ニュースレター

主宰:川津商事株式会社
名古屋の不動産何でも相談室がお送りする、不動産・ビジネスに関するニュースレター「名古屋ビジネス情報」へのご登録ありがとうございます。
不動産にとどまらず、名古屋のビジネス情報、街づくり話題、不動産経済に関するニュース、物件情報など時代の変遷とともに広くお伝えしています。

特記事項 弊社ニュースレターは、弊社の関係者及びお得意様に限定して不動産ビジネスを行う上で注目すべきテーマをタイムリーに取り上げ、問題点を共有する為の ワーキングペーパーであります。公的機関を含む他のセクターへの提言、請願、上奏、不特定多数への拡散を目的としたものではありません。転用を禁止します。 取り上げる内容については、成熟した定説を取り上げるのではなく、早熟なテーマを取り上げるため、後から検証すると拙速な結論になってしまっていることもあります。 そう言った事を十分にご理解したうえで、ご参考にしていただきますようお願い申し上げます。

M&A「のれん」代費用計上義務化 国際会計基準

〈2018年9月15日〉

今年は暑かったですがもう秋の気配が感じられます。世界中でもや はり気候変動による酷暑というより山火事あるいは熱波のニュース が多くあった。日本では摂氏40度を超えたことがニュースになっ たが、世界ではそれより10度高い摂氏50度超がニュースとなって いた。

“At50C,human cells start to cook”という記事が印象的であっ た。道路は空っぽになり、公園は静かになり近所で人気がなくな り・・日中は労働禁止。50度とは体温より10度高く、水が沸騰す る温度の半分である・・・・。というぐわいの表現だ。

画写真も、道路のアスファルトは溶ける写真、テニスプレーヤーが へたばる写真、アフリカの熱波による不毛地化、住宅に迫る森林火 災等々危機迫るものばかりであった。以上前置き。

表題の件、専門家に言わせれば今更ながらの話題であるが、不動産 と比較すると面白いので取り上げてみる。M&Aというのは企業の売 買である。企業とは毎年収益を生むがそれは変動するためリスク資 産となる。不動産も収益を生むがそれが変動する意味で同じリスク 資産である。ファイナンスでは同じリスク資産としてとらえる。

さて「のれん代」とは、企業を買収するとき企業が所有する不動 産、機械、営業資産の合計である純資産価格より高い価格で買う 時、その差額がのれん代となる。

M&Aが盛んになるときは、今のように概ね内部留保が潤沢でかつ金 余りの景気で起きる。したがって売り手市場になり概ね純資産価格 より高い金額で買収される。

新聞でも報じられているが、この差額は企業のブランド価値などを 意味するとある。今でこそ、一言でブランド価値と言ってしまえば 多くの人が納得できるが、以前はそうではなかった。

1990年代にバークレーの教授であったデイビット・アーカー教授 がブランド戦略論を体系化した。これによりブランドと言いうもの が理論的に裏付けられたのである。その結果ブランドが対価の裏付 けとなり、資産たりえることが市場で認知された。

純資産価値を上回る価格が曖昧なプレミアム価格「のれん代」では なく、資産として正当化され、M&A市場が成立することとなる。今 ではブランド・エクイティとして、ブランド価値の構築が企業の経 営戦略の最重要ポイントになっている。

筆者は、このデイビット・アーカー教授の功績は多大なものであ り、ノーベル経済学賞に値する学術貢献であると考えている。いつ かノーベル経済学賞をとってほしい賢者の一人だ。

さて、このようにして成長してきたM&Aは、先にも述べたように、 概ねバブル期のような経済状況で成立することが多いため、評価が どうしても大きくなる。

本来の資産価値を正確に評価し開示することを指導する国際会計基 準としては、この過大になりがちの評価を費用化して厳格に償却を 義務づけることを決めたことが、今新聞等で話題になっているわけ だ。

これがなされると、新聞報道では、日本企業の持つ対象含み益が 14兆円、ヨーロッパが340兆円であり、これが期間20年で費用化 されると、日欧で年間13兆円になると報道されている。これはあ くまで企業を買収する企業のM&Aののれん代に限られた話だ。

この辺から不動産屋には理解ができなくなる。仮に不動産を例えば 公示価格などの公的評価より高い価格で購入した場合、その差額が 「のれん代」と呼ばれるか?呼ばれない。あくまで資産価格であ る。

ただし減損会計が必要な企業は、不動産資産は高く買った場合その 価格で資産計上できるが、もし評価を落とすとその分を減損しなく てはならない。したがって最終的には同じではあるが、企業ののれ ん代はその買った企業の評価の変動に関係なく、購入した時点の超 過分を一定期間で消却しなくてはならなくなるわけだ。

で、もし通常の不動産資産にこの基準を適用するとどうなるであろ うか?何らかの純資産価格より高く購入した分を費用として消却で きるわけだから、不動産所得に対する費用控除が増えることにな る。CFが増え不動産投資にはありがたいことで追い風になるはず だ。

多少高くてもその分消却できるわけだから、不動産投資としてなり ふりかわず買いが入る。ますます地価が高くなることになる。簡単 にバブルが創成できる。デフレ時にこれをやれば、異次元の金融緩 和などしなくても簡単の資産インフレが創成できたはずだ。

別の見方もできる。不動産資産を多く持つ企業をM&Aとして買収す れば、そののれん代の中身が土地の値上がり分であったとしても、 それは費用化できるのではないか?となってしまう。もちろん税務 当局の見解が必要になるが。

ということになる。おかしな話だがこんな話が出るということ自体 バブルだねー。

以上

のれん代M&A不動産譲渡益内部留保ガバナンスブランドエクイティ