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主宰:川津商事株式会社
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今の資産バブルをどうするか?

〈2017年 10月 20日〉

先般、秋の飛騨路に行く機会があった。奥飛騨温泉郷の観光客は見 たところ日本人が3分の1以下かもしれない。3分の1がアジア人 (中国の国慶節の関係)、3分の1が欧米人である。欧米人は異性同 性を問わず少人数・カップルだ。欧米人の中には一つの温泉旅館を 拠点に1週間ぐらい滞在して高山、穂高、下呂などいろんなところ を回遊する人もいるそうだ。

高山駅からの路線バスの運転手の流暢な英語がとても印象的であっ た。考えてみれば、日本ほど山岳観光から海産エリア、民族文化が 短い移動距離のエリアに凝縮された国はそうそうない。滞在旅行に 最適である。以上前置き。

さて、なんとなく株価も高値安定し、衆議院選挙により様子見が続 き、世界的に懸念はいくらでもあるが大きな危機にまではなってお らず、バルセロナ独立主張など平和的な小さなエリアの自己主張が 顕在化している。まさに高値安定で多くのセクター、人が何となく 温泉につかってゆったりしている気分だ。

そんな中で、又かと言われる企業の品質改ざん問題が起きている。 今度は神戸製鋼所のアルミ鋼材の品質偽装の様だ。早々に株価が下 がり、財務リスクに備えるために神鋼が不動産部門の売却を決定し た。900億円とも報道されている。

危機に面して「余分な部門」の売却と思いがちであるが、マンショ ン分譲は神鋼の鋼材を大量に消費する部門で、むしろコア事業に近 い部門である。一般の感覚と違いプロのアセットマネージャーなら 理解できると思うが、投資を手じまいしなくてはならないときに最 初に処分する資産は、保有する資産のうち最も優良な資産から売却 する。これが投資の鉄則だ。

主力のコアの資産は、そもそも何らかの理由で劣化したから手じま いするのであり、コアの事業ではなく保有資産の最も優良な資産か ら売却する。これを欲をかいて良質な資産をキープし、あわよくば 悪い資産から売ろうとすると、市場は足元を見て相手にせず、手遅 れになりやがて良質な資産も売れなくなり、流動性リスクを被るこ とになる。そして破たんしてしまう。

これはバブルの破たん時に見られるあながちな現象だ。皆が一斉に 売り出し悪い資産は誰も手を出さない。そうこうしているうちに良 質な資産も劣化して売れなくなってしまう。闇雲に価格だけが下が り続ける光景は今まで何度も見てきたはずだ。

今回の不動産部門の売却は、不動産事業が依然良質な資産であるこ とを意味しており、今の市場を判断するに十分な材料と言えよう。 しかし量的拡大の金融政策が既に限界にきており、そのむしろ副作 用を懸念する声が高まっている。実際市場には地銀の融資獲得のた めの大量のマンション建設が市場をゆがめており、リアル資産市場 のバブル破たんの懸念は十分にある。

過去の例から言えば、市場のピーク前までに投資した不動産資産は 生き残るが、ピーク以降の不動産資産投資は破たんする。今なお作 られ続けているマンションはチキンレースをやっているに過ぎない。 しかしバブルにも功罪がある。例えば今名古屋中心部で新しいトレ ンドとして顕在化している都心型マンション居住スタイルである。

東京の都心部がそうであるが、名古屋は今まで一戸建ての住環境ス タイルが主流であった。都心には今なお生活インフラが乏しく無謀 なトレンドであるが、従来の一戸建てスタイルを変えるようなエネ ルギーとなり新しい都心の市場を創造できれば、今の過剰感はやが て新しい大きな市場成長となろう。もちろんそのためにはゾーニン グの変更などハードルはたくさんある。

つまり今のピークが次の新しい市場を創生する起爆剤となっていれ ば、このバブルは破たんせずにさらに成長するだろう。しかし反対 に、今までの市場の食いつぶしでいるだけで新しい成長の余地がな ければ、今の状態をピークにしてやがて破たんするだろう。

そういった状況で、永年不動産ビジネス市場を俯瞰してきた精通者 として大きな懸念がある。従来は、幾多の不動産バブルを前向きに とらえてきた。マンションの一時的な大量供給は市場をゆがめるが、 やがて古いものが淘汰されて、市場の調整が起き、都市全体が更新 されるという考えがあったからだ。

これは大量供給によって淘汰されるマンションが、古いアパートで あったり一部の辺境周辺エリアのマンションであったからだ。しか し今の市場では、1980年代末つまりバブル経済に大量に作られたマ ンションが築30年超になりかけている。

これらのマンションは、実は今新築で供給されているマンションよ り駅前に近く立地がいい。しかも勝ち組でリフォームも進み今なお 入居率も高い。債務の弁済も終わっており賃料を下げることも可能 である。つまり淘汰される資産ではなく、アクティブで市場競争力 がある資産であるわけだ。そこにさらに大量供給が起きている。

賃貸マンションの募集店は新築マンションにしか関心がないが、も し30年超でリフォーム済みで、格安の良質なマンション専門のサ ーチエンジンができれば、高い新築のマンションより競争力がある はずだ。つまり今の賃貸マンションの新しい大量供給が、古いもの を淘汰するのではなく、人口減少に反してなおかつ単に市場を肥大 化させているだけの状態が今の状態だ。

極端なことを言えば、今後増える都心部の新築の賃貸マンションは 既存と差別化する圧倒的な新技術を取り入れた新しい市場を作る規 格であるか、あるいは都市の集中を更に促進して地方から多量の移 住を生まないと需給のバランスが崩れることになる。

筆者は、アベノミクスの金融緩和の功罪の功を支持する。しかし金 融緩和は期間限定でしなければ罪が大きくなる。ところが市場では、 いまだに物価2%を実現できなかった責任論の終始している。いま 市場で必要なのは、金融緩和を支持した人、否定した人どちらが正 解か?の議論ではなく、新しい市場である。

今のバブルを破たんさせるのではなく、持続させて新しいステップ になるように様々な市場創造をする必要がある。

以上

金融緩和アベノミクス出口マンションバブル