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主宰:川津商事株式会社
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名古屋のホテル市場は供給過剰か?

〈2019年1月25日〉

先般、名古屋の納屋橋界隈にJALブランドのシティーホテルがオ ープンした。JALブランドと言っても中堅規模のビジネスホテル である。名古屋でも遅まきながらホテルの建設オープンラッシュが 続いている。しかしその一方で、いつもながらのマスコミからのそ の供給過多が懸念されている。

今回はそのホテル市場の状況を少し議論したい。これは東京のホテ ル業界誌の編集者からの聞き取り調査を参考にしている。

名古屋に限らず、日本のホテル・旅館いわゆる宿泊市場の特徴、現 況は、古くは1960、70年代からの小さな宿泊業・旅館業がいまだ に多く現存していることがまず挙げられる。もちろんその多くが高 齢の主人夫婦が人を使うこともなく経営する、今の時代から評価す ると、古い家屋を改造したような部屋数が数部屋しかない宿屋業 だ。

これらの宿屋業は、長年の好・不景気を乗り切りながら、宿泊客が 少なければそれなりに、多ければそれなりに稼働する業態となって

いる。つまり日本の宿泊市場の裾野に広く広がったこのような業態 が、景気の波の調整となり需要供給をうまくコントロールしてき た。

前出の編集者の話によれば、これら零細宿泊業の実態は、データ的 にも把握されていない状況の様だ。というのは宿泊業としての届出 等はあるが、実際に稼働しているかどうかは把握できている状況の 様だ。つまり稼働してみたり稼働しなかったりというのらりくらり 市場が実態とのことである。

今、マスコミあるいは市場エコノミストがホテル市場の過剰供給問 題として懸念している点は、既存のホテル、宿泊施設が存在して需 給に問題ないところへ、今後のインバウンド等のある程度の需要が 見込まれるが、その需要をはるかに超えると予想される新たな供給 がなされているのではないかという懸念だ。

それは毎回おなじみの“杞憂”でしかない。

今東京ではもっと過剰なホテルの供給がなされている。これらの新 しいホテルの供給がとってかわる既存の宿泊施設は、冒頭で紹介し た築50年、40年も経た、食事の提供サービスなども店屋物で済ま す零細宿泊施設、ビジネス旅館あるいは老舗の老朽化した旅館であ る。

本来はもっと早く、新しい宿泊施設・ホテルによって市場の新陳代 謝が求められていた市場である。名古屋の場合は実は東京よりもっ と多くの零細宿泊施設が存在していた。今かなり減りつつあるが、 そこへ新たなビジネスホテルの供給が、これら零細市場にとってか わろうとしている。

つまり今後増えるであろうインバウンド期待に対する新しい供給と いうより、本来市場から退場しなければいけない名古屋固有の旅籠 屋文化の延長にある老朽化した宿泊施設に取って代わる供給と考え ると、決して過剰とは言えない。

今年もまた名古屋市場の不動産投資市場のベンチマークである「名 古屋不動産投資市場に関する調査」の集計が今なされている。弊社 は、名古屋のホテル需要に強気の評価を示している。

マスコミ、あるいは一部業界人の言う供給過剰杞憂は、以前に同じ ケースがあった。それが2000年にオープンしたJR東海のセント ラルツインタワーズである。当時も「なぜ名古屋のような新たな需 要が急に出てきているわけでもないところへなぜ巨大なオフィスス ペースの供給が必要なのか?」とばかりに多くのマスコミが大合唱 した。

確かに当時新たな需要が出てわけではないが、逆に言えばそれ以前 に名古屋駅まえで建った最後のオフィスビルが30年前という、長 期にわたって新規供給がなく、需要サイドの新規格のオフィススペ ースニーズが全く市場で拒否され続けてきた市場であった。

そこに新しい規格の、ツインタワーズが登場したのである。マスコ ミの杞憂をよそに、一気に名古屋駅エリアの再開発に火が付き、今 のように次から次へと投資を呼び込み名古屋市場をけん引するエリ アとなった。

今の名古屋のホテル市場の新規供給も全く同じ状況である。不動産 の有識者から見れば、このような懸念は、やはり門外漢の杞憂でし かない。現況のホテル市場にもっと強気の評価をしてほしい。今の ような好景気で、信用供給がイージーな状況で、古い旅館市場を新 陳代謝させないと今後いつできるかわからない。

バブルとは適正な資源配分をゆがめるという悪い効果で定義され る。極論を言えば適正な配分を「破壊」する市場の暴力だ。しかし 一方で既存の破壊は新しいものを生む革新となる。それは市場の革 新である。

バブル破たんの再生には非常に大きな犠牲が求められる。その大き さ故に悪い意味でとらえられるが、いつの時代もバブルによって古 い施設が廃棄されて新しい街並が登場する。

ホテルは名古屋経済のビジネス交流、観光産業の重要なインフラと なる。今、名古屋市場がどれだけ古い施設を破壊して、新しいホテ ルがこれらの市場を支えるかが期待されている。そのためには今よ り更に多くの供給が起きてもおかしくはない。調整リスクを恐れず むしろ名古屋市場の将来のためには期待すべきである。

以上 いつもお叱りをいただく方はこの先は読まないでください。

最後に、議論を暴走させると、そもそも民泊制度は最悪の政策であ る。派遣労働者制度を作った結果、本家の正社員労働者市場の活性 化を遅らせ阻害してしまい、かえって生産性の悪い格差の拡大した 労働市場を作り出してしまった状況と同じだ。民泊制度によって、 本来の本家のホテル旅館市場が進化する機会を奪ってしまう可能性 がある。

以上

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