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主宰:川津商事株式会社
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野心的な都市政策

〈2017年 12月 10日〉

価値を生む市場は人口が減少しても人は集まる。価値を生まない市 場は人口が増えても人は逃げ出す。人口減少問題だけで都市の衰退、 空き家問題を考えても解決は見いだせない。「移民を受け入れて空き 家に住まわす」とは日本の価値を損なう傲慢な考えだ。有能な移民 であれば当然価値のある家に住みたがるはずである。

今回は非常にイレギラーな野心的な考え方を議論しよう。今、都市 戦略を考えるうえで一番懸念されていることが少子高齢化及び人口 減少問題である。

人口減少に対応して市場・コミュニティスケールのダウンサイジ ングの必要性が連呼されている。つまりコンパクトシティである。 社会の規模が縮小するわけだから、その器である都市をコンパクト に作り替える必要があるわけだ。この理屈に何ら異論はない。

しかし弊社の考え方は、安易なコンパクトシティ化に反対の立場を とっている。地方都市の安易なコンパクトシティ化は絶対にやって はいけない政策であると考える。

そもそも、地方都市は過去の高度経済成長などを経て肥大化してき た。そして近年人口が減って人口密度が希薄化していく。そういっ た状況で、広域化したエリアではフルサービスの行政マネジメント が非効率になった。しかしそれが原因で中心市街地が衰退したので はない。

駅前などの中心市街地は、岩盤規制・既得権などが障害となり、時 代の変化に応じて変革することを怠り、新しい郊外より効率が悪く なったから衰退したのである。この様な衰退した駅前の中心市街地 の効率の悪い根源を排除することなく、そこに新たなコンパクトシ ティを再開発することはコストがかかりすぎる。

既存のまず効率の悪い部分を取り除き、その後新しい効率の良い街 を作ることは、何もないところに新しいものを作るより倍のコスト がかかる。特に行政は既存の既得権を壊すことを嫌がる。地方都市 ではある意味行政そのものが岩盤規制となっているからである。

地方都市中心市街地再生の典型的な失敗例を紹介しよう。東海三県 でも構いません。県庁所在地に次ぐ第二、第三の都市の駅前中心市 街地を想定してみてください。駅前の地域一番ビル、通常駅ビルで あることが多いのですが、このビルは概ね8-7割がたテナント入居 があるとします。

それに続く地域二番のビル施設には大方5割がたしか入居者がいま せん。5階建てであれば2フロワー程度しか入居がありません。さ らにそれに連なるビル施設は1階店舗しか入居がありません。そし てその先に続くのがいわゆるシャッター商店街である。

さてこの駅前を再開発して、新しい施設にコンパクトに商業施設を 集約して中心市街地のシンボルとして市域を再生しようとします。 まず行うことは第三セクターを作って、地域一番ビル施設を再開発 して新しい商業施設のシンボルを作り、それを核に周辺に賑わいを 取り戻そうとする。

しかしその結果は、地域一番ビル施設だけが金ぴかになり、続く商 業施設の老朽さがより目立ってしまいます。駅前地域全体の老朽感 が余計際立ってしまいます。その結果再開発した地域一番ビル施設 も入居に時間がかかり誘致にコストがかかります。

そうこうしているうちに、地方自治体の財政が耐え切れなくなり他 のサービスを縮小せざるを得なくなります。財政破綻の危機である。 地方の都市が安易なコンパクト政策をやると必ず失敗する事例であ る。駅前の効率の悪い部分を全部取り除かない限り、一部のお化粧 直しだけでは効果が上がらないわけだ。

しか、しもし人口減少を止められないのであれば、それでもコンパ クト化をしなくてはならない。もしどうしても前の既得権に固まっ たエリアを効率よく再開発する必要があるなら、これは必ずしも弊 社の意図とするところではないが、まず市場価値のない借地借家権 の消滅をさせる必要がある。

例えば入居50%を割りそれが10年以上続いている商業ビル施設は、 社会に貢献するだけの市場価値が認められないわけだ。このような ビル施設の借地借家権は守られる価値はないと考え消滅させる。そ うすることにより再開発を効率よく行い、コンパクトティに必要な 社会インフラ、商業施設、テナントを効率よく誘致する。

市場価値が認められない不動産につけられている融資担保の抵当権 も、当然市場価値に見合う評価減をすれば、債務残高に関係なく引 き下げられるべきである。市場価値がない資産に過剰な金融担保を 設定して、資産価値低下のリスクを取らず資産の流動化を阻害する ことは、コンパクトシティ化の障害となる要因でもある。

さてこのような破天荒な考えは、まさに炎上ものだろう。共産主義 者呼ばわりされるかもしれない。しかしある有識者の話を紹介しよ う。「これから大きな問題化しつつある所有者不明不動産の問題は徳 政令でも出さない限り、今のシステムを維持する限り解決できない。」 と発言していた。同じ発想である。

今社会が非常に大きく変わろうとしている。AIによるシンギュラリ ティ─はすぐそこまで来ている。働き方も、生活スタイルも大きく 変わろうとしている。その器である都市も変わらなくてはならない。 にもかかわらず何十年も前の岩盤規制、既得権を過剰に守り続ける セクターはそれ自体が阻害要因である。

以上

コンパクトシティ借地借家権抵当権人口減少