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旅客機MRJの先

〈2018年7月20日〉

IR法案審議が佳境を迎えている。議論の一つがカジノによる賭博 依存症問題だ。イギリスで今ゲーム依存症が“ようやく”病気とし て対策する必要があると認められたことが新聞で話題になってい る。この「ようやく」にこそ大きな問題を感じる。

“Gaming disorder is finally getting the attention it  deserves”と表現されている。長年指摘されてきた問題がようやく (finally)問題視され始めたわけだ。しかし長年放置されがちで あるからと言ってゲームを登場させたことが間違いであったことで はない。 引用:Guradian:“NHS to fund internet addiction clinic amid dependency fears”

人間である以上、どんなことにも依存症などの問題が生じる。それ にいかに対処できるかという制度の問題であって、それで、新しい ことに取り組むことを委縮させることではない。以上前置き。

何かとやきもきさせてきた、東海地方の将来産業の柱と期待されて きた旅客機MRJが、また最近新聞紙上に登場し始めた。親会社の資 金的テコ入れが行われて、商品化が急がれている。

エコノミスト・評論家が、高齢化社会・低成長経済下において、ま るで人ごとのように簡単に産業界に技術革新を要求する。しかし技 術革新は、過大な投資を必要とし一つ間違えば大企業の屋台骨を揺 るがすぐらい、重要な企業戦略リスクともなりうる。

技術革新には、MRJ開発のように技術的な問題だけでなく、開発に 時間がかかり、その間に市場が変わるなど非常のリスクが大きい。 リスクを伴う開発の時間をかけるより、商品化に時間をかけた方が 利益になるのが今のグローバルスタンダードのトレンドだ。

古くから燃料電池などいろんなアイデアはいくらでもあった。しか し簡単には企業が開発投資を負えないのが現実である。最近のファ イナンスでは、技術革新はリスクがとりにくい大企業ではなく、リ スクが取れるリスクファンドのベンチャービークルで開発され、そ れを企業が買う形態が多い。アップルがその代表例だ。あるいはオ ープンソースで技術革新、商品開発期間を短縮化するのが一般だ。

しかし自前で、技術を開発するいわばガラパゴスも、流行りに囚わ れない日本古来の産業発展史の一コマであることには違いない。成 功すれば、失敗したグローバリゼーションの逆張りもありというこ とになる。

一方として、今、英字新聞などで話題になっている旅客機の話題を 紹介しよう。まずSST(supersonic travel)、超音速旅客機であ る。SSTと言えばかつて大西洋上を闊歩したコンコルド(1969- 2003)である。

当時、コンコルドはマッハ2のスピードを誇り、20機生産され た。しかしその性能を発揮するための制約から、重量制限があり、 狭く、高価格、燃費が難点でもあった。しかも音速ゆえの生じる衝 撃音の問題から、当初の就航はヨーロッパ-中東・南米でしか就航 していなかった。ヨーロッパからニューヨークへは、飛行時間は短 くても、就航までに多くの時間を要した。

当時、贅沢なスペース、大量に運ぶコスト減、燃費の改善ニーズか ら、ジャンボ・エアバスが航空業界の主流になっていった時代であ る。2003年アメリカで起きたテロを機に終焉を迎えた。しかし今 またジャンボ・エアバスなどのスタイルが時代遅れとなり、さらな る市場の細分化がLLCなどを登場させている。

そういった状況でSSTがまた注目され始めた。最近、まずエアバス と共同開発を進めているエアリオンがマッハ1.5クラスのSSTの構 想を打ち上げた(2014)。更に2016年NASAがロッキード・マーテ ィンとの共同開発で次期SST、QUESST構想を打ち上げた。大西洋3 時間、太平洋6時間の航行構想である。

いずれも、音速の衝撃音の問題を解決して太平洋間の就航を目指し ている。燃費の改善、重量制限の技術革新、環境性能などの進化が 期待されている。しかしまだsmall aircraft businessの領域を出 ていない。

しかし、日本のJALも、このSSTブームに乗り出したのである。日 本でも一部ネットで、JALがアメリカの民間開発会社Boom  Technology社のSST XB-1(マッハ2.2、客席50席弱)開発と提携を 結んだ(2017)と報道された。

ガーディアンの記事では、もう一歩踏み込んだ表現“Japan Airlines has already pre-ordered 20 of the aircraft”で報じ られている。JALにしてもANAにしてもMRJの購入予定は、日本の 新聞で現在20−30機と報じられている。それに匹敵することにな る。

更にもうしばらく前の英字新聞では、ハイブリッドエアークラフト の話題が取り上げられていた。ハイブリッドとは燃料エンジンと、 バッテリーモーターの併用飛行機である。この飛行機の構想は以前 からあったが、電池の重たさの問題で構想に域を出ていなかった。 しかし改めてこれらの開発のベンチャービジネスが登場し始めたと いう話題だ。

以上のトレンドから言えることは、旅客機市場はここへきて、明ら かに新たな変化を要求しだした。その一つが市場の細分化に応じた 機種、環境負荷、そしてスーパーソニックによるスピード化であ る。最も大きな変化は、SSTでは太平洋間が10時間超要したのが6 時間に短縮されるなど、今より距離の短縮化が進むことだ。

日本のある政治家(現在野党党首)が「今の新幹線で十分でしょ う。リニアによる時間の短縮化は無駄で何の意味があるのか」?と 言っていたが、それとは真逆に明らかにグローバルの細分化、短縮 化が起きている。時代のトレンドを見誤るなと言いたい。

引用 Guardian.“Boom time : is this a new age of speed?” https://www.pressreader.com/uk/the-guardian-weekly/20180615/282046212802719

以上

MRJSSTコンコルドXB-1JAL