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主宰:川津商事株式会社
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35年アパートローンは破たんするか?

〈2018年3月25日〉

約30年前1980年代後半はまさにバブル時代だ。このバブル盛期前 後に、それまでの2階建て木造アパートに代わり現存する多くの中 高層賃貸マンションが建てられた。その賃貸マンションの多くが3 点ユニットと呼ばれるバス、トイレ、洗面が一つのユニットになっ た住宅設備であった。

このような商品を使った賃貸マンションがワンルームマンション (1R)と呼ばれる賃貸マンションである。この3点ユニットの1R はその後約20年を経て商品価値をなくしていく。入居率が激減し て退去すれば新たな入居者がいない状況になっていった。築20年 で入居率が70%から50%くらいまで下がっていった。

マーケティングの要素だけではない。ファンダメンタルズからも言 える。都市部郊外に建築された学生向けマンション。築年数の新し い古いに関係なく、現在学生の減少で入居率が激減している。エリ ア市場としても壊滅的な打撃を受けている。

さてそのような状況で、ここ2-3年、融資企業先のない地方銀行が 相続対策と称してアパートに大量のクレジットを供給し市場の均衡 を破壊しようとしている。これらの多くが35年アパートローンと 呼ばれるものだ。

35年間元金均等であれば、初年度から最終返済年度まで均一に同 じ元利と金利合計の償還金を返済し続けなくてはならない。通常約 20年で入居率が70%に落ちる可能性があると考える。もし商品の 市場価値など重大な問題があれば、50%以下になる可能性もある。 にもかかわらず返済償還金は変動しないわけだ。

土地建物付き賃貸マンションで、もし建築時に自己資金がほとんど なく90%以上ローン資金で賃貸マンションを建てたら、おそらく 35年平均入居率は80%以上ないと返済できないはずだ。

結果的に新築から得られるキャッシュフローをそのまま使わずに蓄 積して、築20年以降のどこかで返済超過になることに備えないと デフォルトすることになる。

現実にバブル経済時1990年代に建てた賃貸マンションの返済を10 年以上したところで、返済金が賃料で賄えなくなり、他の事業で得 た資金を流用し続けたが、もう我慢できずに処分したくなる。とこ ろが、処分金額がロ−ン債務残高に満たず、大変な持ち出しとなる ケースをしばしば見かけた。

しかしそれでも処分できた人はまだ負け組ではない。本当の負け組 は処分した時の足りない分の持ち出し資金がなく、債務超過が続 き、最終的に銀行の意のままの処分並びに破産宣告、少なくとも弁 護士と銀行との交渉・・・・ということになるケースだ。

返済が超過するケースで、それを補てんできる他の収入が必要にな るわけだ。これが過去の経験である。

冒頭の築20年で賃貸マンションの商品価値がなくなることに対す る対策は、20年以降で大規模な再投資をして商品価値をよみがえ らせる必要があることだ。当時の賃貸マンションは逆に、今の新築 マンションより駅近で立地が良く、返済が終わっていれば新たなリ ノベーションがなされて、価格的に市場競争力もある。これが勝ち 組だ。

つまり商品価値劣化による入居率低下になる前に返済を終えて、新 たな投資ができることが勝ち組の条件だ。規模によるが一部屋何百 万円とかかるリノベーション再投資だ。しかしこれも現実に地銀が このようなリノベーション融資を断るケースもしばしば見かける。 断る理由は残存期間らしい。

逆に断られない理由は、他の事業があり、所得があることだ。

いずれにしても結論から言えば、他の事業所得がない場合、新築時 にあっても20年後にその事業所得が使えない場合、アパートロー ンは、約20年という商品価値が劣化する前に返済を完納していな ければ、破たんするリスクが高いと言わざるを得ない。

以上の話は不動産の有識者であれば特段の話ではない。特に1990 年当時のバブル経験者が市場にはまだ多くいる。現実に理解できる 話だ。つまり前おきの話である。

市場には規律がなければならない。規律がなければどんな良いバブ ルも悪いバブルになってしまう。アパートローンの20年をはるか に超える長期リスクを明確にせず投資させる供給が問題なのであ る。初めての賃貸マンション投資で、35年ローンを使ってしまう 人はそもそもリスクを理解できていないはずだ。

その20年後のリスクを理解できず現実に対策手段を何も持って投 資家つまり未経験者に、35年アパートローンをつけて投資をさせ るデベロッパー、融資銀行、各種コンサルタンの存在は、市場の規 律を壊すプレーヤーであると断言する。

もっと言えば、残存期間が不安・担保能力が劣化したという理由 で、再投資の融資を断る銀行に至っては完全に破たんした時の融資 責任を問われるべきである。なぜかと言えば、賃貸マンションの躯 体寿命は堅固な50年以上ある。一方で20年超で商品価値劣化リス クがある投資対象物であることは始めから明白であるからだ。

20年を超える融資をしておいて、再投資が必要な時期に、所有者 に担保能力がないかもしれないと言う理由であれば、そもそも初め から長期ローンは組めないはずだ。たとえどんな書面でリスクを説 明したとしても。

今後発生が予想される破綻には、これらの業者がその責任を問われ るべきである。今、中小企業が姿を消し、それがすべて不動産賃貸 に変わることが予想されている。市場に規律がなければ日本中賃貸 マンションだらけになってしまう。人口が減るにもかかわらず。市 場規律が必要である。

賃貸マンションはビジネスの玉ではない。社会資本だ。そのために は市場の規律が必要だ。それを無視して自分たちだけの利益を追求 するプレーヤーを市場から排除するためにも、厳罰に処せられるべ きだ。

以上

35年アパートローン相続対策