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主宰:川津商事株式会社
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名古屋の都市の魅力に貢献する施設とは?

〈2018年9月1日〉

今回は名古屋の都市の魅力に貢献する施設の評価を議論したい。そ れを議論するためには、都市の魅力を定義する必要があるが、それ を議論しているとなかなか本題にたどり着けないので、とりあえず ハショリ、美観的、歴史的貢献を除き生産的貢献の検知からいくつ か施設を挙げてみる。

名古屋ではまず最初上げなくてはいけないのがJR名古屋駅だ。名 古屋駅の駅舎は、中部地方最大の巨大な駅舎にもかかわらず、名古 屋の都市グランドレベルつまり1階で駅周辺エリアを東西で分断す ることなく行き来できる構造になっている。専門的な用語でいえば アクセスビリティーが非常に高い駅構造である。その結果、駅前エ リアの生産性がそのまま名古屋の都市の生産性を高めている。

この名古屋駅のメリットは、災害などの最近のリスクからデメリッ トとして指摘されるが、エリア周辺と同じグランドレベルで歩行で きることが、エリア内のビジネス機会を損なわず都市の生産性を維 持している。

最近の駅舎は、例えば大阪の梅田駅のようにペデストリアンデッキ (2階連絡デッキ)によりグランデレベルの災害リスク、交流渋滞 リスクを担保し、かつ特定の周辺商業施設との流量を確保すること で生産性を向上させている。

しかしその一方で駅周辺の路面店商業エリアが壊滅的喪失してしま っている。近年の高度に集積した商業施設に独占排他的に回遊性を 集中させるという手法で都市の生産性を上げている。しかし既存の 周辺エリアの生産性という点においては壊滅的打撃を与えている。

名古屋駅の構造の生産性を良しとするなら、金山駅の都市の魅力に 貢献する生産性も特筆する必要がある。名鉄、JR、地下鉄が同じ グランドレベルでアクセスビリティーを確保しながら、隣接する商 業エリアアスナル金山との回遊性を確保している点において秀逸な 施設である。

都市の起源を商業理論で説明すると、「フローを阻止する魅力」「通 り過ぎることができない魅力」となる。つまりそこでどうしても寄 り道をしてしまう魅力が、都市の集積の起源となる。フローと言う アクセスビリティーとそれを阻止する魅力との組み合わせの妙が金 山にはある。

次の評価されるべきが栄のオアシス21だろう。これができた時は まだバブル経済の余韻が残る時期であった。だからこそあんな鉄の 塊のような施設が発想されたと言えよう。

しかし今となっては、栄の生命線と言われる路面のスペックと、名 古屋の生命線と言われる地下街、そして交通公共機関バスのそれぞ れの回遊性を衝突させることなく、革新的な決接点として機能して いる。現実的に魅力があるからこそ、そこで様々なイベントを開催 するニーズがあるわけだ。

次に評価されるべきが、栄のラシックである。この商業施設の開発 部隊は東京である。名古屋のビジネスプレーヤーではない。その特 徴が一番出ている民間施設であるといえよう。施設の中に商業プロ ムナードを設置し、そこを通行したくなる魅力を付加し、更にフロ ーを阻止している。

この施設が中部地方を代表する商業エリア栄の大津通商店街と、そ のサブブランドストリート久屋大通とのブリッジ回遊性を生み出 し、大津通、久屋通というブランドのポートフォリオを完成させ た。

同様に大きな回遊性をブリッジする回遊性を生み出した施設が、栄 パルコの正面に位置するゼロゲートである。ゼロゲートは3階建て の決してそれだけではインパクトのある商業施設ではない。運営主 体はパルコである。

特筆すべきは、大津通正面だけでなく、建物北側サイドの矢場公園 に抜ける小道を拡幅し、建物のファサードを延長したことにより、 ナディアパークエリア回遊性と大津通回遊性をブリッジする回遊性 空間を生み出した。

名古屋ではこの回遊性と回遊性をつなげる効果の意義が理解されな いが、三菱商事がスポンサードのプラチナ上場リート、ビルファン ドがこの小道に当時19億円の投資を行いアンダーアーマーのテナ ントを誘致した。当時名古屋の不動産投資市場のエポックメーキン グとなる投資を誘発したのである。エリアの生産性を格段に向上せ さた実例である。

ただ残念なのは、このような投資を誘発しながら、名古屋資本の派 生的誘発が生じていない。回遊性は生まれることにより新しい市場 が喚起される仕組みが名古屋では理解されないのが現実でもあっ た。

ナディアパークが出たついでに言及しておくと、ナディアパークの 出現が、それまで暗いイメージの栄4丁目をよみがえらせたことは 周知のとおりである。その意味でナディアパークの開発は栄4丁目 の地価を押し上げ、都市の魅力を挙げたのは言うまでもない。しか しこの施設に大きな回遊性付加価値を与えたのが、隣接の矢場公園 であった。

当時の関係者に聞くと、地下に松坂屋が関係する駐車場があり、当 時誰も触ることができず、結果的に現存の何もない公園で保存され たパブリック広場である。この広場の「透過性」がナディアパーク 効果をエンハンスさせたことは言うまでもない。そういった意味で 生産性を挙げた施設として特筆すべきである。

透過性というのは都市工学における重要なキーワードである。一方 商業理論にブランドポートフォリオ理論と言うのがある。これはた だ単に単独のブランド戦略で価値を創造するのではなく、いくつも のブランドが「関係しあう」ことで、ヘッドとなる中心ブランドの 価値を高める。

ソニーというブランド価値は、ソニーの配下の多くの製品ブランド との関係性によってつくられる。栄のブランドは、大津通だけでな く、久屋通、ナディアパーク等をサブブランド関係にすることでブ ランドの生産性を高める。その関係性生み出す、これらの施設、空 間、戦略が都市の生産性を挙げていると言えるわけだ。

この様に名古屋の都市の生産性を上げる施設をいくつか挙げてみ た。もちろん千種区の星が丘、大須等特筆すべき施設はまだまだ他 にも多くある。しかしこれらの施設に共通して言えることは、回遊 性の生産性を上げる、もしくは回遊性の衝突を回避する工夫がなさ れている施設であると言えよう。

逆にこのような回遊性が機能せず、回遊性の生産性を上げる革新的 な施設が待望されるエリアが、中日ビル再開発周辺、広小路通り、 伏見、大曾根であり、また名古屋駅前エリアとポートフォリオ関係 性を持つ強力なサブ名古屋駅ブランドエリアである。

最後に、私見であるが、名古屋には回遊性の理論的精通者が多くい ると思う。これもまた名古屋という都市構造からくる特質だろう か。

以上

回遊性名古屋駅オアシス21ナディアパークラシック