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主宰:川津商事株式会社
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プラットフォーム メガリージョン

〈2019年2月5日〉

最近の英字新聞で表題の“MEGA CITIES(メガシティー)”という特 集記事が組まれた。この新聞紙では以前から都市の形態のトレンド の特集を組み、都度弊社ニュースレターでも参考にしながら紹介し てきた。
参考記事https://www.theguardian.com/cities/megacities

この都市形態変遷の象徴的トレンドキーワードを取り上げると、ま ず最初が2010年に登場した「エンドレスシティー」である。人口 が爆発的に急増するエリアで、その人口が周辺に散らばるのではな く核となる都市に集中する状況である。
http://www.kawatu.co.jp/nagoya/kwf/kwf445.html
http://www.kawatu.co.jp/nagoya/kwf/kwf440.html

格差経済の諸問題がグローバル社会で顕在化していく中で、ローサ イドの地方ではなく、高度に集積して高い付加価値が求められる都 市部に人口が過度に群がり、吸収される現象である。

この大都市の定義で重要なことは、日本で見られる「行政区域」の 人口規模ではなく「都市圏」の人口規模である。東京都ではなく東 京圏である。世界基準(世界のシンクタンク)で「東京」と言えば 必ず3千万人以上の都市圏を示す。これはおおむね関東圏を意味す る。

日本では東京一極集中のイメージを避けるためか、なかなかこの東 京イコール3千万人以上を表現することがはばかれる。しかし逆に 世界基準で言うと、東京という都市が1千万人程度の規模であると いう認識はまったくない。

話を戻すと、この「エンドレスシティー」の次に登場した言葉が 「メガリージョン」巨大地域圏である。これは既に都市の概念では ない。いくつもの都市が関係性を持ち、一つの地域を形成している 概念である。弊社ニュースレターでは遅ればせながら2017年に取 り上げている。

国連関係の報告書(2014年)で、世界でメガリージョンとして認 識された代表的地域が、中国の香港-深?-広州(1億2千万人)、 日本の東京-名古屋-大阪(6千万人)、そしてブラジルのリオデジ ャネイロ-サンパウロエリア(4千万人)である。

メガリージョンこそがその国だけでなく、グローバル経済における 成長のエンジンであり、今後もグローバル社会をけん引する象徴的 なポジションとして紹介されている。産業クラスターだけでなく大 規模な社会ネットワークを構築して、これからの人・物・金を集中 して最適化が期待できるニアンスすらある。

そして今回「メガシティー」という言葉が紹介されている。内容は 既存の大都市ではなく、2035年までに1千万人を超える、現在は まだ4−500万人であるが今後急成長が期待さ、グローバル経済の 新たな主役になるとされる都市を意味している。

これらからグローバル市場を成長けん引させる都市形態のヒエラル キーを俯瞰するなら、まずトップにメガリージョンが君臨し市場を けん引する。これに対し従来からある安定成熟したそれぞれの分野 に特化した言わばエスタリブッシュな大都市が点在する。

そこへ今後急速に新しく成長してくる都市としてメガシティーが位 置づけられる。今回の英字記事で、メガシティーとしてイラクの BAGHDAD(バクダット)、タンザニアのDAR ES SALAAM(ダルエスサ ラーム)、中国のXI‘AN(西安)をはじめその他中東、アジア、ア フリカの都市が上げられている。

日本でよく都市間競争の議論が出ると必ず、東京とロンドン、NY、 パリ、シンガポール、上海との競争論である。この競争論は明らか に古い、従来の先進諸国のマネー、エスタブリッシュな人、物流の 範疇の競争論である。この競争論に執着したがる人たちもエスタブ リッシュともいえよう。

エンドレスシティー、メガリージョンそしてメガシティーは新しい グローバル社会のスタンダードに基づく都市形態のトレンドであ る。その中でもメガリージョンがグローバル社会をけん引するポジ ションにあるわけだ。2017年の弊社のニュースレターでもう一度 メガリージョンを確認していただきたい。
http://www.kawatu.co.jp/nagoya/kwf/kwf750.html

日本の経済基軸でもある東京から名古屋大阪に至る太平洋沿岸メガ ロポリスは、その規模、内容からグローバル経済の都市形態の象徴 的成功例になる可能性があるわけだ。

メガリージョンに対する期待は、今世界中で注目され、需要が高ま っている都市間を結ぶ高速鉄道の整備動向を見てもわかる。特にア ジア諸国で都市間を結ぶ高速鉄道網の設置が大きな国家プロジェク トとなり、その整備の受託がまた国際競争となっている。

高速鉄道が一つの都市だけでグローバル競争ができる時代ではな く、有力な都市を更にネットワークして競争優位或るエリアを形成 するためのインフラ整備という位置づけだ。これらの整備で生産性 が高まったエリアがメガリージョンを形成し社会・経済のプラット フォームとなる。 アジア以外の先進諸国でも今、例えばロンドンでHS2プロジェクト が進んでいる。グレーターロンドン計画によりガリバー化したロン ドン一極集中政策から、バーミンガムからグラスゴーに至る国家的 な高速鉄道網整備によるメガエリア戦略に移行しようとしている。 この鉄道整備を日本の日立が請け負っている。 アメリカでもNY-ワシントンDC等東海岸、西海岸ほとんどの地域 で高速鉄道の整備構想がある。これらすべて都市間の関係性を強化 しメガリージョンを標榜するトレンドだ。

日本では世界に先駆けてこの東京-大阪のメガリージョンにリニア を整備しさらの生産性をあげようとしている。この地域を活性化す る様々な政策をすべてに最優先するべき国家プロジェクトに格上げ すべきである。しかし日本ではこの太平洋沿岸メガロポリスは大 阪、名古屋の周辺整備的な構想でしかなく、上位の国家プロジェク トになっていないのが現状である。

日本の太平洋沿岸メガロポリスがジャパンビジネスモデルのプラッ トフォームとなり、新たなグローバル社会をけん引するポジション になれば、その生産性を高めたリニア鉄道の商品化もまた別の戦略 が取れるのではないだろうか?

いずれにしても太平洋沿岸メガロポリス構想に明確な呼称をつけ て、このリージョンを世界に売り込む国家戦略が早々に求められ る。この域内にある大きな空港、港湾、都市部がネットワークされ て生産性を高め、グローバル市場をけん引できるメガ地域の形成が 期待される。

以上

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