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「自動運転×ウーバー」覇者は?

〈2016年 9月 10日〉

表題は9月6日の日経新聞朝刊に掲載された、英エコノミスト記事 の翻訳からの引用記事である。多くの方が読まれたはずだ。今回こ のテーマを借用して議論したい。

そもそも自動運転とかウーバーは、市場だけでなく社会のどんなニ ーズに対して、革新的な影響をもたらそうとしているのか?まずこ れを整理する必要がある。現代社会において、自動車は非常に重要 なライフラインであり、私財・社会インフラを問わず資産としても 非常に大きな部分を占めている。

しかし一方で、自動車のための道路整備、過去の道路インフラのメ ンテナンスに膨大なコストがかかり、現在そして将来に対して非常 に大きな負担となりつつある。また自動車の出す排気ガスが環境に 与える影響は、将来の人間社会の存亡にかかわるほど重大な問題と なりつつある。

これらを解決するコストを考えると、非常に非効率なセクターとな りつつあるのが今の自動車社会でもある。これらの問題のソリュー ションとして自動運転、ITアプリのウーバーが登場しているわけだ。 そしてその背景にはITからAI技術への革新的進化がある。

つまり自動運転、ウーバー革命の本質は、非常に効率が悪くなった 自動車社会を改善して、効率性の高い市場、社会システムに移行し ようという革命であると言えよう。その証拠に日経新聞の記事では、 ウーバーが実行されると自動車が8−9割削減できるという見解を 紹介している。

今の自動車社会で、自動車が8−9割なくなると言う事は非現実的 としても、大きく削減できれば、それによる道路インフラの整備、 温暖化対策にかかるコストも大幅に削減され効率の良い社会になる 事は明らかだ。

一方、ここ数年私共が研究の主軸としているテーマに「回遊性」と いう概念がある。ご存知の方もおられると思うが、様々学会、大学 で論文掲載されオーソライズされつつある概念である。

私共が定義する回遊性は、初動目的を達成する事によって得る満足 に飽き足らず、更にそれを超越する超過付加価値を求めて人は回遊 する。そしてその超過付加価値は人の成長に必要不可欠なものであ る。という考えである。

人は食事をとるために米、おかずの食材を求めて買い物にでかける。 これが初動目的である。その目的がほぼ達成できた時点で、更に何 か目的もなく何かを求めて寄り道をし、時間をかけて漠然としたも のを探す。そこでサプライズ的にひらめいた「もの」に喜びを感じ、 価値を見出し余分に購入する。これが超過付加価値である。

人の成長は、この初動目的達成満足価値と超過付加価値の合計によ って成長する。魚には鮭などの回遊性生物がいる。鮭は季節の物見 を楽しむための回遊するのではない。最適な価値を求めて続けて鮭 は移動し、それが鮭という非常に生命力強い成長に不可欠な価値で ある。

回遊性動物には大型マグロ、ウナギから、小さな貝類まで実に多様 だ。人も回遊性を習性として、それによって得る初動目的を超える 超過付加価値によって成長してきた。この回遊性を実現するビジネ スモデルが現在存在する非効率とされる車社会である。

一人で寄り道ができる極めて贅沢で非効率な社会システムである。 もし初動目的の達成だけで、それを超過する付加価値の取得が必要 なければ、何も自動運転、ウーバーが登場しなくても車台数を大幅 に削減して、環境を破壊する道路インフラも作る必要はないだろう。

しかしそれでヒト成長に必要な付加価値を担保できるだろうか?新 聞記事にあるように自動運転VSウーバーで、二者択一でどちらか しかない社会は、さぞ効率的だろうが、人の成長に必要な付加価値 ニーズを満足する事はできないはずだ。

二者のどちらかでしかない社会では、今までヒト成長に必要な付加価値創造を担ってきた車 社会に変わる新たな社会システムが必要になるはずだ。都市型のラ イトレール(市電、チンチン電車)かもしれない。ドローンなのか もしれない。しかしそれは新たな未来都市のイメージでしかない。

自動運転×ウーバーの覇者が自動車でない事は確かだ。自動車産業が二者以外の選択肢を模索する必要がある。そうでなければ、新聞にあるように自動運転、ウーバーによって身軽な車社 会になるという事は、自動車産業が主軸のこの地域経済にとって、 どのような影響があるのか?先送りできない問題だ。

以上

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