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主宰:川津商事株式会社
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プラットフォームとコモディティ化

〈2018年10月1日〉

介護施設の現場がいよいよ大変なことになっている。人手不足でス タッフが減っている。これは待遇の問題だけではない。そもそも集 まるスタッフ自体も年配者、非熟練者が多く、サービスの低下がめ だつ。

早く海外の若いスタッフを利用できる環境を整えないと、介護施設 の閉鎖、要介護者の帰宅を余儀なくされる事態も想定される。要介 護者が家庭に戻ってきたらどうなるか?

AI・デジタル化が進むと、どんな複雑な仕事もとってかわられると いう間違った考えが、市場に氾濫している。逆にAi・デジタル化 社会では熟練労働者不足が制約要因になる。海外の若いスタッフを 日本で育てて、海外に送り返すぐらいの環境でないと人も集まらな いだろう。

商品のコモディティ化が言われて久しくなる。コモディティとは商 品のブランド力等他との差別化ができる個性、利点等あらゆる競争 優位がなくなってしまい、最も一般的な普及商品になってしまうこ とである。当然商品の価格が下がることでもある。

このコモディティ化が進み、商品の単価は下がったことが現在の先 進諸国市場で蔓延するデフレ、いわゆる低成長の原因の一つとされ ている。

そしてこの商品をコモディティ化させたいろんな原因が今まで多く 上げられてきた。例えば市場の円熟成により革新的な技術革新が生 まれず、技術的差異がなくなってしまった事。従来に比べて既存の ブランド力が市場で価値をなくしてしなった事。人口構造が新しい 技術を求めなくなったこと等。

グローバリゼーションで大きな市場では力を持った規格(スタンダ ード)が支配して、その規格の上では差異が見いだせなくなってい った事。供給サイドがサプライチェーン化しモジュール生産の過程 で大量生産により差異がなくしてしまった事。等々。

では昔はどうであっただろうか。例えば現在コモディティ化が激し く指摘される家電商品。洗濯機を例にとろう。家電ショップに行 き、洗濯機について特別多くの情報を持たない消費者が洗濯機を欲 しいと店員に告げる。

コモディティ化してしまっていると、店員に商品説明を聞くまでも なく機能的には大きな差はなく、いずれの商品もボタン一つで綺麗 に乾燥までできる。購入者は値段的な差にばかり関心が向き、ひた すら安いものを探す。

しかし昔は違った、洗濯機に対する知識は少なく、使い方から、商 品の評価までを信頼のおける近くの電気店の人に聞く必要がある。 これらの消費者に役に立つ情報提供こそがまずサービスとなる。最 終的に配送、設置、アフターフォローまでサービスが広がる。洗濯 機を買うということは、これ等のサービスを含めて買うことを意味 していた。

昔は家電店以外に「ラジオ商」と言うのがあった。マスコミがまだ ラジオに重きを置いていた時代、どの家庭にもラジオがあった。ラ ジオは今でこそスイッチを入れて選局曲すればきれいな音が出る が、当時は電波状態も悪く、アンテナ向き、選局ダイヤルの調整ま で専門の職業があったわけだ。ラジオはただ売るだけでなくこのサ ービスをつけて初めて商品となった。

その昔、電球の取り換えも電気店の仕事であった。一般家庭人には 電球に対する知識が少なく、取り替えが難しくてできなかった。知 識がある電気店の専門職が携わった時代だ。やがて電球に対する畏 怖は消えて誰でもが交換できるようになると、電球はコモディティ 化していく。今ではコンビニでも売られている。

洗濯機も同じである。その使い勝手の情報が消費者に多くあると、 専門の電気店は必要でなくなりコモディティ化していく。しかしそ れでも数あるメーカーから信頼のある商品を選ぶにはやはり信頼の 電気ショップが必要であった。 しかし今では商品口コミなネットで拾うことができる。もちろん使 い方も、商品説明もネットで調べることができる。ましメーカー、 電気店に商品について情報を求めても、コールセンターで長く待た されて挙句に音声ガイダンス程度のサービスしか提供されていな い。それでも強くメーカーに細かいことを聞こうとするとクレーマ ー扱いにされる。

そもそもメーカー自体が本来コモディ化を防止するはずのサービス を手放してしまった。その結果が商品のコモディティ化である。白 物家電だけでなくパソコンから様々なITディバイスまで多くがコ モディティ化している。

今商品の販売大手流通業は、Amazon、楽天をはじめとするネットモ ールである。これらのモールでは商品口コミから、メーカー書品情 報、ココの販売店格付け情報、まで多くを提供する情報プラットフ ォームである。情報が要らない商品は流通プラットフォームである コンビニで売られる。

今はすでに、家電品に限らず、食品からジェネリック薬品、生産機 材、企業の備品まで愛発あらゆる消費財、耐久財がこのプラットフ ォーム上で流通する。プラットフォーム上で流通する物はすべてコ モディティ化した商品である行っても言い過ぎではないだろう。

この考え方でコモディティを定義すると、プラットフォームに乗せ ない消費財こそがブランド商品であり、のせる商品はすべてコモデ ィティ化したノンブランド商品と定義しても間違いではないだろ う。

プラットフォームの良し悪しも出てくる。商品口コミの信頼性。シ ョップ店舗の格付けの信頼性。商品決済の信頼性。贋作など偽物の 有無。配送サービス信頼性。何か不都合が生じたときの対処サービ ス性。返品などの利便性などである。これらプラットフォームの業 務こそがかつてすべての商品が備えていたサービスでもあった。

これらのプラットフォームが進化し、ますますこれらのサービスの 質が高まれば消費者の信頼を得、流通業の主体となる。あらゆる商 品はすべからくこれら勝ち組のプラットフォームに乗せなくてはな らない。しかしそれは同時にすべての商品のコモディティ化を意味 する。

ところが現在の経済の統計は、このコモディティ化したサービスを 分離した商品価格が国内総生産に計上される。それが消費が低迷す るデフレ経済の実態となる。

本来ならコモディティ化した商品価格+プラットフォーム価格が国 内総生産に計上されなくてはならない。しかしAmazon、Google、 アップル、Facebook等多くのプラットフォームは外資であり、課 税拠点はアメリカでもなく、中国でもない遠く離れた異国の地であ る。

今やプラットフォームはグローバル市場に巣食うインビジブルな巨 大資本であり、どの国にも属さなくなりつつある(現状はグローバ リゼーションを信奉してきたアメリカに名目上は置いている。)。

本来ならこれら外資のプラットフォームが上げる利益を課税して、 国内の商品価格と合計して国内総生産に計上すべきとなってもおか しくない。しかしそれを言うと、関税障壁・保護主義でありグロー バリゼーションの敵であり、ポピュリズムであると「市場」から総 バッシングを受ける。

今の日本のグローバリゼーションの方向性は、日本国内のサプライ チェーンに貢献するものなのか?グローバル市場のプラットフォー ムを浴するものなのか。

以上

コモディティブランドグローバリゼーションプラットフォーム