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主宰:川津商事株式会社
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地域資本の蓄積が進まない名古屋都心部

〈2016年 8月 15日〉

残暑お見舞い申し上げます。トヨタ系列企業の夏休みは21日まで あると聞きます。今年のお盆休みはどんなお過ごしでしょうか?例 年の鬼の居ぬ間に勝手なことを言う号をお届けします。常日頃お叱 りをいただいている方、栄の関係者は読まないでください。

栄の久屋大通にあった或るこじゃれたフレンチが閉店して、新たに 刈谷にレストランを開いた。このシェフはパリの一流ホテルでのキ ャリアを持った人である。三重県で有名なあるパン屋のチェーン店 が大府に愛知県一号店を出した。

安城、刈谷、大府は行く度に新しいパン屋、カフェ、レストランが 登場している。名古屋の栄、センパに登場するありがちな店よりは るかに目新しい大きな投資を呼び込んでいる。2000年以降、世界で も1ー2位を争う車の生産台数を誇るトヨタ工場群のエリアで蓄積 する資本の“滞留”が感じられる。

弊社では三河の輸送機器産業クラスターの資本の受け皿として名古 屋という大消費地が機能すると、消費、投資、貯蓄の相乗効果が上 がるとしてきた。大都市というフィルターを通して消費投資の効果 が産業クラスターエリアにフィードバックさせるからだ。産業クラ スターとは隣接する大消費地とともに進化する。これは世界中の大 都市と産業クラスターの関係性である。

しかし、最近どうも名古屋がその受け皿となりえていないのではな いかという疑問が生じてきている。それが最近に安城、刈谷、大府 といったエリアの活性化である。消費の受け皿が名古屋でなくて三 河でなぜ悪いか?けして悪くはない。しかし高付加価値、高いレベ ルへの教育・医療への消費、新しいものへの投資がイノベーション を生む要素にフィードバックされる。

産業クラスターは単なる工場群ではない。クラスターはイノベーシ ョンが生じるエリアである。イノベーションは様々な新しい多様性 の干渉によって生まれる。その可能性が大消費地、大都市にあるわ けだ。つまり大都市に求められるニーズもそこにある。

にもかかわらず、学校の教育水準が名古屋より三河エリアが高くな り、三河エリアの研究が名古屋大学を通り越してグローバルな研究 機関に研究費が流れ始めている。名古屋大学も地域にへの貢献より、 より高いグローバルレベルで評価を得るような高い基礎研究である ノーベル賞レベルの研究に関心が行ってしまっている。

そもそもアクセスインフラが名古屋に行くのも東京、そして世界に アクセスするのも大して変わらない。アクセスの効率が悪ければ投 資の受け皿である役割を都市である名古屋が機能しなくなる。もし くは効率的に名古屋に投資、消費を呼び込めていないため、地域エ リアの三河で資本の蓄積の滞留が起きてしまっていると言わざるを 得ない。

弊社はかつて名古屋がデトロイトになることはあり得ないとしてい た。その理由は三河の富の蓄積の受け皿が隣接する大都市である名 古屋となり、名古屋での投資消費の効果が三河にフィードバックさ れることにより三河が発展する限りデトロイトになることはあり得 ないという考えからだ。

しかし大消費地名古屋とトヨタ企業群のエリア間のアクセスが非効 率で、アクセスの生産性の向上が見られない限り、富が名古屋に移 転することなく他に拡散流出してしまう。トヨタだから名古屋に投 資して当たり前だとでも思っているのだろうか?投資を誘引する努 力をする必要がある。都市の魅力づくりそのものである。

名古屋のある有識者の話である。五輪開催の影響で、関東エリアで 開催予定の様々な見本市が開催できない。それの代替地として名古 屋、セントレア周辺に展示場を作る話がある。名古屋にとっては絶 好のチャンスである。しかし役不足だという話である。

名古屋の関係者は作れば勝手に来ると勘違いしている。他の地域が ものすごい勢いで誘致合戦をすでに行っていることを認めようとも しない。重要なのは器以上に来る仕組みづくりである。しかし名古 屋ではその必要性をわかる人がいないとのことである。

事業主体がJRでも名鉄でも、市でも、県でも、トヨタでも構わない。 トヨタ自動車本社あるいは元町工場玄関から名古屋大学、栄を経て 名古屋駅まで約30分で行き来できる都市間交通の弾丸列車などで、 都市間交流のアクセスを革新的に向上するシステムに対する要望が 出てこない。

せめて金山から名鉄を栄に引き込み瀬戸線に直結させる方法を考え るとか、リニアのような何かわくわく感が地域間交通にもほしい。 大消費地栄が富の受け皿となる仕組みづくりである。

特に栄のステークホルダーは押し黙ったまま何も主張しない。ただ 黙って座している。以前より、栄の地価が名古屋駅前に抜かれても 一切不平が聞こえてこない。東京ではありえない。東京の地価が下 がるような都市政策はあり得ない。即都知事の入れ替え要求が起き てくる。

東京一極集中を唱えるいわゆるリベラ知事は機能しない。今回の都 知事選で東京ステークホルダーはどう動いたのか?東京の富が五輪 という名のもと流出することを嫌い、もっと東京の暮らしのスマー ト、セキュリティーにお金を使えという要求をわかりやすく聞き入 れたのが今回の小池百合子である。他の候補者の主張では東京のス テークホルダーの要求は満たされなかったのである。

栄のステークホルダーの代表は名古屋の旧財界と行政、そして栄の 地権者、経済的取引関係者、そして栄を自分たちのシンボルと考え る地域である。極端な話、名古屋城を作るより先に栄と三河の間に 最新の都市間交通を敷けという要求が上がってもおかしくないが、 まったく聞こえない。これは結果的に栄だけの問題ではなく名古屋 圏の将来の問題でもある。

「愛知は車社会だから鉄道システムを持ち出す者は、トヨタに唾を 吐く輩だ。」こんなレベルの低いことをいう人がいまだにいるのだろ うか?発展しなければ車も増えない。デトロイトのようなルーイン サイト(朽ち果てた都市)になってしまえば車も減ってしまう。

従来、大都市が高度に集積することにより新しい交流、イノーべー ションが生まれていた。しかし今の政策は、郊外で経済特区を作っ てそこで政策を実現しようという考えだ。これは今の大都市には岩 盤規制が多すぎ、新しいものに対して機動性をなくし、かえってイ ノベーションを生むには弊害になっていることを意味している。

これでは近い将来都市の空洞化は避けられない。これが大阪、名古 屋の現実である。都市が既得権益に胡坐をかいた時点でアウトだ。

もちろん様々な創意工夫によってエリアの価値は作られる。しかし 根本的な基盤整備なくして栄などのような大都心部の隆盛はあり得 ない。名城線ループ化などは10年も前のことである。栄のステーク ホルダーは、栄の再生を本当に望んでいるのだろうか?

以上

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