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主宰:川津商事株式会社
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次のモータリゼーション

〈2017年 7月 10日〉

皆さんのタブレットにはどんな商品PRがプッシュアウトされてい るでしょうか?Amazonがリコメンデーションエンジンを使い、皆さ んの検索・購入履歴に基づき、ビックデータによるAIを使い、PR商 品の情報、特価セール情報などを大量に流してくる。AI初期の実例 である。

最近筆者のパソコンに流れてくるAmazonのおすすめが、拙著「いま さら誰にも聞けないプロのための不動産利回り(清文社)」である。 最近、皆さんが購入しています。あなたもご興味ありそうな分野で あるから、買ってはどうですか?と言ったところか。笑ってしまう が、送ってはいけない決定的な間違いだ。

自分の拙著であるから笑いごとで済まされるが、もし重大な何かの 差別被害者に差別元関連の情報をプッシュアウトしたらどうなるだ ろうか?絶対あってはならない間違いだ。差別の被害者と加害者は データーカテゴリーでは同じになる。AIの決定的な間違いだ。

AIがまだ初期だから許されるかもしれないが、起きてはいけない決 定的な間違いをAIが起こした時、誰がそれを止められるのか?同 じ事例として、独裁国家にもメリットもあるが、独裁国家が許され ない理由は、間違いがあった時だれも止められないことである。以 上前置き。

近い将来、AIによってシンギュラリティ─が現れることが現実化し ている中で、いよいよ新しいモータリゼーションが来ようとしてい る。中国がハイブリッドを飛ばして電気自動車に舵を切り、フラン スが石油自動車を2040年までに禁止することを告知しだした。

新しいモータリゼーションがいよいよタイムテーブルに乗り出した わけだ。今回は「モータリゼーション」とはどういうものであった か議論したい。

自動車の需要がGDPと相関しているとか、逆に自動車のコモディテ ィ化がデフレと相関しているとか、いろんな意味で自動車自体が現 代の重要な指標となっている。自動車はそもそもフランス人によっ て発明された。しかし自動車が社会の中で実効性を持ち始めるには モータリゼーション(車社会化)が起きなくてはならない。

アメリカで1907年フォードがT型フォードを世に出した。この車 は安いことが評価されているが、T型フォードの功績は価格だけで なく、悪路を平気で乗りこなす頑丈さであった。それまで農業従事 者は街から離れた大規模農場に居をかまえていたが、T型フォード によって都市に居をかまえる事を可能とした。

その結果多くの人が都市に移り住む都市化ブームが起きた。それは 都市の土地が高騰し都市化ブームを誘発した。都市に高層ビルが生 まれ、縦横に拡大していわゆる都市化バブルが生じた。これがアメ リカのモータリゼーションであった。アメリカはモータリゼーショ ンにより全土で経済を拡大させ、この拡大の調整こそが1920年代 末の大恐慌であった。

モータリゼーションが都市構造、都市経済に与える影響は絶大であ る。ところがヨーロッパの諸都市は中世からの建物がそのまま残り、 自動車の登場による影響を受けなかった。歴史上ヨーロッパのモー タリゼーション第二次世界大戦以降とされている。

その答えが、リスボンの馬車博物館に見ることができる。アメリカ の映画俳優ジョンウエインが西部劇で駆り立てるコンパクトな馬車 ではなく、ヨーロッパ貴族が使用する4人乗りの馬車に4頭の馬を つなげると、現代の大型観光バス以上の長さになる。

しかも、この大型馬車は馬が引くため現代の観光バスのように直角 にカーブを切ることができない。そのため大きなカーブ、曲線道路 が街のいたるところに登場する。

ヨーロッパの古都と呼ばれるパリ、ウイーン、ロンドンには直線で、 大きなRを備えた街角、ロータリーがあちらこちらにある都市構造 となった。観光で有名なウイーンのリンク市電もその名残である。 ヨーロッパの都市構造は自動車よりサイズの大きい御用馬車によっ てもたらされた馬車ゼーションであった。

さて日本のモータリゼーションはヨーロッパから遅れる事1960 年代と言われている。トヨタがトヨペットを世に送り出したのが1 950年代である。その後カローラ、サニーの大衆車が登場し高度 経済成長期三種(3C)の神器として自動車が大衆化する。小型大衆 車によるモータリゼーションが日本の都市構造を作ってきた。

高度経済成長と言われる期間に日本がどれだけ変貌したか?その痕 跡は今の日本の都市構造となっている。街角に細かい飲食店が密集 していたが、これが地上げされて銀行店舗に代り、ガソリンスタン ドが主要幹線道路上に並び、公設市場が姿を消し、都市のスプロー ル化が進んだ。

その後の自動車社会の省エネ化、少子高齢化は都心回帰を登場させ た。そして今度新たなるシンギュラリティ─・AIによって制御され 石油を使わない自動車が引き起こすモータリゼーションは、新たに 何を都市構造に要求してくるのだろうか?

電池カセットをコンビニで購入して入れ替えながら自動車を走らす のだろうか?モータリゼーション自体破壊してドローンによるアー バニゼーションがさらにその次に控えているかもしれない。話はそ れるが最近のTV画像のアングルにドローンアングルが非常に多く なってきた。グランドの動画カメラマンは皆失業するのではない か?この世界ではすでに風景が変わってしまっている。

AIはまず大量に電気を消費する。自動車も電気オンリーになれば、 電気とどう向き合うかがまず都市構造として考えなくてはならない 命題だろう。リニア整備においても最も大きなインフラが送電シス テムである。

以上

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