアント側のサイズとホストつまりプラットフ ォーム側のサイズとの均衡が新しい技術革新を生むという「クライ アント−ホストサイズバランス進化論」を紹介した。

その中で、都市の中で人の顔認証システムが完成すると、そもそも 人が様々な決済スマートフォンを持つ必要がなくなる可能性を取り 上げた。それは都市というプラットフォームのアップサイジングで あり、クライアントサイドのダウンサイジングを意味するものであった。

将来の都市には、この顔認識センサーシステムだけでなく、モータ リゼーションの自動車自動運転センサーシステム、更に様々なもの サービスの自動取引契約を支援するセンサーシステム等のニーズが 顕在かしてくることは明らかである。

将来の消費・生産・投資活動のプラットフォームを都市という概念 に投影すると、従来の街づくりの概念を大きく拡張する必要があ る。少なくとも従来の都市管理者には、パラダイムチェンジが求め られるのではないのではないだろうか?

しかしその一方で、不確実で、大量に垂れ流されてくる様々な情報 に左右されることなく、しっかりした方向性を持つ必要がある。今 回はモータリゼーションの一つの方向性としてその可能性(イメー ジ)を議論したい。

名古屋の都市構造を、大都市東京の都市構造に追随し続け、今の東 京のように作り変えることはできない。そんな財力もないしそもそ もそんなニーズもない。仮に追随し続けたとしても差は広がるばか りで、格差の象徴になるだけだろう。あまり意味がない。

東京と名古屋の都市の決定的な違いの一つに、地下鉄・鉄道網の進 化がある。東京では、少し歩けばすぐ次の駅に行きつき、歩行が十 分に可能な都市であり、それゆえ道路に立ち並ぶ店舗の経営も成り 立つ、人も目が行き届き監視が効き、質の高い治安のよい街並みを 実現している。

東京の都市構造は極端なことを言えば、特段、自動車産業にコミッ トメントする必要のない、アメリカで言えばニューヨーク、ヨーロ ッパの古都の都市構造に似ている。

一方自動車大国ドイツを見てみると、ベンツ等による自動車自動運 転支援システムが世界でも先端的な評価を得ている。その一つが自 動パーキングシステムである。セールス映像を見ると、駐車場の入 り口で運転者が下りると、あとは自動運転で駐車場内の指定の場所 に納まる。帰りもスマホでお指示を送ると、入り口まで自動運転で 車がやってくる。

車社会の将来可能性をイメージすると、名古屋都心のどこかに自動 車で向かう時に、目的の例えばブティックに行く場合、自動車でブ ティックの店の前までいきそこで降車する。その後自動車が自動で 近くの駐車場を自動検索し、そこまで車が運転手なしに自動運転し ていく。

用が終り、スマートフォンなどで指示すれば、その店の前の乗降車 ポイントに自動車が自動運転でやってくる。このような自動運転社 会が実現すると、名古屋の大通りに面したところに高級レストラン や、ブティック店舗が立ち並ぶ都心風景がイメージできる。例えば 今大通り過ぎて店舗が入らない桜通りなどが一変する可能性があ る。

ちなみにこのシステムは、現在ロサンゼルスLAで自動車での来客 が車を降りた後その店、ホテル、レストラン専属のバトラー(配車 係の人)が車のキーを預かり、駐車場へ配送するシステムである。 典型的な車社会のLAの原風景である。荒唐無稽なイメージではな く、この人が行っている現風景の自動運転版である。

リニアの駅前にも車の乗降者ポイントだけがあり、そこで降りた後 は自動運転で予約してある近くの駐車場に納まる。東京出張からリ ニアで戻った人も、スマートフォンで自分の自動車もしくはシェア 車を呼びつけ、それに乗って自宅へ帰っていく。

自動運転時代の新しいモータリゼーションの一つの風景だ。そのた めの様々な環境整備が都市プラットフォームとなる。おそらくドロ ーン時代になってもこのようなモータリゼーションがイメージでき る。

このような自動運転システムは、車社会の都市の将来像である。極 端なことを言うと東京などの非車社会ではむしろ鉄道、タクシー主 体の連携自動システムが必要になる。車社会と非車社会では都市の プラットフォームに対するニーズが違う。

名古屋はトヨタを抱え車社会を標榜するべきだろう。東京がニュー ヨークに見られる地下鉄・鉄道網社会に対して、名古屋は車社会の ロサンゼルスに近い。東京に追随することなく、自動車産業にコミ ットメントした都市の新しいプラットフォームと言えよう。

ただし、名古屋の都市構造を取り上げるとき、当ニュースレターで も何度もお叱りを受けるが、東京の非自動車であり鉄道地下鉄重視 型都市からすると、名古屋の車社会が如何に不便で人気がなく、不 評を買っているかという点を認識理解する必要がある。

この不満は、ロサンゼルスに行けばよく分かる。名古屋をしても馴 れないロサンゼルスのような車社会は不便に感じる。買い物から、 通勤、通学、仕事すべからく自家用車、レンタカーなくして移動は ほとんどできない。しかも渋滞がひどい。

車のない新参者(観光者も含めて)には非常に不便でコストがかか る。まず街区の構造的スケールが歩く距離ではなく、車の移動距離 である。もちろん東京のように普通に道路サイドに物販飲食店が成 り立たない。歩行者がいないからだ。

それでも無理に歩くと不便だけでなく治安上の問題も出てくる。バ ス自体が格差社会の象徴となり、治安上の問題もでてくる。ちょう ど現在の名古屋の桜通りを歩くと、店舗が極端に少なく、その分人 の目による監視も行き届かない。

表通りに人通りがなければ、その裏側のまちづくりも集積した日本 的なまちづくりは期待できない。ちょうど名古屋中区の丸の内界隈 が空洞化して、なかなか再生しにくいのもそういった理由がある。 LAほどではないが東京感覚で名古屋に来るとそれにいた不便さを 感じるということだ。

ここで理解しなければならないことは、ではLAは不便で、治安が 悪く、コストがかかる生産性の悪い都市か?そうではない。アメリ カナンバー2の大都市である。その規模、集積度はNYマンハッタンに肉 薄し、エンターテイメントにおいては世界をリードする都市であ る。車を使いこなし非常に便利のいい生産性、収益性の高い都市で ある。

LAにNYの生活仕様との比較で、その不便さを問題視する人はいな い。むしろLAの車社会のメリットを十分に享受して、レベルの高 い生活を実現する人たちにとっては、素晴らしい生活のプラットフ ォーム(都市)である。名古屋もこれに気が付く必要がある。東京 のスタイルを投影して、同じことをしようとすれば寸足らずで不便 であり、評価は得られない。

しかし名古屋には名古屋の車社会の生産性の高い都市構造がある。 その構造のメリットを理解したうえで使いこなせば、また別の良さ が出てくるはずである。

そのためにどのような都市というプラットフォームを構築する必要 があるか?これを議論しなくてはならない。

以上

モータリゼーションNY東京ロサンゼルス