ニュースレター

主宰:川津商事株式会社
名古屋の不動産何でも相談室がお送りする、不動産・ビジネスに関するニュースレター「名古屋ビジネス情報」へのご登録ありがとうございます。
不動産にとどまらず、名古屋のビジネス情報、街づくり話題、不動産経済に関するニュース、物件情報など時代の変遷とともに広くお伝えしています。

ブロックチェーンと天空率と不動産

〈2017年 8月 1日〉

名古屋の栄の住吉界隈、土曜日の夜遅く。多くの人出がある。 朝まで遊ぶ若い人たちらしい。だからタクシーにも乗らない。ゲ ームもしない人たちだ。名古屋駅には見られないエネルギーだ。

今回は今金融フィンテックで話題となっているブロックチェーンと 不動産に関係する論文と、天空率と言う考え方を紹介する、日本不 動産学会誌(120号)の特集論文二つを紹介(要約と所見)します。

1.「ブロックチェーンを用いた新しい不動産登記システムの可能性 (2017)北島隆次」 ブロックチェーンとはビットコインなど金融フィンテックによく登 場する言葉である。ちょうど直近の新聞報道でビットコインの内紛 が話題となっている。野口悠紀雄氏がすかさずビットコインの信頼 を揺るがすものではないと反論をしている。論文もまずこのブロッ クチェーンの説明から始まる。

ブロックチェーンはサトシ・ナカモトと言う正体が明かされていな い人物による2008年の論文からスタートしたビジネスモデルだ。 簡単に言ってしまうと、それぞれの取引などの事象を一つ一つ各ブ ロックとして、そのブロックを時系列でどんどんつなげて一つのチ ェーンにしてしまう発想である。

だれがいついくらでビットコインを買った、売ったという取引行為 を一つの事象としてブロックと記憶する。そしてその次の誰かの取 引行為が次のブロックに書き込まれて記録される。この記録が時系 列でつながることによってその記録性が担保される。

金融で最も大きな信用を要するのが、記録の証明である。銀行との 取引でいくら預金からお金をいつ引き下ろした、預金したという記 録が銀行の信用システムによって担保されている。たとえ通帳をな くしても、銀行が保証してくれるわけだ。

これが、違法に書き直されて勝手に預金が引き抜かれている行為が ハッキング行為である。現在、このハッキング事件対策では、書き 換えられないようにするのではなく、書き換えることは可能である から、記録に侵入されないようにパスワードと言うカギによって厳 重に管理する手法がとられている。

このブロックチェーンは一つのブロックに書き込まれた、取引に基 づき、その次の取引が次のブロックに記入される。これはハッキン グしようとすると、ある過去の一つのブロックを書き換えるために、 それ以降のチェーンでつながった取引すべてを書き換えなくてはな らず、それは事実上不可能であると言われている。そこにこのブロ ックチェーンの信頼性が担保されている。

この論文ではこの信頼性ある記録方式を、不動産登記簿に利用でき ないかと言う可能性を論じている。不動産登記制度がそもそも何の ためにあるかと言えば、取引行為があった日時、原因、当事者関係 を公的な文章に記録することで、その取引の記録性を第三者に証明 するためのものである。

ITによるデータ化が進む中で、もし言われているように信頼性の高 い記録性を持つのであれば、不動産登記システムにも応用できるの ではないかと言う可能性を論じたものである。

大手メガバンクが、このブロックチェーンに多額の投資を行い、新 しい金融フィンテックのビジネスモデルを開発しようと競争してい る。新しいビジネスモデルによって、不動産ビジネスにも革新が訪 れることは決して悪いことではない。

2.「Googleストリートビューを用いた天空システムの提案(2017) 西尾尚子 伊藤史子」 天空率と言う概念が登場する。天空率とは、簡単に言ってしまうと プラネタリュームのドーム天井空間のように、魚眼レンズでその地 域を見た場合に登場する何もない空空間と、地上の建物空間の割合 である。

極端な例では言えば、ニューヨークマンハッタンの摩天楼の真ん中 の6番街と42ストリートの交差点において、魚眼レンズで天空を とれば、摩天楼が空を覆い隠し天空率が低くなるわけだ。

我々は従来から容積率と言う概念で、空中の不動産スペース密度を 制御してきた。しかし容積率の実効率は、全体の平均で把握されて いるだけで、ピンポイントで利用することはなかなかむつかしかっ た。これはGoogleのストリートビューを使えば、ピンポイントで使 うことができるという提案の論文である。

これもIT技術を使った、不動産ビジネスの革新的進化である。しか しITによれば何でもできてしまうという力、企画力だけで期待を 膨らまかしてしまう。それがほとんど実行されず終わるのがITバ ブルである。しかし、しかしのしかしであるが、IT技術によるビッ クデータ、AIによって、周りの景色が一変してしまう現実がどんど んやってきているのも事実である。

以上

不動産テックビックデータブロックチェーン不動産登記システム天空率容積率