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スポーツマーケティング

〈2017年 3月 25日〉

先般、マーケティング学会で,ある関係者の発言である。「アルノーが 日本の時計を欲しがっていた。」これが何を意味するか?これこそが マーケティングである。

新聞報道によると、栄の久屋大通公園の再開発の目玉の一つにアリ ーナ整備が上がっている。2026年愛知県・名古屋市で開催されるア ジア大会に合わせて多目的アリーナ構想が急浮上した。久屋大通に 関して言えば古くから何度もその有効なデザインが検討されてきた。

下記に主な関連の調査報告を上げてみたが、特に、行政が考えるプ ランなどは、プランとして見ると良くできていると思う。しかし実 際に行ってみるとそのように見えない。やたら構造物が多く透過性 がなく、一体感が感じられない。
名古屋市の調査
http://www.mlit.go.jp/common/001096838.pdf
若宮大通の野宿者の排除のためのスポーツ施設
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsss/21/1/21_85/_pdf
都市センターの構想
http://www.nup.or.jp/nui/user/media/document/investigation/h24/108.pdf

久屋大通の再開発は別の機会で議論するとして、表題のスポーツマ ーケティングについて考えてみたい。「スポーツマーケティング」と 言う言葉は、特に2020年の東京オリンピックに向けて頻繁に見か ける言葉である。実際に日本マーケティング学会の中にもスポーツ マーケティング研究会が立ち上がっており、マーケティングという 科学的研究がなされていることも事実である。

それとは別に、今、社会・市場でスポーツに対してどのような認知、 ニーズがあるか見てみると、実際のスポーツ競技をする人およびそ の場、プロ野球・Jリーグなど観戦ビジネス、市民マラソンなど町 おこし・都市戦略、健康スポーツによる高齢化対策など実に広く大 きな期待が寄せられている。

これらの社会ニーズを考えてみると、スポーツマーケティングはと てつもなく大きな市場と言える。

スポーツマーケティングの構造は、早稲田大学の原田宗彦教授(Jリ ーグ理事)の研究を引用すると、次のような構造になる。まず1コ アの実際の競技者のための市場である。このコア部分には選手・技 術・アパレル・用具・ルール・ベニュー(競技場)で構成される。 その周りにマスコット・チケット・統計データ・音楽映像・ビデオ・ プログラム関連の2レイヤーが出来上がる。

さらにこのレイヤーを構成する要素がそれぞれの市場であるとか、 都市、そして社会との3関係性を広げていくことになる。ただ現実 にスポーツマーケティングとして具体的把握されているレベルは、 原田教授の研究を見る限り、競技者レベルコアの部分から、その周 りのレイヤーの中でもチケットとか映像など限られた分野でしかな いように見かけられる。

具体的に言うとプロ野球市場、Jリーグ市場、最近のバスケットプ ロリーグ、その他実業団スポーツが実践している市場までである。

そのほかの市民マラソンなどによる都市戦略・街づくり、あるいは 健康スポーツのレベルに至っては、マーケティングのレベルには至 っておらず、スポーツとは関係のない門外漢の行政、医療の関係者 が手探りで行っているのが実態であろう。もちろん東京の市民マラ ソンのように高度に専門化した分野もある。

以前日本不動産学会ででもオリンピック関連のシンポジウムを開催 した折に、スポーツ界からの識者が、「今後街づくりの中心概念とし てスポーツをする人と、参加する人の使い勝手となる」と発言して いた。これは上記3の関連性の出来不出来が都市戦略を左右すると いう意味になる。

マーケティングとして冒頭の久屋大通に整備が検討されているアリ ーナを考えると、例えばあくまで例えばとして、若宮大通沿いに市 民用のテニスコート整備し、その頂点にセンターコートをアリーナ に設置すると考えてみよう。

アリーナは1のコアの施設である。そしてその周辺に2の関連施設 が整備される必要がある。スポーツバー、関連グッズショップ、パ ブリックビューイング広場などである。そしてそれにアクセスする ための様々なインフラが3となる。このような整備がマーケティン グを実現し、市場を作り出すわけだ。

最後に筆者の独断的な感じで、お叱りを受ける前提で明記すると、 マーケティングを取り入れようとしておられる研究者とは別に、多 くの1に所属する人たちは、これまでの体育会系の世界にいた人た ちである。上下関係・先輩後輩関係のムラ社会を形成しており、安 易に外部から参入できる世界とは思えない。この人たちと新たな市 場参入者とはなかなか相入れないところがある。

どんな商品でもマーケティングは、その市場が理論的で参入障壁が 低く、仕組みがだれにもわかりやすく高度に見える化が進んだ世界 である。それゆえ市場参入者が多く活性化されている。スポーツマ ーケティングの黎明には、まだまだ乗り越えなくてはならないハー ドルが多い。市民マラソンなどの主催者の中に、1のコア以外の関 係者がいる分野の発展は著しい。コアの関係者が中心のスポーツは 内部不祥事などが頻繁にみられる。これが今のスポーツマーケティ ングの現実だろう。

以上

東京オリンピックポーツマーケティング久屋大通/em>、 アジア大会