ニュースレター

主宰:川津商事株式会社
名古屋の不動産何でも相談室がお送りする、不動産・ビジネスに関するニュースレター「名古屋ビジネス情報」へのご登録ありがとうございます。
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特記事項 弊社ニュースレターは、弊社の関係者及びお得意様に限定して不動産ビジネスを行う上で注目すべきテーマをタイムリーに取り上げ、問題点を共有する為の ワーキングペーパーであります。公的機関を含む他のセクターへの提言、請願、上奏、不特定多数への拡散を目的としたものではありません。転用を禁止します。 取り上げる内容については、成熟した定説を取り上げるのではなく、早熟なテーマを取り上げるため、後から検証すると拙速な結論になってしまっていることもあります。 そう言った事を十分にご理解したうえで、ご参考にしていただきますようお願い申し上げます。

古いものがどんどん破壊されていく時代のはじまり

〈2018-9年年末年始特別号〉

今年も一年間ご高配をいただきましたことお礼申し上げます。今年 を総括するテーマを、様々な実効性ある情報・データイノベーショ ンが市場で顕在化して行く中で「古いものがどんどん破壊されてい く時代の始まり」とさせていただきました。

今年を総括すると、当ニュースレターでも何度も取り上げてきた情 報・データイノベーション(革新的技術)が、いよいよ次々と連鎖 的に実用化していく時代の始まりと感じます。その一方でイノベー ションとは「創造的破壊」であり、既存の古い物の破壊が連鎖的に 進む始まりである。

日本全国で、多くの有識者と呼ばれる人たちが、少子高齢化問題の 有効な対策として生産性を高めることを挙げている。そして生産性 を高めるためにイノベーションの必要性を連呼している。しかしそ のイノベーションの本質はそれまでの古いものを破壊することであ る。

そもそも、日本のように高齢化が進み保守的で、岩盤既得権益にし がみつくイシュタブリッシュメント(既存の支配的ポジションをと る階層)が多い中で、自己否定にもつながるイノベーションを連呼 することに非常に大きな違和感がある。もしかするとイノベーショ ンの本質が理解できていなのではなかろうか?

既存の情報ビジネスモデルの破壊現象として直近の事例を見ると、 例えばNHK等マスメディアで活躍するニュースキャスター。ニュー スキャスターのエースは、災害時などの何時間と長期にわたって信 頼のおける情報を、映像を通して提供し続けることができるキャス ターとされている。つまり長時間、間違いなく、信頼性を維持担保 するプロフェッショナルだ。

先般、中国の国営ニュース新華社に新しいニュースアンカーが加わ ったという報道がされた。彼はAIニュースアンカーである。英字 新聞の紹介では“tirelessly all day every day”(毎日、一日中 疲れ知らず)とある。名前はQiu Haoとある。

AIとバーチャルが組み合わされば、理想的?管理可能なニュース アンカーが出来上がることは、今となると誰にでも理解できる。し かし少し前まで、人によるニュースキャスターが、AIニュースア ンカーにとってかわられることを、だれがいつ想像できたであろう か?

もちろんすぐに変わるわけではないが、人とAI相克が今から始ま り、やがてAIが完成度を高めれば古い効率の悪いビジネスモデル (人によるニュースキャスター)を破壊することは想像できるはず だ。少なくとも二分化することが予想される。

今年取り上げたニュースレターでは、データ革命の話題が多かっ た。例えばボールパーク(球場)に巨大な軍事にも使われるような センサー装置を設置して、投げる、打つすべてのボールの回転数、 軌道を割り出し、新しい選手の評価がうまれた。

新しいデータ、バッターの打球角度、打球速度に基づくフライボー ル理論革命が野球の現場を大きく変えた。それまでの選手の評価が 変わり、新しいデータに基づき活躍する選手が、古い選手を凌駕し 始めた。データ革命により古いデータのよって評価されていた野球 選手が破壊されていくことをだれが想定できただろうか?

このボールパークで起きている現象の本質は、それまでなかった新 しい概念のデータが次々と登場していることだ。この新しいデータ 概念こそがいわゆるビックデータの本質である。このビックデータ により古い概念、古いビジネスモデルが破壊されていく。

他にも以前から、税理士、不動産業者等がAIによるデータ処理に よって失われる仕事であると言われている。不動産業は古い昔、買 い手と売り手のマッチングがその主たる業務であった。これがサー チ理論にもとづくAIのアルゴリズムにとってかわられるというも のだ。いまさら言っても誰も驚かないがまだまだほんとか?という 疑心暗鬼だ。

最近不動産ビジネスに“スコア”という概念が登場してきた。スコ アで評価するというものだ。以前から既に銀行が融資する企業を評 価する指標が導入されていた。このスコアと言う新しいデータの登 場によって、評価の対象となる不動産あるいは融資先の企業の良し 悪しの概念が変わってしまうこともある。

それまで良いとされていた不動産資産価値が破壊されて、新しい概 念の良い不動産が登場する可能性がある。かくの如く、自分には関 係ない崇高なところでデータイノベーションが生じているのではな く、自分に関係する医療福祉、消費、生産活動のありとあらゆると ころでデータ革命が起き、古い概念の破壊が始まっている。

それがビックデータ時代であり、その始まりが今年であったという イメージである。世の中のおよそ、いなくなってほしいと思われて いる、岩盤規制にしがみついた非効率な存在が破壊されていくかも しれない。もちろんその抵抗も大きいだろう。しばらくはその相克 がトレンドとなろう。

この「相克」も議論する必要があると考える。前述の人の従来のニ ュースキャスターVS新しいAIによるニュースアンカーの相克はど う考えるべきだろうか?そこで重要なキーワードになるのが「信頼 性」だ

情報ネットには、フェイクニュース、フェイクサイトのオンパレー ドだ。そもそも価格が0円の携帯電話ビジネスなんて、昔の考えで 評価すると絶対詐欺ビジネスだ。詐欺であれば当然信頼性が無いは ずだ。しかし携帯電話の事業会社のビジネスモデルは信頼されてい る。この「信頼」は従来の「信頼」とどう違うのか?

ここでも「信頼」という概念が従来の古い概念は破壊されて、新し い概念が登場していると考えるべきだろう。是々非々ではなく、大 多数の人が支持する対象が、信頼があるものとなる。その他の少数 はマイノリティーの存在となる。破壊の始まりと、それに抵抗する 相克が始まったのである。

名古屋の街づくりに話を移そう。今年も様々な話題があった。

名古屋駅前に、JRゲート、キッテ、大名古屋ビルヂングが登場し てツインタワーに並び、名古屋駅前に名古屋の新しい顔となる新御 三家が完成し、今安定した稼働が始まっている。 名古屋駅前の器の更新がうまくいったことになる。しかし本質が大 きく変わったのではなく、従来通り名古屋駅前エリアは東京資本主 体のエリアであることには変わりない。

一方、地元資本・地元行政資本のシュリンクによる停滞していた栄 エリアに、遅まきながら中日ビル、栄三越隣接のエリアなど再開発 の動きが出てきている。施設の更新が期待されるところだ。

この施設の更新は、単なる器の建築上の更新であってはならない。 もし建築構造上の更新であるなら単なる過剰供給を生じるだけだろ う。器に収納される社会ニーズ、市場ニーズにこたえる新しい革新 的なビジネスモデルが要求するものであるなら、これらの新たな供 給が新たな需要を生むインパクトを市場に与えるだろう。

そこで新しい社会ニーズ、市場ニーズに応えるビジネスモデルが要 求する器とはどういうものだろうか?今の市場ニーズに基づくトレ ンドは「する事」「参加すること」「見られる事」で自己の存在をア ピールして、それを「評価する事」「評価される事」で社会の新た な監視機能に参画していくことである。

結論から言えば、これらのニーズを実現するビジネスモデルが要求 する器の概念が“アリーナ”である。アリーナはスポーツイベント というイメージが強いが、エンターテイメントはじめビジネス界な どでも通用する考え方である。

今、名古屋駅前エリアで期待以上に活気がある器が、ウインク愛知 (正式名愛知県労働センター)である。公的器でありながら、非常 に人の交流でにぎわっている。各種企業、業界、任意団体のキャリ アアップ、交流、自己表現の場所として活況を呈している。

名古屋で、人の往来で活況のある施設トップ3をもし挙げるなら、 夕方の名古屋駅前の待ち合わせ場所(コンコースの時計塔)、トヨ タ本社の月曜日の朝の受付の風景、そしてイベントの多い日のウイ ンク愛知の1階ホールというと言い過ぎかもしれないが、イメージ はしていただけると思う。

名古屋駅前エリアは、今や中部地方を代表するビジネスセンターと なっている。そこに集うビジネスパースンが参加し、行い、見ら れ、評価されるニーズにこたえた器つまりアリーナの機能を果たし ている。年末にトヨタ系の不動産企業が名古屋駅前の廃校になった 小学校(旧新明)の跡地をインキュベーター施設として利用すると いう新聞報道がなされた。

これらも、ビジネスアリーナニーズに対する市場の動きである。社 会人大学院生のパフォーマンス、研究とビジネス融合パフォーマン ス、企業の内部留保・エンジェルマネーのパフォーマンスの場等、 このようなビジネスアリーナとして新しい拠点となれば、名古屋駅 前エリアのビジネスセンターとしての隆盛にますます貢献する施設 となろう。

栄エリアも同じである。エンターテイメント、スポーツのアリーナ 機能が求められる。栄の問題点はスペースの有効利用だ。栄は名古 屋駅前に比べると路面のスペースに余裕がある。しかし一方で、今 の都心商業地のトレンドは、高度に集積された高層商業施設であ る。

物を買う消費者は高齢化が進んでいる。高齢者の回遊範囲はどんど ん狭くなっている。集約性、生産性をキーワードとするコンパクト 化が彼らのニーズである。従来の物販だけの商業ニーズにこたえる なら過剰スペースは足手まといとなる。

確かに都心でこれだけのスペースがある都市は他にみない。セント ラルパークなどで物産展、イベントを行うと他にない集客ができて 大盛況である。これが今の都市管理者の満足ポイントだ。しかしそ れは田舎のお祭り、イベントと比較してその集客規模が大きいとい う評価である。

東京、大阪などの都心の商業エリア銀座、原宿の生産性と比べると 決して競争優位があるわけではない。大都市都のトレンドも高度に 集約され、生産性が高いコンパクト化である。これが今後、栄エリ アが考えなくてはならないポイントだ。

市場ニーズが単なる物の消費だけでなく、する事、参加すること、 評価すること、評価されることになる今、単なる従来のブランド品 を売るだけの商業施設の増設・更新は、過剰競争・過剰供給を生み いずれ破たんするだけだ。

スポーツ・エンターテイメントのアリーナがもし都心にできれば、 都市の革新が期待できる。読者はお気づきだろう。革新は破壊する ことだ。現実には栄の既得権を破壊されては困る人たちは、実はこ れを受け入れることはできない。これが栄ビジネスの停滞の根本的 な問題ともいえる。

ニューヨークマンハッタンでは、中心街にマジソンスクエアガーデ ンがある。スポーツアリーナだ。アメリカのスポーツビジネス、エ ンターテイメントの聖地だ。アメリカの野球場は多目的ホールでは なく専用アリーナで、野球ビジネスの聖地となっている。東京の両 国国技館が相撲アリーナである。その関連ビジネスが周辺にはあ る。スポーツビレッジは地域の地代産業だ。

マスコミ新聞の発想は常に「リニアができるとホール飛ばしが起き る。」という発想だ。一方で直近にあったナゴヤドームの嵐のコン サートは3日間チケットがまず取れないレアアースチケットだ。リ ニアができれば悪くなるという報道ばかりで、リニアができるから 何か打って出ようという報道がないのが名古屋だ。

参加・観戦・評価している自分が他人に評価される場所がアリーナ でもある。名古屋のシティーマラソンはある程度のポジションを持 っている。都心構造自体が、マラソンランナーのアリーナに進化す れば、もっと評価が高まるはずだ。モナコのF1グランプリは都市 がアリーナ化している。

その施設が核となり関連するビジネスが周辺に派生する器である。 この派生するビジネスこそが、これからの「する事消費」、「評価消 費」の都市ビジネスとなる。高価なブランド物を売る商業ビジネス だけの都市ビジネスとは違ってくる。

一昨年前の日本不動産学会のシンポジウムで、スポーツマーケティ ングの研究者が、今後のまちづくりは従来のような駅、商業施設を 核とするのではなく、スポーツを見てなおかつ参加する人たちが利 用する施設を中心に作られなくてはならないと発言していた。

マラソンアリーナ、自転車サイクルアリーナ、将棋アリーナ、コス プレアリーナ、アニソンアリーナ、Vチューバアリーナ、Eスポー ツアリーナ、ダンスアリーナ、ストリートパフォーマンスアリー ナ、卓球アリーナ、テニスアリーナ、バスケ、フットサ ル・・・・。

名古屋城の都市におけるポジションも確実に変わってきている。武 将にふんしたおもてなし隊が繰り広げるエンターテイメント性で、 観光客は見るだけでなくその歴史感に参加し、そこで撮った写真を 公表しそれをみんなに評価されることを楽しむ。そのような機会を 提供する名古屋城の観光ビジネスの器としてお機能もアリーナビジ ネスである。

長期的に見て、日本の専業経済は従来の製造業が郊外に流出して、 それに代わる国内産業の育成が求められる。世界的な需要が見込ま れる食ビジネス、高齢化社会に対応したスポーツ・エンターテイメ ントビジネスが考えられる。

そして都市機能の中心的役割である消費の器であるなら、その消費 が「モノ」から「する事、見る事、見られる事、評価し評価される 事」消費に変わることに、器としての都市機能も変わらなくてはな らない。

栄の将来ビジョンとして、従来型の物の消費だけの器の更新を行 い、従来型の路面のイベントだけで食っていくのなら、それは大い なる田舎の代表でしかない。もし東京、大阪更には諸外国に比肩す る都心を望むなら、アリーナ機能を進化させなくてはならない。

都心回帰は波のように何度も都心中心地に押し寄せてくる。従来マ ンション立地の定説が、地下鉄駅・基幹バスの駅・大型スーパー等 から徒歩10分以内であった。それが10分が5分に縮まり、そして 今、単なる地下鉄駅・機関バス駅ではなく栄、名古屋駅、金山とい う都心の核へのアクセスが10、15分以内というトレンドに変わっ てきている。

コンパクト化の都市政策が、市場では現実に都心への高度な集積と いう形で生じているわけだ。コンパクト化、消費ニーズの変化が名 古屋の街にも顕在化してきた。これに応える街づくりが求められ る。古い物からの進化である。そこでは新旧の相克は外部不経済と なる。

以上

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