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「第9回名古屋不動産投資市場に関する調査」報告会

〈2017年 4月 20日〉

過日、名古屋で恒例となってきた「名古屋不動産投資市場に関する 調査」の報告会が開催されました。今回感じたことをかいつまんで ご報告します。

恒例の松原孝文(愛知県不動産鑑定士協会副会長)氏の報告にます ます信頼感が増してきた。今回の報告でスピーカーが強調していた のが、名古屋の投資と東京の投資家の名古屋市場の見方のギャップ である。

そしてこの問題がそのまま、後半のゲストスピーカーであるCBREの 大久保氏の報告で裏付けられる形となり、整合性があり説得力があ った。

名古屋の投資家は、名古屋市場をそろそろバブルの過熱感が出てお り、ピークを打ち今後の見通しは必ずしも上値を探しに行く状態で はないという制約的な調査結果であった。それに対して名古屋以外 の東京の投資家は、名古屋市場に対しまだ楽観的な見方をし、これ からだろうという調査結果である。

これを受けて、ゲストスピーカーの話を総括すると、東京でも今後 今の基調が続くと思われるが、一方でがかなりバブル化して物件価 格も高値で一巡しており、これをさらに大きく上値を探しに行くよ うな格段の要素はない。それから比べると地方都市はまだ見劣りし 成長の余地がある。これからが出番だという見解だ。

東京で、一部行き場を失ったリスクマネーが新たに、地方で投資機 会を探り出すということだろう。これが名古屋の投資家と外部の投 資家の意識のギャップと言う形で出ているようだ。

このような東京と地方のギャップは、景気の過熱時にはしばしばみ られる現象であり、今まさにそのようなステージになったことを意 味しているわけだ。

もう一つ気になったことを取り上げておく。東京などの市場調査で は見られない、この調査特徴でもあるパブリックコメントの中に、 「名駅以外のエリアの底上げが必要」「インバウンドを引き込むには 魅力的な立地のはず。ラグジュアリー店舗が出店するエリアは、東 京・大阪に見劣りするので、ブランディングが必要」といのがあっ た。この意見は名古屋外部の投資家意見である。

この指摘は、まず、市場をいつまでもファンダメンタルズに頼って はいけないよ。名古屋もマーケティングで市場を作らなくてならな いよと言う指摘である。そして、名駅だけではだめだよ、選択肢が なくては駄目だよと言う指摘である。

と言うと名古屋の人は「栄」のことを言ってるのだろうと早合点す る人があろう。しかしこれは栄エリアの再興隆を求めているのでは ない。名古屋駅前と同じような隆盛を求めているのでもない。名古 屋駅前と同じ勢いのものを名古屋の小さな市場でいくつも求めるこ とは、無理な話である。

そうではなく、もっとピンポイントで明確なエリアの情報がないこ とを意味している。栄と言う言葉のイメージは、東京で言えば渋谷、 新宿と言った広域エリアである。大阪で言えば例えばミニミと言っ たところだ。エリアごとのアイデンティティが見えてこない。

マーケティングのブランディングは、漠然とした領域の不明確な拡 散してしまう広範なエリアを対象とはしない。明確な領域、核があ り強い求心力があり、その商業的魅力は時に他に対して暴力的な排 他性をしめす。

広範な属性が違った寄せ集めが、おんぶに抱っこで肩を寄せ合う烏 合の衆はブランドになりえない。栄1丁目から5丁目までの区別が つかないナンバーリングではなく、区別がつく通り名などで、名古屋のエ リアブランドの再構築が必要になろう。

栄は昔から言われていることだ、どこまでが栄エリアブランドか? 栄エリアすべてが、南大津通、松坂屋、三越に群がろうとしている。 独自のアイデンティティがないところにブランディングもなされる ことはない。これがすべての他のエリアにも共通してしまっている。

最近名古屋の都市構造は、名古屋駅前エリアだけが成長しその高層 ビル群はガリバー化し、帝都型の都市構造となりつつある。名古屋 駅前以外が明らかに埋没してしまっている。今回の報告でも「金山 のことを知らないのではないか?」と言うスピーカーの発言があっ た。知らないのだろう。

各エリアがもっとアイデンティティを前面に出したわがまま宣言が 必要になるわけだ。そして我々も栄、あるいは金山、大須という呼 称ですべてひとくくりするのではなく、もっと精緻にセグメント化 する必要がある。

中日ビルの再開発を栄の中のほんの一角としてするのか、栄を捨て て南大津通のような独自のアイデンティティを確立するのかの違い である。

この調査報告そのものも同じことが言える。この調査が今後東京へ の強い情報発信になるために「より有益な情報をもっと多く集めて 精度を高めたい」だけではだめなわけだ。いいものを作っていれば 必ず道は開ける。これがモノづくりの神髄であるという、前時代的 なものづくり至上主義と同じである。

例えば名古屋インベストメントリサーチ(NIR)などの命名をしてそ のアイデンティティを確立し、ブランド化し、様々なPRを行うこと が結果的に名古屋市場の情報発信になる。ブランディング自体は価 値がないが、それによって本質的な信頼性がエンハンスされて、市 場の名目的な信頼が醸し出されるのである。

以上

名古屋不動産投資家調査ブランディング/em>、