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主宰:川津商事株式会社
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三河から見た栄は?

〈2016年 8月 30日〉

東京の不動産ビジネスはクレイジーだ。これは東京の知人からいた だいた暑中見舞いの挨拶だ。倍々ゲームをさらに上をいく状況だ。 さらにホテル建設の規制緩和が、競輪の最終コーナーのジャンを鳴 らしっぱなしにしているようだ。

さて、前回のお叱りを恐れず果敢にチャレンジした名古屋の都心か らの資本逃避による栄のリスクに対して、無視できない程様々な反 響をいただいた。いただいたご意見、お叱りを要約すると名古屋か らの賛同より三河、トヨタサイドからの反論が多く、前回のニュー スレターが名古屋からの視点に偏向し過ぎたことになります。三河 サイドから見た名古屋というのも論考する必要を感じます。

一番強烈なご意見は、名古屋が今まで三河に何をしてくれたんだ。 今さら名古屋のアッシー、貢君にはなりたくないというご意見があ りました。弊社が言う豊田から栄名古屋駅への交通アクセスが必要 というなら、なぜ万博の時のリニモを都心から走らせなかったの か?そもそも名古屋市は三河に協力する気がなかった。等々お叱り がありました。

ひとことで言ってしまえば、どこにでもありがちな地域間のわだか まり、そして行政自治体のプライドのぶつかり合いですが、これら は下手にこじらせると外部不経済要因になり、非効率になる。現在 の名古屋と三河に限らず、今そしてこれからのビジネスは従来の行 政単位の規模で収まることはない。まず関係自治体が枠を超えて良 好な関係を持つ必要がある。

弊社をはじめ、名古屋で名古屋の街づくり、名古屋の都市経済に関 心がある者に共通していることは、名古屋の中心は栄であるという ことである。著名な論考はすべて栄から始まっている。しかし栄が もたもたしているうちに、東京資本がステークホルダーである名古 駅エリアが急成長してしまった。関心が移ってしまっているのは 事実である。それでも栄は中部地方の中心地という考えがある。

しかしこの考え自体が、井の中の蛙かもしれない。三河サイドから 見ると、現状自動車の利便性はセントレアへももちろん、そのほか 東名、第二東名、東海環状道、伊勢湾岸道路などが整備されて申し 分ない。名古屋駅へも今後40分でつながれば問題ない。栄に出る必 要なないわけだ。

栄に行かなくても、更に上位の市場である東京、更に海外へのアク セスは十分に整っていることになる。そもそも最近三河に全国から 転入してきた人たちにとっては、縁もゆかりもない栄に対する関心 はそもそもないわけだ。セントレア、安城、刈谷、名古屋駅に出ら れれば十分であり、現状車でのアクセスは極めて良好なわけだ。

栄の停滞は名古屋の問題だろうと言うのが、三河サイドから聞こえ てくるわけだ。名古屋駅前エリアが成長すれば栄は必要ないという ことになる。これまで名古屋が上目線で周辺を見てきたことは想像 できる。名古屋、栄のステークホルダーが猛省しなければならない 点である。

しかし三河に蓄積する富を拡散してしまうのではなく、効率よく投 資消費してその成果がフィードバックされて、さらなる地域の資本 の蓄積に貢献する仕組みを作らなければならない。トヨタ自体が企 業としての黎明期から地域のリスクトレランスによって支えられて 成長してきたことを見ればそれは明らかである。

バキュウムのように地方のエネルギーを吸収し続ける東京、スポン ジのようなグローバル市場にアクセスできるからと言っても、それ はフィードバックの期待できない拡散、流出でしかない。かつてネ ットサーフィンという言葉があったが今では死語となった。これは ネットの世界を無限の拡散する輩はやがて消えてなくなることを意 味している。求心力をもって回帰して初めて成果が出てくる。

産業クラスターの富の蓄積の受け皿となる大消費地との関係性が構 築されて初めて、投資、貯蓄の効果がフィードバックされるわけだ。 戻ってくる関係を持つ必要があるわけだ。シリコンバレーにはロス、 シスコなど高等教育機関が充実した消費地がある。イタリア、コモ 湖周辺の繊維産業の産業クラスターは、大都市ミラノと密接な関係 を持っている。

産業クラスターに精通する学者は産業企業間のネットワークを必要 条件とするが、私どもからする投資と消費の受け皿となる大消費地 との間でその成果がフィードバックする関係性があって初めて産業 クラスターが成立すると考える。

世界的に著名な歴史家であるブローデル・Fが言うには、都市は変 圧器であるとしている。都市に流れ込んできたエネルギーをさらに ボルテージを上げるのが都市であるわけだ。また変圧器だけでなく 発電機であるというのは日本の著名な経済史の大家である中野忠氏 である。エネルギーを発電する所であるわけだ。

彼らに共通しているのは、変圧器にしても発電機にしてもそれを支 えるのは配電システムのネットワークであるという点である。都市 がエネルギーを吸収するネットワークシステムがあってこそ初めて 都市が変圧器、発電機となりえるわけだ。

これを実践して成長しているのが東京である。東京は日本中からエ ネルギーを吸収するネットワークシステムをハード、ソフト両面か ら常に整備し続けて、一極集中システムを構築して世界に関たる都 市に成長している。

名古屋そして栄が三河と効率の良いアクセスするのは、もちろん三 河のためでもあるが、名古屋栄のためでもあるわけだ。栄だけの都 合で言えば、名古屋駅前に比べて投資がほとんどなされていない。 期待される案件はいっぱいある。中日ビル再開発、丸栄関連再開発、 三越百貨店再開発、教育館・・・なんといっても栄のドン真ん中に 空き地もある。

これらのプロジェクトはなぜ進まないのか?何を期待して待ってい るのか?豊田と栄、名古屋駅を30分でつなぐことができる弾丸新 交通システムができれば、これらの投資を後押しする投資マネーを 呼び込むことができる。一気に栄がバブルと化すことが期待される。 それが栄の地価を押し上げ都市の価値も上がる。名古屋駅前バブル の再来である。

現状を見る限り、これらの問題を今の政治・行政では解決できない だろう。栄のステークホルダーが後押しする必要がある。

以上

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