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主宰:川津商事株式会社
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名古屋のコンパクトシティー化は?

〈2018年4月1日〉

少子高齢化時代に都市のコンパクトシティー化は至上命題となって いる。しかし財政力の弱い地方都市がこれをやると、失敗する可能 性が高い。その一方で東京では、地域ごとにすでにかなりコンパク トシティー化が進んでいる。ますます東京の将来と地方の将来の明 暗がはっきりし始めている。さて名古屋は?ということになる。

名古屋の都市を一言で言うなら「ゆる都市」であろう。東京ほど厳 しさがない。と言って地方都市の中では都市化が進んでいるほうで ある。そんな名古屋でもやはり都市のコンパクト化は至上命題であ る。しかし名古屋の財政を見ると、何でもかんでも東京の様に都市 のコアの部分の再開発ができるほど余裕がないことは明らかであ る。

先般、あるシンポジウムで日本大学の中川雅之先生(日本不動産学 会)が、本当に都市のコンパクト化をする気なら、既存の都市計画 の線引きを狭めるだけで簡単にできると発言していた。確かに今の 都市計画の市街化区域を半分に狭めてしまえば、コンパクト化が法 規制で強制的にできるわけだ。

今東京でも、あるいは失敗し続ける地方都市でも、都市のコンパク ト化はイコール中心市街地である都市のコアの再開発である。さら にこの再開発のやり方は規制(主に容積率)の緩和である。

都市のコンパクト化の本質は、それまで拡大し続けてきた都市の市 街地化を反転して縮小することにある。しかし現在行われているコ ンパクト化は、全体の拡大を制限せず放置しながら、さらにコアの エリアの容積率を拡大しようとしている。

つまり相変わらず全体としては容積率を緩和し、高度経済成長から 続く都市化の拡大を繰り返していることになる。真逆である。かと いってこの是正は簡単な話ではない。1960年代高度経済成長以降 日本の行政・政治システムは、拡大するエリアとその利益が利権化 し、それをどのように市民に分配するかがその職責だった。

しかしコンパクト化は逆に、今まですでに分け与えつづけてきた、 あるいは拡大した都市に制限をかけて、減らし返還してもらうこと である。つまり東京のようなコアの拡大をし続ける財力があれば従 来型のコンパクト化が実行できるが、地方では現実的な縮小をしな ければならず、それがコンパクト化が遅々として進まない所以でも ある。

しかし既に行政が規模の縮小を実際に行っているところがある。そ れが2007年財政破たんした北海道の夕張市である。一般論として 夕張市は拡大行政財政をし続け、やがて収入が減りだして財政破た んに至る。少子高齢化、産業の斜陽化に対しては行財政の縮小が必 要になる。

これは行政サービスの撤退整備計画である。それまで住民が享受し ていた行政サービスを打ち切ることである。打ち切る場合すべての 住民が等しく縮小するならまだ受け入れられやすい。現実にはサー ビスを切り捨てられる住民と、されない住民という差別が生じる。

その不均衡を是正しながら、郊外周辺住民の移転などを推進するた めに説明が必要になる。夕張市では今、あの若い市長が自ら住民に 出向いて行政区域周辺部から中心への移転等を説得して回っている そうだ。

ここで行われていることは、役人ずらして高飛車にサービス終了の 決定通知ではなく、説得である。もし説明をせず通告だけで縮小を 強権するならば社会主義的な独裁となろう。それは民主主義ではな い。

社会主義的な独裁で切り捨てを行うか、民主主義で民意か確認しな がら縮小するか、どちらがやりやすいかと言えば前者に決まってい る。と考えるとそもそも日本的民主主義とは拡大社会を前提とした ものだったのかもしれない。コンパクト問題はそもそもそのあたり から意識改革しなければならないかもしれない。

名古屋は先ごろ、都市コアの再開発における容積率緩和を打ち出し た。名古屋周辺を受け入れるのであれば中心コアの緩和も必要であ るが、それは名古屋市郊外つまり愛知県レベルで全体の容積率のコ ンパクト化が前提だろう。ますます名古屋と、愛知県の連携が必要 となる。今大阪の再統合はそれをやろうとしているのだろう。

都市エリア縮小化によるコンパクトシティーの先にあるのは、オー ストラリア型都市国家と言われている。これは砂漠の中に集積した 都市が点在する形態だ。宇宙都市と言っても良いかも知れない。つ まり放置エリアが拡大することになる。

アメリカの破綻した都市デトロイトでも、夕張でもネットで調べる と放置された施設の廃墟の画像があふれている。廃墟は縮小が進ん でいる証ともいえる。

一方で世界人口は増え続けている。そこでは旺盛な食糧需要が課題 となる。この未利用地を単なる廃墟として放置するか?農業立国と して君臨できるか?これもまた戦略である。

以上

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