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主宰:川津商事株式会社
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新しい金融のプラットフォームは何になるのか?

〈2018年5月25日〉

以前、世界都市ランキングというものをよく見かけた。日本では東 京が上位に食い込めなくなったからか?最近見かけない。この都市 ランキングの基準は、人・財物の質的量的な交流とお金の集中・流 通が加味されてきた。

その結果、不動の1位、2位がNY、ロンドンであり、3位4位にパ リが位置した。かつてグローバルな金融市場をアメリカ、ヨーロッ パ、アジアの3極に分けてNY、ロンドン、東京で8時間づつ24時 間をカバーしていた時代、東京もこの3位4位グループに位置して いたことがある。

いまアジアの中心都市は、金融財物人の集中・流通で言えば上海、 シンガポール、香港、深?がしのぎを削っている。東京はその次に 位置するのかどうかわからない。金融は、人が交流し、財物が行き 交うことを前提に、その派生として資金が流通し、投資・消費など の様々なビジネスチャンスが生まれるという概念である。

つまりこの時代の金融のプラットフォームは、都市経済の隆盛であ ったわけだ。そこではもちろん、都市経済のファンダメンタルズが 円、元、ドル、ユーロの金融通貨の力となって変化した。

ところが近年のフィンテック、クラウドファンディングを標榜する 金融は、都市経済とは違ったプラット─フォームの上に成り立つ。 次世代金融は、ブロックチェーンなど新しいプラットフォームの上 で、超高速の計算処理技術と大容量の記憶容量のIT技術を使って 成り立つ。地域金融、都市経済、国境は関係なくなる。

現在、銀行の為替(振込)業務は普通、各行が独自に各行のコンピ ューターを自社行員がオペレートして処理を行っている。最近手数 料の安い為替業務専門のフィンテックベンチャーが立ち上がってき ている。

そしてコスト面からも地方銀行が、独自コンピューターシステムで 為替業務を維持することができなくなりつつある。これに対して中 小の地銀が自行の為替業務を、これらのフィンテックベンチャー に丸投げしようとしている。

更に通貨のデリバティブ自体が価値を生み、それに対して投機家・ 通貨マフィアがボーダーレスに群がり、通貨自体の差別化・競争力 がうまれる。通貨の背景が都市経済であった時は、都市経済のファ ンダメンタルズの趨勢が反映される通貨の価値であった。

このような金融概念の変化から、いろんな変化が誘発されると考え られる。まず冒頭の都市間競争から、従来の金融ポジションの要素 が希薄するということだ。それに代わるものとしては如何にグロー バル金融に効率よくアクセスできるかが、その都市の実力となる。

いつまでたってもキャッシュレス化しないとか、効率の良い・価値 がある通貨が使えない、というシステム的な欠点は、都市の魅力を 減じる。その都市の住民しか機能しない金融システムではなく、す べての世界の人がその都市で効率の良い金融を使えるかが問われ る。

日経の経済教室(5月18日)にマッチング理論の新しい応用例が 出ていた。少子化による全員合格時代の、大学受験生と大学との新 しいマッチング問題である。

大学受験生に合格通知をもらったら必ず行く大学の優先順位を上げ たうえで受験し、大学も受験生の成績選考基準別に合格優先順位を つけて申告し、あとはアルゴリズムが両者がマッチングするまで繰 り返し計算する。すべての受験生と大学のマッチングを3月特定日 に公表するというものだ。

毎年70万人の受験生と、800校の大学がお互いのマッチングを 個々に実現を目指してきた。そのために定員をオーバーして合格を 出したりして、定員割れ・定員オーバーのリスクを負ってきた。受 験生も無駄な入学金を支払ったり、第一志望校でない大学に行くリ スクがあった。しかしマッチング技術が進めば、社会全体の最適な 組み合わせを実現するという一つの考え方だ。それがいいかどうか は懐疑的である。

又受験のシーズンあるいは新入社員の時期になると、賃貸マンショ ンの争奪戦が始まる。今や、賃貸マンション市場も少子化時代の大 学受験と同様、借り手市場になりつつある。従来、賃貸マンション のマッチングは賃貸マンション仲介業者の仕事であったが、最近は ネットで入居者希望者が自ら探しに行くケースが多くなってきてい る。

賃貸マンション市場では、どのようなマッチング理論が適している かどうかは別としても、以前より、ネットのIT技術が進めば、不 動産業の創業以来の仕事の大義であった売り買い、借りて貸しての マッチングが、人の手からITに変わる可能性は高く、マッチング と言うビジネスは絶滅危惧業種になることは以前から言われてきた ことだ。

マンションの賃貸オーナーがすべて集って、市場のマッチングのア ルゴリズムを作り、直接最適なマッチングを求めるようになること は当然考えられる。不動産仲介業の絶滅である。

さて金融という概念ももともと、お金の足りない者と余剰の者を仲 介して、資金の最適な循環をめざすものであった。資金の仲介業務 こそが地域金融の中核の職責であった。さてこの仲介にマッチング 技術の進化が入ってくるとどうなるか?世界中の様々なファイナン スが選択肢となり、地域金融という概念も変化せざるを得ない。

日本から、ハワイ、シアトルなどのレジに投資をするケースは以前 からあった。当然使い勝手のいい通貨でファイナンスする。日本の 円ではない。ネットで最適な通貨、銀行を探す姿が見かけられた。

以前より、東京都知事の東京の復権のために金融センターをつくる という主張を見かけることがある。これは明らかに従来の都市経済 にプラットフォームを求める金融センター発想であった。仮に金融 センターができても、新しい金融プラット─フォームを作るのでな ければ、日本の中心と言うポジションは維持できても、グローバル 市場の中心への復帰は期待できないだろう。

しかし日本の金融関係者には、新しいフィンテック技術のプラット フォームでグローバル市場を支配するけの実力はまだない。という か、新しい金融プラットフォームの担い手が、従来の金融プレーヤ である必然性があるのかどうかも不明だ。世界で今起きようとして いる状況を見る限り、従来ではなく新しいプレーヤの登場を予感さ せる。

日本は従来のエレクトロニクス産業に加え、金融投資国家より観 光、エンターテイメント、スポーツ、医療、代表的産業の農業の集 大成である食文化産業に新しいプラットフォームを求めるべきだろ う。観光・農業・スポーツ産業資源は全国に広がる。それはある意 味東京集権国家ではなく、連邦型の市場分散国家でもある。

従来の日本の東京一極集中は、お金の流れがすべて東京に集められ ることを意味していた。東京のファンダメンタルズに裏付けられた のが通貨円の特徴である。都市経済の金融が大きく変わることは、 この日本の経済構造にも影響してくる。

逆にもし影響し変化がなければ、日本はグローバル市場から退席す ることになる。そもそもNY、ロンドンが新しい金融プラットフォ ームにおいてこのままトップに君臨する必然性もない。

以上

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