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主宰:川津商事株式会社
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都市経済の空気を読む

〈2017年 6月 10日〉

都市経済はマクロなデーターだけではなく、現場で実際の空気を読 まないとわからない。

NYのマンハッタンの6番街ビジネスセンター街である。朝8過ぎに なるとビジネスパースンの忙しい通勤姿を見るが、なぜかその中に おなかの大きな妊婦を複数みことができる。妊婦を排除するのでは なく受け入れる都市経済だ。そもそも「なぜか」と疑問に思うこと が間違っている。

リスボンのビジネス街を通る地下鉄ブルーラインの朝の列車内は、 圧倒的に女性が多い。新市街地の入り口のマルケス・デ・ボンバル 駅の朝の通勤風景でも足早に会社に急ぐ姿は圧倒的に女性が多い。 女性の多くが職に就いている都市経済だ。現場をじかに見てみない とわからない都市経済の空気だ。

前々回号で不動産市場の実効性の概念を紹介した。現実に名古屋駅 前で考えなくてはならない状況が生まれている。そもそも2000年 にJR東海のセントラルタワーズができてからミッドランドができ、 ルーセントができ、大名古屋ビルヂングができ、トヨタ関連のシン フォニーができ、そしてKITTE、JRゲートタワーができ拡大し続け てきた。

これら、名古屋駅前の市場の拡大は飲食店の拡大そのものである。 その間に既存の施設例えばユニモールなどもリニューアルして一貫 して飲食店街が増え続けた。

実効性ある市場とは需要がひっ迫している市場に、供給施設を作れ ば、新たな供給がまた新たな需要を呼び込み、市場がさらに成長す る状況である。供給が実効性ある市場である。

2000年以前名古屋駅前のオフィス、飲食店街の名目上の需給関係は 必ずしもひっ迫していなかった。しかしJR東海のセントラルタワ ーズができてから、供給が需要を新たに創出し一転して需給関係が ひっ迫しだした。それがその後のミットランド、名古屋ビル、ルー セント、・・・大型プロジェクトを呼び込んだ。これは30年間新し いビル施設が一つも登場していなかった駅前であったからだ。

しかしここへきて一連の最終章であるJRゲートタワーが登場して 明らかな過剰感が出始めている。名古屋駅前にここ5年ぐらいの間 に登場した飲食店で、特に名古屋駅前のリピートが期待できるビジ ネスパースンでない、非日常的な来訪者だけでにぎわっていた飲食 店はブームが去りつつあるわけだ。

それまで、連日行列ができていた飲食店が、12時30分過ぎになる と閑散としてしまい飲食店の入り口に、店員が立って呼び込みを行 う姿が見え始めた。供給過多によるパイの取り合いである。懸念す るのは、本来飲食店で競争が始まれば価格調整機能が働くが、人件 費の高騰でそれができないと撤退と言うことにもなりかねない。

新聞ではレゴランドと抱き合わせの商業施設の期待外れを報道して いるが、市場の末端の出来事は、単なるそれだけではなくその大き な市場全体のトレンドでもある。つまり単なる商業施設と言う一施 設の問題ではなく、名古屋駅前エリア、名古屋市場のこれまでの拡 大の調整の予兆であるかもしれないわけだ。

ただ名古屋駅前についていえば、急拡大による混乱はゆがめないが、 これから周辺エリアとの玉突き調整が始まり、実際落ち着くのはま だ先だという考え方もある。ブームにとらわれずに時間をかけて安 定すればよいわけだ。

しかし、もっと言えば名古屋市場も日本全体の末端でしかない。こ の名古屋駅前エリアの変調が、日本全体の市場のトレンドを示して いるかもしれない。過去の経験即から「名古屋の逃げ足は速い」と 言う言葉がある。かつて2007年のリーマンショックの時、名古 屋の百貨店がいち早く売り上げを落とした。この時の言葉である。

考えてみれば、2012年に安倍政権が登場してからアベノミクス の躍進はすでに50か月を過ぎ、戦後第3番目の好景気に突入して いる。現在株価をはじめ日本の市場は極めて安定はしているが、そ れこそ均衡状態になっている警笛かもしれない。

経済理論では均衡は停滞を意味する。政局もスキャンダルがらみに なり停滞し始め新しい動きがみられない。グローバル市場もテロの 影響で様子見の状態である。当初から予定されたオリンピック前の 不景気が来るかもしれない。

もし来たとしてもそれはそれで想定内と言うことになり、慌てる必 要はない。政治的なスタンドプレーしか聞こえてこなかったオリン ピックもそろそろ槌の音が聞こえてきそうだ。今からいったん調整 に入り、開催直前に上向き始めればいいわけだ・・・。しかししば らく市場の空気を注視しよう。

追記:名古屋駅前の主たる機能はターミナル機能である。したがっ て飲食文化もビジネスマン通勤客の日常的な定食文化が主流であっ た。これに対し栄エリアは非日常的なエンターテイメントな贅沢な 食文化を持っている。名古屋駅前が量的な売り上げだけでなく、こ う言った質的な面でも栄に追いつけるか?が、今後の名古屋駅前市 場の成長の課題だろう。

食文化の評価の低い名古屋、奈良は観光地としても評価が低い。食 文化はそのエリアの評価に非常に大きな影響を与える。

以上

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