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主宰:川津商事株式会社
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不動産経済教室3 −ターミナルキャップレート‐

〈2016年 11月 20日〉

先般車ディーラーの営業マンに投げかけてみた。自動運転車が登場 するとゴルフ会員権が高くならないかなと。運転に自信がなくなり ゴルフをやめて老人がこぞってゴルフを再開すると、ゴルフブーム が起きないかということだ。私もボタン一つでどこへでも自動運転 して行ける時代を謳歌したいと思っている。

営業マンに曰く、現在自動運転車は2020年ごろのめどがたってい るが、ボタン一つで目的地まで行く車ではないそうだ。そのために は様々なインフラが必要になるらしい。でも民間でも地方自治体で も、採算が合うと考えれば、そんなインフラ簡単に整備できてしま うのではないか?

さて、シリーズで地価を考えている。土地の市場価格の議論の起点 は、収益還元法による市場均衡の登場からである。1990年大のバブ ル崩壊以降収益還元法の登場により、収益で説明できる範囲でしか リスク資産が変動しなくなり、地価もその影響を受け市場に均衡と いう規律が生まれると考えられた。

均衡という概念は、特に欧米では歴史カルチャーを超越した非常に 重要な概念である。古代ギリシャ時代から精神と肉体のバランス(均 衡)が求められた。均衡は英語でEquilibrium(イクイバリューム) である。フランス国家に込められたフランスの思想トリコロールの 平等は?galit?である。ラテン語の平等Aequalitasが財務バラン スシートのEquity(エクイティ)の語源と言われている。エクイテ ィとは資本である。

しかし現実を見ると必ずしも規律がある市場とは思えない現状であ る。オリンピック投資による東京のバブル。格差社会による市場の 失敗。つまり均衡しない市場である。あるいは規制緩和、金融緩和 による市場のダイナミズムもある。以上がこれまでの議論であった。

前回の議論の中でターミナルキャップレートによる市場均衡の喪失 があった。これを今回取り上げたい。この議論をするときしばしば 混乱を招くのは利回りの概念だ。結論から言うと実際の実務で利回 りを使ったことがない人はキャップレートと投資家利回りの違いは 理解できていない点である。

収益還元法は具体的にはDCF(ディスカウントキャッシュフロー) と呼ばれる投資から得るキャッシュフローを現在価値にディスカウ ントしたNPVによって評価される。一般的に投資家利回りと呼ばれ るものだ。この投資家利回りは、家賃収益利回りのインカムゲイン 率とは違う。

DCFはわかりやすく言えば、ある金額の投資をしてリスク資産を購 入しました。その資産を運用して一定期間利益を得ました。そして その期間終了後その資産を売却して、一連の投資を手じまいしまし た。さてその結果いくら手元に残ったでしょうか?という算数式で ある。DCFの結果一連の投資行為の利回りが内部収益率IRRである。

このDCFで使われるのがキャップレートとターミナルキャップレー トである。そして市場に規律をももたらすようになってきた変数が 利回りであが、この利回りはキャップレートなのか、投資家利回り なのかまだまだ混乱している。今回取りあげたい結論は投資家利回 りは、このターミナルキャップレートの設定次第でどうにでも操作 できることだ。ターミナルキャップレートの規律の問題である。

ターミナルキャップレートは投資の出口評価の戦略であり、いくら で売るか?という指標だ。問題はこのターミナルキャップレートの 認知が低く、市場に規律があるかどうかということだ。ターミナル キャップレートはDCFを実際に使っている人でも、せいぜいキャッ プレートの100-50bp低いくらいじゃないの?といった認識だ。

アメリカの投資ビジネスの中心は、いかにターミナルキャップレー トをどのようにマネジメントするかである。キャップレートが多少 劣化しても、ターミナルキャップレートさえ狂わなければ投資とし ての損はしないからだ。

日本では、なかなかこのターミナルキャップレートは議論されない。 わかりやすく言えば、投資の最初から出口の戦略を立てられるかど うかである。5年先の売却価格は適当にこんなものだろうとしてし まう日本人と、このようなマネジメントにより5年後期待した価格 売ることを、この投資の前提とすると戦略を立てるのがアングロサ クソンである。

将来売却価格とはすなわち期待値であり、期待値がこのターミナル キャップレートにもりこめられるということが理解できるはずだ。 適当な日本では信頼性のない期待値がもりこめられ、アメリカでは 実効性ある信頼性の高い期待値がもりこまれることになる。その結 果どちらの利回りが信頼できるか?さらにその結果どちらの市場が 成長しているか?

何度も言うが市場では価格が信頼されなければディールは成り立た ない。筆者が知る限り日本では、ターミナルキャップレートを市場 情報インデックスとして取り上げているところも少ない。数少ない 老舗の日本不動産研究所の投資家意識調査を見てみると現在3%台 だ。

ターミナルキャップレートを使ってことがない方には理解しにくい かもしれないが、誰が何と言おうとターミナルキャップレートが 3%台になれば、明確なバブルだ。にもかかわらずお偉いエコノミス トはターミナルキャップレートに無知すぎる。

ターミナルキャップレートのデータベースどころか、使い方を知ら ない人に、ちょっとしゃれた説明すれば、どんなターミナルキャッ プレートでもまかり通るのが現在の市場に規律のなさ、信頼性のな さである。

アメリカではどのような資産でも、どのようなメンテナンスがなさ れているから市場価値がどれほどだという実効性がある。したがっ てターミナルキャプレートも自ずと規律がある。日本ではこのター ミナルキャップレートの規律がなく、市場も均衡していないことに なる。

不動産資産の投資市場では、異次元の金融緩和、規制緩和、チャイ ナマネーなどのようなグロバルな投資に対して、適正に評価された ターミナルキャップレートの規律がなければやはり投資市場は均衡 を失う。

市場が要求する評価は、市場に均衡をもたらすためのものであると 言っても過言ではない。この市場ニーズにこたえた評価手法がなけ れば市場も社会も均衡せず規律を失う。市場は成立しない。日銀政 策・財政政策がリスク資産市場と対話することもできない。また空 き家もどんどん増える一方である。

以上

地価市場均衡収益還元法均衡収益価格ターミナルキャップレート キャップレートDCFNPV