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「キズナアイ」わかりますか?チコチャンは?

〈2018年8月15日〉

残暑お見舞い申し上げます。ある女性国会議員の主張である。少子 高齢化問題に対し、今の40歳以上の男性の議論は既に出尽くし た。万策尽き、お手上げ状態だ。そういった男性にはこれ以上期待 はできない。ただ今自分が、育児・介護をしなくてはならないとし たら何が必要かを考えてもらえればいい。とのこと。現実を見れば 必ずしも否定はできないかもしれない。

40歳以上の方にわかりやすい例が、2007年の当時金融庁長官の柳 澤伯夫氏の女性は「子供を生む機会」発言である。柳澤氏自体は、 お堅い金融政策に携わり、飾らない人柄で、むしろ朴訥な表現から あのような結果を生んでしまったと世の中の多くの男性は同情する だろう。しかしこの発言で多くの批判を受けて彼の政治生命は消え てしまった。

問題は、少子高齢化社会問題を40歳以上の男性の表現で議論する と、すべからく差別批判になり炎上してしまうことである。その結 果、少子高齢化社会問題議論はある意味タブーの領域になってしま い、40歳以上の男性がイシュタブリッシュメントな現行社会では 、一歩も前に進めずお手上げ状態だ。

以来10年以上の時代を経て、LGBTなどの言葉も見慣れた社会風景 になりつつあるが現実はどうであろうか?直近の話として、自民党 女性議員の「LGBT 子供を産まず生産性ない」言葉があった。これ に対しネットだけでなく大手新聞紙上でも一斉にすさまじい批判が 起きた。

しかし現実に日本で、LGBTの人たちが、そうでない人たちと同等 の家庭を持ち、子供を育てられるだろうか?LGBTの人が人として 将来に責任をある行動をとるためには、彼らなりのやり方で子供を 育める例えば養子縁組・人工授精・精子バンク・代理母などの社会 的寛容が必要だ。

それには日本の既存の倫理観を振りかざして、現実的なLGBT社会 への議論を一切タブー視して、一方でLGBT批判を強烈にバッシン グする。炎上が激しければ激しくなるほど、その先にあるのは低所 得者格差、少子化問題同様、触れてはいけない問題化しお手上げ状 態となることは明らかだ。

あるドキュメント映像である。「あなた(生まれてくる子)にお父 さんと呼ぶ権利を与えないでごめんなさいね」と言って人工授精で 子どもを生む外国女性の姿があった。でも「恋愛の機会はほとんど なく、恋愛を待っていては、私はあなたに会えない。あなたが私の 子として出会うためには、こうするしかないの。」つまり精子バン クから精子を購入し、子供をつくろうとしている外国で見られる風 景である。

日本では精子バンクによる自由な人工授精が社会的に容認されにく い。それは日本の強い倫理観があるからだ。少子高齢化問題に立ち 向かっていると言われるフランスでは、子供を産む多くがシングル マザーであり、柔軟に移民を受け入れて様々な問題に直面している 国である。

フランスの事実婚は日本でも有名である。歴代の首相、大統領も事 実婚である場合もあり、その複雑なパートナー関係を社会も認めて いた。フランス人のイメージも今では、サッカーワールドカップで 優勝するアフリカ系フランス人が格好良く活躍する姿だ。「もちろ んフランスにも古い倫理観があった。それを乗り越えて今があ る。」がフランスの言い分だそうだ。

不倫は社会バッシングの格好のネタであり、日本で事実婚は認めら れない。ましてや、子供は清き男女の恋愛の証として生まれるべき 論。子供は自然分娩でお産の痛みがあってこそ初めて子供に愛情が 生まれる(おなかを痛めた子供)論等々が日本の正しき倫理観だ。

精子バンク等様々な人工授精の体制が整備されなければLGBTを本 当の意味で認めることにはならない。認めていない者が行うアンチ LGBTに対する批判は、結果的にはアンチLGBT間の権力闘争でしか ないように思う。本質問題に一切目を向けず、その下位の批判の在 り方の議論に終始してしまう姿は、少子化問題の炎上を恐れて何も 言ってはいけない状況と同じことに、やがてなるのではないだろう か?

いま世界で社会の風景が急激に変わりつつある。様々な社会問題の 言葉は頻繁に見るようになったが、表面上の取り繕いのみで踏み込 んで実践的な行動にはほとんど思考停止状態だ。それをさせないの が日本人なりの崇高な倫理観なのか、単に変化を受け入れられない エゴなのかわからない。

中東、北アフリカで起きた民主化。いわゆるグローバリゼーション は強者が弱者を食い物にする最終章に来ているのかも知れない。比 較優位の自由貿易は強者をますます強者にし、最後には一人の巨大 な強者を生み、残りの他の多くを敗者にした。

その結果ヨーロッパの各地、北米、南米を問わずアンチグローバリ ゼーションがまき起きた。グローバリズムの信奉者ドイツ国内にお いてもアンチグローバリゼーションが生じている。

日本は今後自由貿易、自由競争による比較優位に立つグローバリゼ ーションを信奉すべきか?欧米で起きているようにアンチグローバ リゼーションに鞍替えするか?日本では、おそらく比較的優位を標 榜してグローバリゼーションを支持するのが当たり前で、反対派は ポピュリズムとして異端視されるだろう。

しかし、グローバリゼーションの支配者は既に、アメリカ、中国、 ソ連、ドイツのいずれでもない。グローバリゼーションの競争優位 の勝者は、単にその業界、地域のトップではなく、Amazon、 Google、Facebook、Apple、Netflixがグローバル市場を支配しよ うとしている。

Amazonはリテール市場だけでなく、すべての消費者行動の情報を もとに派生するすべてのビジネスを支配しトップに君臨する。収集 したデータをもとに、中小企業に資金を融資したり、起業を援助し たりする金融ビジネスをも支配しはじめた。ビックデータというプ ラットフォーム上ですべての企業と消費者がつながる。企業は一消 費者と同じプラットフォーム上のコマでしかなくなる。

Googleが、自動車からインフラまですべてのものとインターネッ ト(IOT)の関係を支配し、人のコミュニケーション、映像データ をFacebook、NetflixなどのAIプラットフォームが支配する。ト ヨタも、ソニーもGoogleのプラットフォーム上の単なるサプライ チェーンの一歯車でしかなくなる。

今の米・中間の貿易戦争は、ひょっとするとアンチグローバリゼー ションとグローバリゼーションの代理戦でしかないかもしれない。 それとも代理でもなんでもなく、やがて市場そして社会に君臨する Amazon・GoogleといったAIアルゴリズムの下位の2番手と3番手 の権力争いかもしれない。前出のアンチLGBTの権力争いと変わり ない。誰もこれら支配的企業に物申すことができなくなってしまっ ているのかもしれない。

そもそも日本は、中国・北朝鮮へモノ言うアクセス権以上に Amazon・Google等支配的Aiアルゴリズムに対してモノが言えるア クセス権をもっているのだろうか?

国家間の関係は政治的関係である。今までは政治的意思決定が日本 の将来を決めていた。しかし将来想定されるヘゲモニーであるAI アルゴリズムへのアクセスは、政治的手法が機能するかどうか?す らわからない。日本としてはどのようにこれらに物を申すことにな るのか?

今の日本は、新しい変化に対して古き良き倫理観を何とか維持すべ く葛藤をしている。しかし議論は、少子化問題、LGBT、移民問題の 本質を議論するのではなく、本質の下位に位置する批判のポジショ ン争いの議論になってしまっている。

少子化の問題を安易に男の理屈で表現してしまう失敗を繰り返し、 それを猛バッシングする。バッシング激しければ激しいほど恐れて 少子化の議論が表に出なくなってしまう。だれも触れようとせず、 結果的に表面的に繕う対策しか出てこない。

“キズナアイ”をご存じだろうか?さてようやく表題の件にたど り着きました。キズナアイは今後世界中で若者に最も影響を与える 可能性を持った、Vチューバ―(ヴァーチャルチューバ―)であ る。先般も日経MJで紹介されたばかりである。

Vチューバ―とは、動画配信されている初音ミク同様のキャラクタ ーであるが、違うところは実在する人の表現、表情をコンピュータ ーで取り込みそれをキャラクター化し、それをCGで加工したり、 多言語で翻訳したり、AIで加工してコミュニケーションを可能に したものだ。中に人がいるわけだが、一般にその中の人については タブー視されている。

40歳以上オジサン的に言えば「スターウォーズのチューバッカな ら解るが、この暑い中ユーチューバ?Vチューバ―?知らねえ な!」となろう。実は今人気急上昇の土曜の朝NHK総合で放送され ている「チコチャンに叱られる!」が、コンピューターグラフィッ クの仮想のチコチャンと言う女の子が様々なコミュニケーションを 行う人気番組だ。Vチューバ―をまねたTV番だ。

本来タブー視されていたはずだが、TVだからか、その中の人が声 優として人気タレントの木村祐一が演じていることが周知の事実と なり、逆にそれで有名になってしまった。しかし中の人が有名だか らチコチャンが有名になったわけではない。チコチャンと呼ばれる CGで作られた子供、ちょい悪大人、知識人、女子の良いところ取 りした中性のキャラの面白さとカリスマ性が人気のもとだ。

キズナアイを知らない、40歳以上の男性はチコチャンを想像しな がら考えてみてほしい。中に人は確かにいる。その表現等を借りて いるのは事実であるが、その人の性別、人種、国、属性は関係な い。CGで仮想されて、“中の人”に関係ない、子供なのか?大人な のか?頭がいいのか?悪いのか?ある意味“中性化”されたキャラ クターだ。

そのキャラクターがゲームをしたり、歌を歌ったり、翻訳による多 言語でAIコミュニケーションしたりする。世界中の人とコミュニ ケーションが可能となる。2016年に登場して以来、大量の動画が 配信され、世界中で若い世代の関心をさらっている。その有様は、 チコチャンを見ているおじさん世代の視聴者と同じ現象だ。

Vチューバ―は、先ごろの日経流通MJでも取り上げられ、キズナ アイ以外に輝夜月(カグヤルナ)、ミライアカリ、シロと言う四天 王が紹介されている。

今年の初めNHK−BS(国際報道2018)で紹介されたドキュメ ントでも、第二次世界大戦のユダヤ人迫害ホローコースト、アウシ ュビッツを後世に残す工夫としてこのAIが使われようとしてる。 実際に生き残こったピンカス・グッター氏を中の人にして、他の生 き残りの方に繰り返し質問したホローコーストの情報、ありさまを AIで処理し、ホローコーストの語り部として、後世に残す手法 だ。

いよいよ、リアルな人ではない、AI装置を持ちコンピューターグ ラフィックで装飾した仮想アイドル、仮想語り部、仮想カリスマが 世界を席巻し始めるわけだ。リアルな世界では中の人の性別から人 種までその属性が非常に重要である。だからこそLGBTも問題にな った。

やがて世界がAIによって制御されるという風景は、視覚的にこの Vチューバ―たちのような属性を超越しAI、CGをまとった人の属 性を超越したデバイスに支配される事なのかもしれない。カリスマ リーダー、カリスマ国家元首、カリスマ社長等々。

日本の倫理観は、世界に競争優位或る長所を持ってきた。例えば質 の高い労働力、教育、安定した社会である。しかしこれらが機能し た社会風景が変わりつつある。

人のニーズの対象がモノからサービスへ変わり、製造の現場が内生 からオープンソース、技術のカスタマナイズされたすり合わせから モジュール化、地域のネットワークからサプライチェーンへと変わ ってしまった。人のコミュニティが同質性から多様性へと変わり、 人の属性を障害としてしまう不都合が生じてきた。

このままでは長所は短所になってしまう。日本人の良き倫理観をこ れらにどう合わせていくのか、表面の繕いではなく本質的な解決が 必要になる。

以上

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