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主宰:川津商事株式会社
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不動産ビジネスのコモディティ化

〈2017年 9月 1日〉

大手新聞が一斉に、リートなどの不動産投資市場をバブルだと言い 出した。その根拠に違和感を感じる。リートの物件取得価格が鑑定 評価の何倍もしているというものだ。収益ではなく、いまさら路線 評価と言う鑑定価格を持ち出している点に無理がある。筆者は鑑定 価格を否定しているのではない。日本の鑑定価格は最もベーシック で、そのトラフィックは信頼できるライブラリーと考えている。

しかし、そもそも市場の最もホットな最先端の資産価格と、市場か らあらゆるバイアスを取り除いた平準化した鑑定価格をいまさら比 較しても意味がないはずだ。バブルで危険な水域にあること自体は 筆者も同感である。

しかしこの根拠でバブル感を一斉に垂れ流す状況には、何らかの背 景を感じる。やがて来るバブル処理において資産価格を押し上げて しまったことに対する責任回避か?

日経MJ(8/23)で取り上げられた、RIZAP(ライザップ)関連 の記事から新しいビジネスモデルの可能性を議論してみたい。RI ZAPと言えば、ある意味、旬を過ぎた緩んだ体形のタレントを使 い、ダイエット成功という非対称的な情報をTVで大量に垂れ流す ちょっと胡散臭いビジネスモデルと言うイメージある。

しかし現在、ダイエットだけでなくゴルフ分野にも営業を拡大し、 様々な分野で企業買収的成長を繰り広げている。今回の日経MJで もその成長を評価している。詳しくは新聞を見ていただきたいが、 コミットメントする商法で、コモディティ化しないビジネスを行っ ているという表現を使って紹介している。

ダイエットのノウハウ、ゴルフのノウハウビジネスは、ネットを開 ければありふれている。コストフリーから個人指導まで多種多彩で ある。消費者はそれをほぼ無尽蔵に代替的に選ぶことができる。つ まりスーパの陳列棚に並んだ商品のように好き勝手にチョイスでき るわけだ。並んでいる商品は差別化が少なく、価格競争しか戦略が なくなってしまっている。

これがここ10年位前から言われ続けている商品のコモディティ化 である。コモディティ化にしてしまったのがある意味ネット社会の IT技術などである。IT技術は本来市場で探すことがむつかしかっ た、少品種の差別化した商品を大量にネット上に陳列した。その結 果差別化を平準化してしまった。つまり付加価値のない陳列商品化 (コモディティ化)してしまったのである。

そしてコモディティ化がデフレ経済の原因でもあることが、最近指 摘されてきたわけだ。このコモディティ化は市場経済効率化のダー クサイドの効果である。そこで、このような悪い効果のコモディテ ィ化を阻止するビジネスモデルが求められるわけだ。極端なことを 言えばサービス付加価値の反対語がコモディティ化である。

コモディティ化は家電商品などの商品だけでなく、金融商品でも言 われている。金融機関がリスクをと要らなくなった結果、融資など がコモディティ化して金利競争しか戦略がなくなってしまった例な ども挙げられる。

RIZAPは、結果にコミットメントする商法であろう。しかし記 事の中で社長が、「ゴルフの下手な人をうまくさせるサービス業では ない」と紹介している。うまくなるためにはそれなりの事をしても らわなくてはならない。それを消費者にも要求するとしている。こ のような要求をサービスとして「見える化」して、他の商品では代 替できない固有の商品となり、売り上げを伸ばしていることが理解 できる。

さて、不動産市場においても、すでに数年前に賃料(地代)のコモ ディティ化が言われてきた。ある学会で川口有一郎先生が不動産経 済のマクロデータを用いて、賃料がなかなか市場原理どおりに上昇 しない点から、賃料のコモディティ化の懸念がある指摘している。

現在遅まきながら、不動産投資市場にもIT技術による新しいビジ ネスモデルが登場してようとしている。すでに物件検索は不動産屋 の仕事ではなくサーチエンジンの仕事である。ユーザーはどの不動 産屋を選ぶかの前にどのサーチエンジンを選ぶか?から始まる。

数年のうちにはネット上のやり取りで賃貸契約、重要事項の説明等 が可能になる。賃貸だけでなく、空き家対策、過剰不動産などの対 策としてネットによる情報公開に進もうとしている。これらは閉塞 感のある今の不動産投資市場を活性化させる有力なビジネス革新で ある。

しかし明らかに、その先にあるものは不動産ビジネスのコモディテ ィ化である。つまりサービスの差別化がなくなり、どの商品も似た り寄ったりで魅力がなくなり、その結果そういった商品(不動産資 産)自体売れなくなるデフレ市場化である。

現状の不動産投資市場を俯瞰すると、既にその兆候は見えている。 まず仲介ビジネスである。仲介における様々な契約リスクがすべて 宅建業者負担となってしまっている。あとから何か瑕疵が出てきた り、買い主にとっての不都合が出てくると、なぜそれが未然に防げ なかったのか、宅建業者が善管注意義務を果たしたのか?となる。

裁判になると、白黒つけるのではなく、ほとんどが調停で和解しろ が現代の日本の司法姿勢である。多くの仲介業者はリスクを嫌い余 分なことは何もしなくなる。サービスの平準化である。大手不動産 業者の統一契約フォームを見ると明らかに、消費者保護ではなく業 者保身のための条項ばかりで統一され、とがったサービスは全く見 られない。

小さな弱小不動産屋が、果敢にリスクを冒してサービスを提供しよ うとするモチベーションが極めて低いのが、現在の不動産市場であ る。その結果が空き家率13%以上と言われる不動産資産市場の現状 である。空き家はすべて資産ではなくコモディティになりしかも劣 悪品質の悪い商品になってしまっている。これは異常なことではな くき、きわめて合理的な市場原理である。

話をRIZAPに戻せば、おそらくこの先しばらく「コミットメン ト商法」の追随が始まるのではないか?

以上

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