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アジア大成長時代のポジションは?

〈2019年2月10日〉

今回のサッカーアジアカップの準々決勝では、FIFAランキング50 位の日本が、100位のベトナムに1-0で勝った。しかしこれをTV のワイドショーのコメンテータが100位のベトナムに、何とか日本 が「辛勝」したと言うふがいなさを伝えていたことに非常に違和感 がある。

100位と言えども統率されたベトナムが、50位の日本に1点差のと ころまで既に差し迫っている現実がそこにあったはずだ。国のスポ ーツ文化の底上げには背景となる経済力が必要となる。アジア諸国 の社会文化のレベルは日本と一点差の辛勝のところまで来ている。 10年、20年後どうなっているかは予測ができない状況だ。

アジア諸国の経済成長は今どのような状況にあるのだろうか?今後 どこまで進むのであろうか?今回はそれを議論してみたい。「人口 ボーナス」、「金融緩和」、そして「高齢化率」というキーワードか らくる理論を使って進めていきたい。

まず「人口ボーナス」とは、人口が増加する過程で特に生産年齢 (15-65歳)の人の増加が、全体の増加率を超える状態を指す。働 き手が多くなるとその国の労働所得が増え、国の全体の所得が非常 に高く伸び、国全体の経済が高成長する。つまり人口ボーナスはそ の国の社会レベルを押し上げる。プラスに作用する。

次に、「金融緩和」である。これは東大の西村清彦先生が日銀副総 裁を退職されたのちに著した有名な論文によるが、人口ボーナスの 時期に“信用サイクル”が重なると非常に大きなバブルが発生する というメカニズムで説明される。

信用サイクルとは、大きな金融緩和が、ある期間でサイクル的に発 生することを意味する。例えばリーマンショック前に世界すべての 国のGDP総合計の倍以上の信用(マネー)が市場に供給されてい た。その破たん調整がリーマンショックであった。

そして今、またグローバル市場に世界経済規模の倍以上のマネーが 還流している。欧米、中国、日本の異次元の金融緩和によるもの だ。これが信用サイクルである。今、アジアの諸国が人口ボーナス の時期にあり、それがこの金融緩和によるサイクル的信用供給を享 受できるタイミングにあると、非常に大きなバブル(成長)となる ことができるわけだ。

日本の1990年代に破たんしたバブル経済が正に、典型的な日本の 人口ボーナス時期にサイクル的な過剰金融が重なり合い非常に大き く成長したバブル経済であった。現在、日本は逆に人口オーナス (反対に労働生産年齢が極端に減少する状況)に入り、大きな経済 停滞期に入っている。

西村先生は、今問題となっている厚労省の統計問題を指摘した方 だ。この問題は、この人が見つけ指摘したからこそ問題化できたと 言える。他の方の指摘であれば闇に葬られたかもしれない日本経済 の致命的な失態である。

西村先生の理論では、人口ボーナス時期と信用サイクルが合致しな かったドイツは、日本のようなバブルを生じ、その後の大きなバブ ル破たんも避けられたという考えを示している。

日本のバブル経済の前の高度経済成長時(1970代)も人口ボーナ スの時期に入っていたが、信用サイクルとは一致していなかったた めバブル化しなかったとも考えることが出来よう。

しかし1990年代のバブルは、引き続き継承していた人口ボーナス とサイクル的な信用供給が重なり、非常に大きなバブルが創成され たと考えられる。人口ボーナスの期間が長ければ、その間に生じる 信用サイクルが複数あれば複数大きなバブルが生じるとも考えられ る。となると人口ボーナスの期間が長ければ成長潜在力が高まるこ とになる。

その一方で、最近アジア諸国で懸念されている成長のマイナス要因 が急速な「高齢化」である。最近新聞でもしばしば登場する倍加年 数(65歳以上の高齢者が全人口に占める割合が7%から14%にな るのにかかった年数)を見ればその懸念は明らかである。倍加年数 が短ければ高齢化が速いことになる。

以下のデーターでは、高齢化率7%になった年と更に14%になった 年(推定年)、その年数(倍加年数)を記載してみた。

     7%年  14%年  倍加年数(7%→14%)
韓国      2000  2018  18
シンガポール  1999  2019  20
中国      2001  2025  24
日本      1970  1994  24
ギリシャ    1960  1993  33
フィンランド  1956  1994  38
ドイツ     1932  1972  40
ブルガリア   1952  1993  41
ルーマニア   1961  2002  41
オーストリア  1929  1971  42
ポルトガル   1950  1992  42
スペイン    1947  1992  45
ポーランド   1966  2012  46
イギリス    1929  1975  46
ベルギー    1925  1975  50
ロシア     1967  2017  50
デンマーク   1925  1978  53
スイス     1931  1986  55
イタリア    1927  1988  61
オランダ    1940  2004  64
カナダ     1945  2010  65
アメリカ    1942  2014  72
オーストラリア 1939  2012  73
スウェーデン  1887  1972  85
ノルウェー   1885  1977  92
フランス    1864  1979  115
国立社会保障・人口問題研究所資料より抜粋

アジア諸国の倍加年数が、アジア先端を走ってきた日本より短くな っているということはすでに周知の事実であるが、それより重要な ことは7%の倍になった終年が韓国、シンガポールが既に迎えてい るという事実である。ちなみに中国が2025年である。

もっと言えば、2050年までの推計で、高齢化率が10%以下の数少 ない国がフィリピン、ナイジェリア等数各国である。2050年まで には世界中が高齢化する。

結論は、アジアの成長は、人口ボーナスに現在のようなサイクル的 信用供給が重なって、今回のような大成長時代を実現することがで きたといえる。しかしその人口ボーナスも2020年代半ばから後半 にはアジアの半数以上の国が終了すると考えられる。

サイクル的な信用供給が10年に一度と考えて、2020年代半ばから 後半に、サイクル的信用供給がもう一度あるとすると、もう一度ア ジアの大成長時代は再現されるかもしれない。と言った予測ができ るのではないだろうか?

ちなみにアジアカップサッカーの歴代優勝国を見てみると、栄枯盛 衰を感じる。普通に考えると日本が永久的に勝ち続ける道理はな い。

1956年:韓国(香港)
1960年:韓国(韓国)
1964年:イスラエル(イスラエル)
1968年:イラン(イラン)
1972年:イラン(タイ)
1976年:イラン(イラン)
1980年:クウェート(クウェート)
1984年:サウジアラビア(シンガポール)
1988年:サウジアラビア(カタール)
1992年:日本(日本)
1996年:サウジアラビア(UAE)
2000年:日本(レバノン)
2004年:日本(中国)
2007年:イラク(インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム)
2011年:日本(カタール)
2015年:オーストラリア(オーストラリア)
2019年:カタール(UAE)

以上

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