ニュースレター

主宰:川津商事株式会社
名古屋の不動産何でも相談室がお送りする、不動産・ビジネスに関するニュースレター「名古屋ビジネス情報」へのご登録ありがとうございます。
不動産にとどまらず、名古屋のビジネス情報、街づくり話題、不動産経済に関するニュース、物件情報など時代の変遷とともに広くお伝えしています。

名古屋駅前・栄エリア容積率1300%緩和の威力

〈2017年 12月 20日〉

驚くべきニュースが新聞報道(中日19日朝刊)された。名古屋駅・ 栄で容積率を1300%に緩和するものだ。驚くべきビックな都市政策 である。本来なら市長選挙、知事選挙等の政治パフォーマンスに使 われるくらいのビックな都市政策の規制緩和である。

東京でやれば、おそらくアベノミクスのメイン政策になるくらいの 都市政策であり、大きな経済効果が見込まれるものだ。この政策は 政治的コンセンサスを得たパフォーマンスとしての政策か?それと も行政サイドの特定も目的の達成のためのリーク情報かによって、 その効果は全く違ってくる。

政治的な政策の代表例が、かつて2001年小泉政権下行われた都市 再生本部である。多くの案件で大規模な容積率の緩和がなされた。 この政策により生まれた東京丸の内の丸ビル、六本木、日本橋、大 崎、新宿等にある超高層ビルが登場し、平成のいざなぎ超え景気と 呼ばれたコイズミクス景気を生み出した革新的な政策である。現在 の東京の姿を作り上げた政治的政策だ。

小泉政権下の都市再生は、日本における東京の再生を意味していた。 デフレ経済から抜け出すために東京から元気を取り戻す政策であっ た。実は名古屋も大阪も対象ではなかったのである。しかしこの時 名古屋の財界が動いて、名古屋駅前のミッドランド名古屋の建設を 無理やり押し込んだ経緯がある。

この政策には、「実効性ある市場では容積率の緩和が生産性を上げる」 と言う不動産学会の今や金字塔になりつつある八田達夫先生の東京 一極集中容認理論があった。

さてこれを名古屋でやろうとするとどうなるか?だ。もし名古屋に とって有効か規制緩和であるなら、この金融緩和時代のベストのタ イミングで、名古屋駅前周辺、栄界隈の古いビルの建て替えなど再 開発市場にたいする刺激が期待できる。もちろんまだまだ障壁はあ るが、大化けすれば名古屋発のバブル経済の創出もありうるわけだ。

ただし、これは何ら付帯条件を付けずに広くエリアで規制緩和を行 えば、である。行政的な政策であれば、緩和に要件として様々な条 件を付けて、特定の案件だけの規制緩和にならざるを得ない。政治 的な後押しがあれば名古屋経済にとっても大きな転換点となろう。

名古屋駅前は大きなプロジェクトが完成しているたが、それに続く 周辺の40年超の老朽化したビルの建て替えが進んでいない。明ら かに東京資本で進む再開発と、それを取り巻く地域資本の未再開発 の境ができてしまっている。

一方栄エリアにおいては中日ビル、丸栄の再開発が待ったなしの懸 案事項である。これらに限り容積率を緩和するのか、周辺エリアを 市場原理にゆだねて都市建物の全体の更新を刺激するのか?つまり 政治的な都市政策につなげることができるか市場が注視することに なる。

もう一つ障壁がある。従来から名古屋の民間ビル施設の再開発には 大きな障害があった。それはファイナンスである。当ニュースレタ ーでは何度も取り上げていることであるが、東海地方の地場資本の 金融機関では名もない一地権者の再開発案件に10億もの融資をす ることはできない。東海地方の金融機関の過小資本問題である。

ビル全体で1億円程度の耐震化補強工事費用のファイナンスが限界 だ。直近の例では、名古屋のシンボリックな御園座の再開発ですら リスクマネーを出すところが初めはなかった。財界が旗を振ってよ うやく機能しだしたことはまだ記憶に新しい。この地場資本の過小 問題は、再開発の機運そのものを止めてしまっている。

逆にメガバンクが相手にするには小さすぎる。結果的に再開発のフ ァイナンスが出来ない問題があった。この問題がこの地方の金融機 関再編が急がれる背景にある。

しかし今は金余りのタイミングである。東京からどれだけでも様々 なチャンネルでファイナンスがアプローチしてくる。東京の私募フ ァンドなどが大喜びで資金提供してくるだろう。

もし特定の案件を目的としたものでなく、付帯条件のない広く容積 率の規制緩和が行われれば、あちらこちらで老朽化したビル施設の 更新機運が高まるだろう。名古屋が高齢化社会になる前に都市の器 が更新されなくてはならないことは誰もが思っていることである。

都市経済の実務者でない方が勘違いすることは「それほど需要があ るのか?」と言うことすぐに出だすことだ。需要は何を供給するか で決まる。これが不動産ビジネスである。老朽化したビルのままで は今までの需要しかなく、新しく市場を創造する供給がなされれば それに見合う新しい需要も生まれる。

温暖化問題は待ったなしである。環境性能の高いビル施設へのニー ズが出てこなくてはならない。納屋橋で始まろうとしている都市型 居住スペースの供給も、新しいライフスタイルと言う市場を生む供 給であれば、非常に大きな需要を誘発する。

以上

容積率名古屋駅前平成のいざなぎ越え都市再生本部