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歴史に見るトランプ大減税の威力

〈2017年12月30日〉

ついにトランプがやってのけた。年末になって成立した米国の 大減税だ。そもそもトランプの政策は、40年前のレーガン大統 領によるレーガノミクスを標榜していると言われてきた。その レーガン大統領が行った大減税を超える超大型大減税をやって のけたのである。

遡ってレーガノミクスを説明しよう。1960年代からのベトナム戦 争、人種差別による社会問題で疲弊しきった米国社会に、誇りと強 さを取り戻そうと訴えて映画俳優のレーガン大統領が登場した。彼 がまず行ったのが国内の大減税(1981年経済再生アクション)に よる景気対策である。

減税の内容は、まず減価償却の短縮。非居住用不動産の減価償却を 平均35年から15年に短縮化、割増減価償却が認められた。更に、 不動産投資において他の所得との損益通算が認められた事により、 タックスシェルターとして不動産投資が盛んにされるようになっ た。純キャピタルゲインの最高税率が28%から20%への引き下げ がなされた。これにより多くの投資家が優遇税制の恩恵を得た。

この政策に伴い様々な規制緩和が行われ、今の日本では当たり前に なったリミテッドパートナーシップなどの不動産投資ビークルの開 発、金融の自由化、金融自由化競争の名のもとにアメリカ経済が一 気に拡大、肥大化していく。と同時に国内向けのこの政策実施とそ の信頼をバックにして、冷戦の相手国ソビエトとの対外的な強硬政 策に打って出た。

アメリカの議会制度に言及するなら、アメリカ大統領はそもそも財 政立法権を持っていない。米国では財政に関する立法は議会が行う 仕組みである。世界で最も国内政策に権限が弱いのがアメリ大統領 と言われている。しかしその一方で、米国会の議員は党議拘束がな いため、大統領が議員多数派工作を行って政策を実施することにな る。

国内の財政政策とは逆に、外交政策においては米国大統領は絶大な る権限を持っていた。戦争をすること、核を発射することができる のも米大統領権限である。その力を発揮して、時間がかかったが結 果的にソ連との冷戦の勝利に導いた。

しかしその1981年の大減税はその後の1986年税制改革(Tax Reform Act)により急ブレーキがかかる。住宅所有以外全ての不動 産投資にインセンティブを与えていた税制上の優遇制度に制限を加 えた。所得税率の引き上げ(Individual Tax Rate Schedule)、減価 償却費 (Depreciation Schedules) の長期化、所得外費用控除制限 (Passive Loss Limitation)、各種税額控除(Tax Credits)の縮 小、利子控除制限(Interest Expense Limitations)、リスクルー ル(At-RiskRules)の不動産投資への適用等がその主なものであ る。

これにより建築需要が落ち込み、新しく所得外収益(Passive  Income)の創設により損益通算を制限した。その結果タックスシェ ルター、当時であればリミテッドパートナーシップの特典が削減さ れた。

一気に経済、信用が収縮し、多くの金融機関、特に貯蓄組合と呼ば れたS&Lが破たんした。このときの巨大な金融機関の破たん処理が 「大き過ぎてつぶすことができない」として始まった。アメリカで 拡大した経済の不良債権処理は、2期目のレーガン大統領終了後の ブッシュ(パパ)大統領からその次の、クリントン大統領第1期迄 期間を要した。

クリントン大統領第2期には、2000年のITバブルが創生して、よ うやくアメリカの経済がまた一気に拡大していく。それを待たなけ ればレーガノミクスの不良債権処理は進まなかった。それほどイン パクトの大きな経済タームであった。ちなみにアメリカが大不況の 1990年前後が日本のバブル経済の絶頂期であった。

言うまでもなく、レーガンは同時代の英サッチャー首相と新自由主 義ネオナチズムを作り上げた大統領である。その後の市場競争、小 さな政府、自由競争はグローバリゼーションの代名詞となった。こ の時の一角に日本の中曽根首相とレーガンの蜜月もあったわけだ。

この間に登場した経済用語が、規制緩和による景気対策、不良債権 処理、バルクセール、救済、大きすぎてつぶすことができない金融 機関などである。このレーガノミクスの大減税を上回る減税をトラ ンプがやってのけたわけだ。

今回の具体的な政策内容、実際の運用はまだ不明確であるが、新聞 報道によると「設備投資の全額償却」と言う言葉が登場している。 非常に大きなインパクトがある政策であり、その効果が大きければ 大きいほどその反動が大きくなることが予想される。前回は10年 にもわたる停滞を生んだのである。

そして最も重要なことは、世界中で国内政策に最も権限の弱い大統 領が、国内政策に道筋をつけたことを背景に、外交政策に強気に出 られるわけだ。レーガンは冷戦時代のソ連のゴルバチョフ議長に引 導を渡した。

景色があまりにもレーガンの時代に酷似してきた。行き詰ったアメ リカ経済に登場したトランプ。そして大減税。アメリカ経済の拡 大。日本の首相との蜜月。さていよいよ準備は整った。次にトラン プは誰に引導を渡そうとするのか?北朝鮮か?中国か?アラブ中東 諸国か?アメリカのおひざ元中南米諸国か?

ちなみに、レーガノミクスはその後の論壇では、レンガノミクスの 経済破たんその処理を考えると失敗であったという論調が多い。し かし資本主義の繁栄の象徴であるグローバリゼーションの基礎を作 り、アメリカの一強時代全盛期を作った。その恩恵にあずかった周 辺諸国からすれば評価は高い。その再来をトランプも目指してる。

以上

トランプレーガノミクス大減税不良債権処理