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主宰:川津商事株式会社
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ソニーは本当にイノベーターだったのか?

〈2016年 10月 1日〉

何の議論もなく2026年アジア大会、愛知・名古屋誘致が決定し てしまった。まあ前向きに考えて、リニア以外に非常に大きなイベ ントが舞い降りてきたチャンスと考えよう。当ニュースレターでも、 スポーツをキーワードにしたこれからの街づくりの議論を何度も展 開してきた。今後このテーマで多くの議論がなされるであろう。

さて表題の件である。アップルが好き嫌いの話ではなくマーケティ ングの戦略として考えたい。iPhoneがまた破壊をしてくれた。 iPhone7が発売されたが今度のiPhoneはイヤホンジャックがない。 確かにワイヤレス、ネットの時代に、有線のイヤホンジャックは時 代い遅れといえば時代遅れだ。線をぶらぶらあちらこちらに引っか かりながら音楽を聴くミュージックシーンは、早晩壊されるべき領 域であったのかもしれない。

ミュージックシーンはレコードプレーヤー時代から、8トラテープ デッキ、ラジオからのエアーチェックからソニーのウォークマンが 登場して飛躍的変化した。そのおかげで、新たにアウトドアーにミ ュージックシーンが広がり、又パーソナル化した。ウォークマンを 開発したソニーは日本のイノベーションの旗頭となり、世界にソニ ーのブランドが君臨した。

その時代も、間もなくiPhoneの登場によって終焉を迎える。当時言 われたことは、iPodようなイノベーションは本来ソニーが得意とす るイノベーションではなかったのか?ソニーはいったい何をやって いたのかと言われた。しかし以後ソニーのイノベーターの姿は見ら れず、それに合わせてブランド価値もシュリンクし始めた。

ソニーの凋落とともに、日本の家電製品のコモディティ化が危惧さ れ、ジャパンアズナンバーワンが消え去った。いろんな評論家から ソニーが新しいイノベーションを起こさなくなった理由が議論され た。かつてのカリスマ経営者を失ったなどが、その顕著な理由であ った。

一方ソニーをぶっ潰したアップルは次から次へとイノべーションを 繰り返し、iPhoneに至っては現在7番目のバージョンアップとなっ ている。すでに市場ではかつての勢いを失って老いたという評価が もっぱらではあるが、いまだに元気に古いものを破壊しようとして いる。

イノベーションとは革新的進化を生み出すことであり、マーケティ ングでは「創造的破壊」と呼んでいる。もう一度この言葉をよく見 てほしい。創造的破壊は破壊が主体で創造は破壊を修飾する形容詞 に過ぎないのである。日本のガラパゴス文化ではここが誤解されて いる点である。

「既存の古いものを破壊するような革新的ないいものを作ればよい のであって、破壊が主たる目的ではない・・・。」と解釈されている。 あるいは「古いものも適当に残っていいが、新しい良いものを作れ ば消費者は必ずこちらを向いてくれる。古いものはその結果破壊さ れるに過ぎない。」。「既存のものは既存のものとして頑張り、互いが ウインウインの関係になればいい。」などなどの解釈だ。

既存のものが破壊されずに市場に残るのであれば、その残ったもの を引いた残りしか、新しいも商品の市場スペースはない。そんなこ とでは市場のチャンピョンにはなれない。既存の商品、システム、 ビジネスモデルを完膚なきまで破壊することがマーケティングでは 重要になる。破壊によって市場のすべてを占有して市場に君臨する ことで初めて革新的技術、商品、ビジネスモデルは生き残るのであ る。

日本のマーケッターはともかく、世界にマーケッターは既存の市場 を破壊しその市場に新しい商品で君臨することこそがイノベーショ ンの第一の目標である。和をもって尊しとするウインウインではな い。ウインウイン振りかざす人は組織受けするが、市場で勝者には なれない。日本の企業のリーダーが陥りやすい盲点だ。

アップルに象徴される携帯電話はコンパクトカメラ市場を破壊し、 ある意味デスクトップのPCシーンも破壊し、そしてワンセグの携 帯電話はTV受像機すら破壊した。もちろんソニーのウォークマン が作り出したミュージックシーンをも破壊し、その市場の後に新し く君臨したのである。ウインウインのような甘い考えはない。

そしてその後も既存の市場を破壊し続け、破壊した分成長し続けて きた。そして今度はイヤホンによるミュージックシーンを破壊しよ うとしている。音が悪く拙速だ、と抵抗勢力の遠吠えが聞こえるが、 やがてどちらが残るかは明らかだろう。

そこで改めてソニーの功績をあえて問う。そもそもソニーは本当に イノベーターだったのか?もしイノベーターならいったい何を破壊 し、そのあとに君臨したのか?それまで宅内で楽しむミュージック シーンを破壊したわけではない。あえて言えばラジカセ市場を破壊 したくらいだろうか?それでも大きいといえば大きいが、現実にラ ジカセは残っている。まったく破壊されたわけではない。

ソニーは破壊的創造を行ったのであって、創造的破壊をしたのでは ない。その理由はその後も新たな破壊を起こしていないからだ。と 考えると、日本のイノベーションの歴史も変わってくる。まだ日本 がイノベーションで世界を席巻した事例は少なく、燃えつき症候群 になる暇はないことになる。

以上

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