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主宰:川津商事株式会社
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不動産経済教室1−市場に均衡をもたらす地価評価−

〈2016年 11月 10日〉

いまさらながら地価を考えてみよう。我々がビジネスで使う地価は 土地の価値ではない。土地の市場価格である。通常「市場」は買い 手と売り手がいるだけでは成立しない。価格が成り立たないと市場 は成立しない。市場論ではプライシングは非常に重要な概念である。

プライシングとは具体的に言えば、その価格が信用が置けるかどう かである。信用が置けない怪しい価格が跋扈する市場は闇の市場な 打である。通常の市場でぼったくりのような価格の取引がおこなれ ると市場自体が破たんする。しかもその影響は、かつてのサブプラ イム住宅ローンの破たん、エンロン事件などその破たんは非常に大 きなものとなる。

そのために価格に対する評価が必要になる。株式市場・債券などの 金融市場では格付け機関が評価をする。この評価によって市場の信 頼性を高め市場が成立することになる。エンロン事件はこの評価が 恣意的に操作されて不正会計が行われ多くの投資家を食い物にした。

米のサブプラム住宅ローンバブルにおいても、サブプライム住宅ロ ーンを証券化した金融商品を格付けした機関が、すでにサブプライ ム住宅市場が破たんしていたにもかかわらず、格付けを適正に下げ ずにいたことが、市場の破たんを非常に大きくした。

格付け機関が格付け対象金融商品の組成会社から格付け料をもらう ため、そこには不適正な関係が生じてしまうリスクがあるわけだ。 不動産資産などのリスク資産市場にも評価は重要な機関であり、そ のために鑑定評価制度がある。当然この評価も特定のセクターの目 的に大きな影響を受けると、それは市場価格ではなくなってしまう。

ただし日本の不動産鑑定制度にはその目的が大前提となっている。 例えば相続税の算定、固定資産税の算定、あるいは様々な公的賠償 の算定などの根拠として評価がなされている。日本の不動産鑑定評 価はそれぞれ目的を達成するためには、世界に比類のない精緻な制 度である。

しかしそれを市場価格として運用してしまうと、当然市場に対して 様々なバイアスを加えてしまう。内外からこのような指摘を受け、 近年セールスリピート法による市場価格の開発が進んでいる。不動 産ファンドの上場リートの市場での売買実績をもとにした指数、あ るいは東日本レインズの実際の不動産売買価格をもとにした住宅価 格指数などである。

しかし依然として日本は土地本位制の土地経済にあり、地価経済が 優先され上記のリート指数とか住宅価格指数はまだまだ実効性は薄 い。土地の更地の価格が地価経済の中心にある。

たかが地価評価ではあるが、その歴史は日本の経済に大きな影響を もたらしてきた。日本の1990年代のバブル経済は取引事例法が主 流であった。この評価方法では買い漁れば買いあさるほど青天井で 地価が高騰し、皆が一斉に売り出せば底なしの下落をするつまり均 衡せず、とことん破たんするまで突き進む市場になってしまった。

そのバブル経済が破たんしたことにより、取引事例法から収益還元 法に変わった。この収益還元法への移行により不動産経済そしてそ の延長にある日本経済が収益で均衡する市場へと移行することにな った。日本の経済に均衡をもたらしたのである。

日本の経済エコノミストにはなかなか不動産経済に関心持ちたがら ないが、この以降こそが市場に均衡という規律をもたらすパラダイ ムチェンジとなったといっても過言ではない。

資産価格が高騰すると賃料収益率が資本コストより下がり採算が取 れなくなり高騰が止まり、資産価格が下がると資本コストを上回り 投資が生まれ下げ止まる。賃料収益で均衡する市場の登場である。 この市場の登場によって二度とバブル化はしないという有識者も登 場するほどである。

しかし市場はその通りとなっていない。現在の状況は、インバウン ド効果、オリンピック投資を丸ごと食べて東京の地価経済はバブル 以外の何物でもない。東京の地価が上がり続ける中で、地方の限界 部落では地価自体が存在しない。もっと言えば東京の都心であって も空き家が増え続けている。市場の格差拡大が均衡を阻止してしま っている。

均衡というのは、ピークまで突き進むと逆作用が生じてそれを引き 戻す機能があり、ピークと底の間に均衡ポイントが生じることであ る。しかしにもかかわらず東京の地価は上昇し続け、地方は衰退し 続け、空き家は増え続けるのはなぜか?市場に均衡をもたらすはず が、なぜ均衡しないのか?

取引事例法から収益還元法に変わった。この収益還元法への移行に より不動産経済そしてその延長にある日本経済が収益で均衡する市 場へと移行することになった。日本の経済に均衡をもたらしたので ある。

市場にはプライシングが必要であり、その価格付けを評価する手法 次第で市場は大きく様変わりするという話である。話が長くなった ので次回に回したい。

以上

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