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主宰:川津商事株式会社
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「名古屋の百貨店は景気の逃げ足が速い」

〈2016年 10月 10日〉

9月の名古屋市内の百貨店売り上げの速報値が報道された。全体で 前年比10%減である。いろんな言い訳ができるが、我々不動産業者 の碇石は「名古屋の百貨店は逃げ足が速い。」である。景気に非常に 敏感なのが名古屋の百貨店市場の特徴である。

さて、スーパーのイオンがミャンマーのヤンゴンにて現地流通の店 舗を展開する。10月4日の日経に登場した記事である。スーパーの アジア戦略が進化し始めている。

流通業には大きく分けて百貨店とスーパーがある。両方共かつてバ ブル経済の時に多くが海外戦略として特に百貨店は欧米に、スーパ ーはアジアに進出した。アジアに急展開したスーパーがキミサワ、 ヤオハンである。しかしその多くが破たんし、そのつけは日本の本 体をも破たんに導いた。破たんしたヤオハンはイオン系のMAXバリ ュと変わっていった。

流通業の世界では一般に百貨店は海外展開できるが、スーパーは海 外展開できないというのが、有識者間で言われている従来からの通 説である。これはどういうことかというと、スーパーは仕入れ流通 システムが必要になる。日本国内でも生鮮野菜を仕入れるJA、青果 市場、あるいは地域の生産者組合があって初めて成り立つビジネス モデルである。

海外に進出しても、すぐの仕入れチャネルが簡単に構築できるわけ ではない。長年の文化を共有して関係を構築して初めて、仕入れ流 通システムが出来上がる。かつてアジアに進出したヤオハン、キミ サワなどは進出しても現地の商品を仕入るチャネルを構築できず、 現地のものを売るのではなく日本の商品を輸入して現地で売ったわ けだ。そしてほどなく破たんした。

いきなり日本のビジネス文化が入ってきて、日本の商品を売り始め ても、日本商品の輸入雑貨商であって、現地の流通業としては成り 立たないわけだ。これに対して百貨店は流通システムを必要としな い。自ら仕入れるのではなくテナントが仕入れるからだ。

百貨店は現地の流通システムを持つテナントを誘致すれば簡単に現 地でビジネスが展開できる。このような百貨店は早くから、アジア を飛び越えて欧米に進出した。しかし百貨店にも欠点がある。本体 の業績が悪くなると末端の店舗をすぐに切り捨てるという体質であ る。

中国などのイオンがスーパーとして事業展開しているではないかと いわれるが、中国でオペレーションしている多くもイオンモールで ある。つまり店舗スペースをマネジメントする不動産ビジネスモデ ルである。しかしイオンも変わろうとしている。現地の消費を調達 するビジネスが構築し始めている。

今回のヤンゴンでのイオンの事業展開もそうである。トップバリュ 銘柄は80点に抑え、タイからの輸入が7割、現地の生鮮食料調達を 3割とする。海外での仕入れチャネルの再構築を目指している。流 通業のビジネスでスタートアップするわけだ。

これは日本でも同じこと行われている。イオンは自社のトップバリ ュブランドで日本全国一律に同じ商品を供給しようとした。しかし それは地域に受け入れられなかった。今では現地での商品仕入れ、 現地での商品開発に重点を、現地の裁量権を増やした経営戦略に転 換している。できないといわれてきた仕入れチャネルを構築する従 来の定説を打ち破る流通業界の再構築である。

ここで重要なことは、スーパーのビジネスモデルの本質は流通業態 である。一方百貨店のビジネスモデルの本質は不動産業である。

イオンは流通業である。そもそも流通業が規模の拡大をし続けるこ とはできない。イオンは限界を越していると考えるべきだ。その結 果不動産ビジネスへ傾倒し、最終的に末端の店舗を売りまくってい る。今新聞で話題となっている旧そごう百貨店店舗のH2Oへの売却 である。これは不動産ビジネスの百貨店がコアの業績悪化とともに 末端店舗を売る姿である。

現在モールといわれる商業施設には不動産企業系と流通企業系とが ある。この二つがリテール市場のスペースをマネジメントしている わけだ。

以上

イオン百貨店スーパーアジア戦略