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主宰:川津商事株式会社
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インスタグラム映え

〈2017年 9月 20日〉

今年の基準値が公表された。全国的なトレンドは金融緩和による大 型開発、大型ショッピングセンターの出店が、大きく地価に与える 影響がまだ有効に機能している。つまりまだバブルのピークにはな っておらず市場は機能しているが、それはあくまで金融緩和による ものでしかない。

今回の新聞の論調に苦言を呈したい。名古屋の大手地元紙の地価に関する論調 はいかがなものか?はっきり言って前回の地価公示、昨年の基準値 の記事と代わり映えしない論調だ。いったいいつの話?どんな都市 のトレンドが見えているのか伝わってこない。

読売、日経は名古屋駅前(平米1500万円)が全国の地価のトップテン に食い込んだこと、これが大阪のグランフロントを抜いた事(平米 1460万円)。読売は名古屋の都心がようやくマンション型住環境都 市に移行するのではないかと言う論調を大きく取り上げている。

そしてインスタ映えが地価に影響をもたらしている点を論調してい る。この3つは非常にインパクトのある論調だ。地価は市場のベー スを普遍化したものだ。市場のトレンドを説明できることに地価を 論調する社会的意義がある。地価経済の重要さを甘く見過ぎだ。

前回の「Amazonの勢いが止まらない」では、市場の「場」の上で行 われる「市」で成り立つ商いが収益構造を起こしているという内容 であった。そこでどんなトレンドが生じているのか?これが見えて こなければ地価を取り上げる必要は全くない。

今収益構造を起こしているのが流通業であった。百貨店ビジネスは 明らかに2分化している。その一つがGINZASIXに象徴される大丸 松坂屋の不動産ビジネス化である。そしてもう一つが伊勢丹三越、 高島屋に象徴される流通業の深化である。もちろん高島屋も名古屋 駅前に見られるようにモールビジネスを展開している。伊勢丹三越 も栄でラシックを展開し、成功を収めている。

百貨店だけでなく、薄利多売の本来不動産賃料の高いスペースでの ビジネスに向かないはずのスーパーも、イオンモール等を展開して 外から都心部にアプローチしだした。これらモールビジネスが不動 産ビジネス化である。

そもそも我々不動産ビジネスから見れば、百貨店の流通ビジネス自 体、昔からスペースを開発してアパレル業者にそこで商売をさせる 不動産ビジネスの延長にあってという見方がある。

流通業と不動産ビジネスの線引きは、その収益の構造にある。流通 業は商品を仕入れてそれを売りその差額が利益となる。不動産ビジ ネスはテナント料が収益となる。しかし百貨店の場合、問屋などの 通業の売上ビジネスの収益構造と少し違う。

百貨店は昔ながらの「消化仕入れ」、つまり売り場に陳列してある商 品は仕入れ業者の商品であるが、売れた時点でその売れた商品を百 貨店が仕入れて百貨店の売り上げを立てるビジネスモデルである。 ただしこの消化仕入れと言う言葉はイメージが悪く百貨店はじめ流 通業では使われていない。しかしこの形態から派生した様々なモデ ルが広く行われている。

百貨店がテナントから賃料をとる不動産ビジ場合も、様々なモデル がある。その日の売り上げをすべていったん百貨店が受け取り、そ こから賃料と販売管理費を差し引いた残りをテナントに支払われる。 いずれにして昔から踏襲されてきている流通業の様々なビジネスモ デルが、今、定期借家方式の不動産ビジネス化に移行しつつある。 これがいわゆる「百貨店のSC化」と呼ばれる現象である。

もちろん流通業のこのような動きは、単に消費が縮小しただけでな く、今後のAmazonなどのネットビジネスの隆盛に対処するためで もある。前回でも取り上げたがネットとリアル店舗において、唯一 リアル店舗がアドバンテージを持っているのが実装ビジネスである。

実際に触ってみないと、着てみないと、試してみないと買えない分 野だ。しかし現実には、実装ビジネスのビジネスモデルが倒れ始め ている。例えばおもちゃのトイザらスだ。店舗で楽しみながら購入 するおもちゃでさえ歯が立たない。

ネットビジネスがいろんな工夫で、実装ビジネスの牙城を壊し始め ている。「場所代経費のかからないネットビジネスの儲けを、系列の 実装ビジネスに投入されたら歯が立たない。」これが流通業の精通者 の本音だ。

更にネットビジネスの脅威は新たに「インスタグラム映えする」市 場を拡大し続けている。ネットビジネスが拡大すればするほど、実 装しなくてはわからない商品市場は縮小しつづけ、写真・口コミに よって商品の良さが映え、誇張される商品市場が拡大し続けている。

その端的な例がスイートだ。チョコレート、ケーキ、お菓子などが ネット上に氾濫し、それに伴い百貨店でも昔ながらの物産展よりス イーツ展が大成功している。高島屋が行うバレンタインデーのチョ コレートフェアーの売り上げは脅威としか言えない。

「最近の若い子は携帯電話にお金を使ってしまうから、何も買わな い。その結果、物が売れずデフレ経済になる。」と言う言い訳をしば しば聞く。結果的にはそうかもしれないが、この市場現象の本質を 見誤ると大きな間違いを起こす。

ネット社会のフェースブック、インスタグラムでつながったコミュ ニティにおいて、インスタ映えする商品、ネット上で「いいね」を 獲得する商品は、実際に食べているグルメ、旅行、釣り登山などの 趣味、スポーツ等の習得、ペット産業等ばかりだ。かわいい猫の写 真はインスタ映えの最右翼だ。

その結果今成長している市場も、このインスタ映えするグルメ、旅 行、スポーツ、習い事ばかりだ。人気のレストランは予約が取れず、 旅行はみんなで行く団体ではなく、自分だけの写真が撮れる個人旅 行・家族旅行が多くなり、山登りは大混雑、釣りのポイントも人だ らけ、デフレ経済でも何十万円する子猫、子犬が飛ぶように売れて いる。パンケーキ等昔から代わり映えがしなくても、色鮮やかな写 真になりやすいスイーツ等が市場を伸ばしている。

先ごろ名古屋の高島屋でも、楽天のリアル市が開催されていたが、 名古屋駅前が車で大渋滞するくらいの大賑わいであるが、ほとんど がグルメ、スイーツ系の商品だ。北海道物産展の競争相手が正に楽 天フェアーだ。

一方インスタ映えしない商品は市場を縮小している。個性がない自 動車市場は販売を落とし、シェア市場化してしまった。昔のデコレ ートしたトラックヤロー的な趣味でも流行らない限りマイカーがイ ンスタに登場することはないだろう。「私の車」と言ってFB・イン スタに車が登場するのを見たことがない。インスタに登場しない商 品は市場を縮小するばかりだ。

インスタ映えしないものは、例え高級ブランドファッションであっ ても成長は見込まれない。過酷な現実である。口コミ、写真で理解 できないものは、どんなに多額の投資をして商品開発しても、巨額 のお金を投資して再開発した都心でも瞬殺されてしまう。

そもそも、インスタ映えしない商品の企業の社員は、FB・インスタ を使っていない。使うことを企業文化が認めようとしない。と言っ てしまうと間違いだろうか?こういった企業のおじさん理論が「最 近の若者は携帯電話にお金がかかり物を買わない」となるのだろう。

今回の結論を急げば、つまり大都市の中心市街地、あるいはブラン ドストリートといえども、インスタ映えしなければ成長を見込めな いという点だ。インスタ映えするような街並み、雰囲気、インスタ ポイントがない商業エリアは衰退するということだ。

「名古屋に行ってきました」「栄に行ってきました」「今大津通で噂 のスイーツを食べています」と言って、その写真をインスタに乗せ る魅力があるか?これがなけれが不動産ビジネスも縮小してしまう。

以上

Amazonインスタグラム中心市街地市場流通業FB 地価基準値