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主宰:川津商事株式会社
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最近の「空き家」「所有不明地」「負動産」問題

〈2017年 12月 1日〉

空き家問題が社会問題化している。社会問題化と言うことは単に住 宅市場のセクターの問題だけでなく、社会全体の問題になったこと を意味する。社会全体の問題として共有することは住宅市場の専門 家だけでなく多くの分野の研究者、有識者がその問題の解決に参加 してくるわけだ。

住宅市場だけでは解決できない様々な規制慣習が複雑に絡み合って しまったから社会問題化するわけで、社会全体で議論することは大 いにすべきである。ただそこで登場するマスコミなどが特に取り上 げる有識者は、一般的な著名な有識者に偏ってしまう。特にマスコ ミが好む著名な有識者はマクロ経済のエコノミストが多い。

マクロ経済学者の議論の多くが、人口減少による住宅ストックの余 剰である。この因果関係は決して間違っていない。理論的にも精緻 なデーターで証明されている。このことについて横槍を入れるつも りはないが、リアルな市場にいる者としては全く気に入らない。

日本では人口減少を原因としてしまうと、それですべての議論が止 まってしまうからだ。人口減少はどうにもできない所与の要件で議 論の余地がない領域のなってしまっている。子供を産むという議論 は今や公ではできない。女性蔑視とこじつけてマスコミが上げ足を とってきた。その結果誰もが炎上を恐れて公では議論したがらない。

どれだけマクロデータ解析が正しくても、議論が止まってしまうの であれば違うアプローチを模索するべきである。さらに最近、気に なる話題が海外で沸き起きている。

アメリカと言うか、トランプが2015年のパリ協定からの離脱を宣 言した。パリ協定の前提となる議論が「今のまま進むと2100年まで に現在の気温が4−5度上昇するリスクだ。これを避けるためには、 2050年までに2010年の二酸化炭素CO2の使用量を40-70%削減し なくてはならない。」というものだ。

この協定が崩れたことにより、今世紀中に世界中で海岸線が1.3m 上昇するというものだ。1.3m上昇すると既存の都市の宅地のどのく らいが棄損するか?いずれ簡単に予測されるようになるだろう。そ うでなくても都市災害、環境面からの新たな宅地造成、木材の消費 が抑えられれば、現在の住宅ストック市場にどれくらい影響が出る のか?人口減少に限って空き家問題を論じることにそもそも無理が ある。

所有者不明地問題も論点がおかしい。最近の問題として不動産資産 を所有する人が日本全国で急に姿を消し始めた。どこかに拉致され たのであろうか?集団自殺で死体も発見できない事件なのだろう か?そうではない。要は資産所有者が所有記録制度に積極的に参加 することをやめてしまった問題だ。

なぜ参加しなくなったか?それにはいろいろな原因がある。例えば 所有記録を積極的に行うようなメリットがなくなったこと。一般的 に言う不動産の価値がなくなったため所有記録から離脱したいとい う考えだ。価値がないものを所有したくないと思うことが、憲法違 反、基本的人権行為に反する犯罪者だろうか?

問題は制度的に所有記録が課税台帳を兼ねているため、記録に参加 しないと国の税収に影響が出ることだ。税収の根拠が不動産所有記 録から外れれば、不動産市場に刺さっている大きなとげが抜けるこ とになる。特に市町村町の税収は固定資産税が中心になっている。

固定資産税が変動すれば税収が変動して地方自治に支障をきたす。 しかし固定資産の変動を規制して安定化させると、市場の変動にく さびが刺さることになり、市場機能は停止する。所有記録の制度疲 労こそが所有者不明地の根本的な問題である。

「負動産」いろんな人がいろんな考え方をすることは自由だ。しか し大手新聞が大々的に特集を組んでまでして「負動産」を連呼し続 けることは果たしていかがなものか?

不動産・資産が、最近になって腐りだして悪臭がしだしたのではな い。資産を持っている人が有効な利用をできずに価値を生まない資 産にしてしまっているのである。大量の不良債権処理問題でも同じ ことが言われた。土地、資産が不良ではない。持っている人が不 良なのである。

問題は所有者という人の能力、利用したいその市場の実効性にある。 これも制度政策論だ。したり顔で、上目線で「負動産」とは一体何 事か!!まず己の傲慢さを知りなさい。

以上

空き家所有不明地負動産