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主宰:川津商事株式会社
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地価が高いブランドエリアには地下街はない

〈2016年 7月 20日〉

今度のイギリスの首相は女性である。以前、世界で活躍する女性リ ーダーたちの特集記事で、活躍する女性リーダの特徴は、男社会の プライド、しがらみ、理屈でにっちもさっちもいかなくなり煮詰ま ってしまった問題、組織そして社会を、女性たちが解きほぐすとあ った。さてどんな第二の鉄の女が登場するか注目したい。

祝シンフォニー豊田ビル。大名古屋ビル、JPビルとは違った盛り上 がり方である。トヨタ資本は地元資本とは言えないが、東和不動産 は地元資本と言えるはずである。やはり地元資本の都市開発と言う ひいき目もあるかもしれない。

名古屋駅前エリアは良いも悪いも大通りで寸断されたエリアで構成 されている。西区側の名駅2丁目、桜通で分けられる名駅3丁目・4 丁目、江川端線東の5丁目、そして広小路通りより南の名駅南1丁 目と分かりやすい。シンフォニー豊田ビルは名駅4丁目に位置する。 そしてこの名駅4丁目にはシンフォニーに先立ち、ウインクあいち、 名古屋クロスコートタワーが登場している。

このウインクあいちは県という地元行政資本であり、更に先にオー プンした名古屋クロスコートタワーも地元財界資本である。名古屋 駅前エリアは全体的に東京資本の街である。東京一極集中により日 本中の地方地元資本が東京に吸収されたことによって、地元資本で 形成されたエリアが成長を伸び悩んでいる。名古屋でいえば栄がそ うである。

これに対して東京に過剰に資本が集積してあふれ出したマネーが流 入したエリアが、今、全国で新興エリアとして台頭している。福岡、 名古屋、札幌、横浜のJR駅前などがそうである。しかし東京資本の 相乗効果を受け地元資本が相乗効果的に芽を吹きだしたのがこの名 駅4丁目エリアとなる。

その中でも、ウインクあいちの徴的な役割が存在感を引き立ててい る。様々なイベント、セミナーが開催できる公的スペースを提供し て連日多くの人を集めている。名古屋駅前エリアの交流のメッカと なっている。そしてミッドランド、今回のシンフォニーと映画館が あり人が集まる施設が集積しつつある。又シンフォニーにはホテル の併設があり、これも人が交流する場所になる。

もしこのエリアに109のような若者の物販聖地があると、まさに渋 谷のようなエリアになる。名古屋では109に相当する若者の物販施 設は近鉄パッセなどがあるが、この施設も広井町線を挟んで隣接し ている。駅前再開発でどうなるかわからないが、できればエリア内 でほしいところだ。

渋谷は坂のある道路が入り組んで、いい意味でブラインドを演出し てたエリアで、多くの人が交流するクリエイティブな施設が集積し た街である。もしもエリアを更に名古屋の渋谷エリアにするために はなのが必要だろうか?

まず渋谷を代表するようにスクランブル交差点が中心に位置するこ とが必要になる。今の近鉄パッセの正面あたりの広井町線に大きな スクランブル交差点が登場すると、人の流れを大きく変えるかもし れない。これは今構想されている駅鉄道ビル群の再開発の回遊性と 人の取り合いを意味している。

独占排他的に人の回遊性を取りこもうとすると、明らかな回遊性の 衝突としてアリアにとってはマイナスの外部不経済要因になる。都 市としては輻輳する回遊性の生産性を高める工夫こそが必要になる。 その一つがスクランブル交差点でもある。

渋谷をまねる必要はない。しかしビジネス街にありながら多様な人 の交流があり、ライブハウス、様々なイベントなどのクリエイティ ブな拠点となり、サブカルチャが生まれると、これは名古屋駅前エ リアにサブカルチャーの多様性が生まれる可能性がある。大いに期 待できるエリアである。

問題は、日本のトップクラスのブランドエリアには地下街がないこ とである。渋谷も、銀座も、原宿もそして栄の大津通りもしかりで ある。これらの特徴は、官能都市の概念で考えると、散歩ができ、 自然を感じ、喧騒があり、においがする魅惑の都市である。

地下街とそのエリアの地価の関係を示す理論的な論文が見当たらな いので確固たることは言えないが、地下街がある通りは地価がそれ ほど上がらない。それほどというのは銀座、原宿、大津通りのよう にという意味だ。

確かに鑑定の現場でも、収益還元法で地価を出すときに、地下街が ある土地は、その地上に作られるビルなどの収益に地下街の賃料な どを更に加算して評価することは聞いたことがない。地役権は存在 するが、公的な道路の地下にある地下街等、地上の道路サイドの民 地の地役権に関係がなければその地価には反映されないことになる。

逆に地下街があることによって人通りが分散されるのであれば、む しろ収益評価の計算上は地下街の存在は地価を押し上げる要素には なっていない。そもそも地下街の収益性は地価経済の領域ではどこ に加算されているのだろうか?

当ニュースレターでも紹介した「官能都市」は都市の評価の一つの 指針である。この官能都市で評価される「セミナー」「イベント」「路 チュー」「道草」「ミシュランのレストラン」「ナンパ」「夕焼け」と いうキーワードは地下街では成り立たないものばかりである。これ らで評価される都市の魅力は本来路面にある。

栄のナディアパークエリアも地下街がなく、路面の魅力を謳歌して いるエリアである。名古屋では珍しく表通りではなく裏通りを面的 に進化したエリアとして評価が高い。裏通りにもかかわらず衣料の 物販店がどんどん登場してまさに散歩したくなるエリアと言える。 大人ではない未完成の若者の街だ。

破たんした都市として有名なデトロイトが、今、都市型路面電車で 地域のコミュニティーを再生しようとしている。路面で駅ができそ こで人の交流が生まれることは、街の再生の「見える化」である。 見える化は現在の競争優位戦略の重要なポイントである。地下街で は見えない。

愛知、名古屋の都市マネジメントのコンセプトは、自動車の利便性 を高くして、都市の生産性を高めてきた。これが都市としての競争 優位になっているのは明白である。しかしそれは一方で道路幅が非 常に広く商店街が育ちにくいという欠点を持っている。この欠点を 補完するために通路幅を狭くした地下街が有効に機能している都市 である。桜通のユニモール、久屋大通のセントラルパーク・オアシ ス21、名古屋駅太閤口のエスカ等である。

大津通りでは、かつて大津通り商店街のパワーステークホルダーが 地下街に対して理解がなかったという話を聞く。その結果がいまの 大津通り商店街の隆盛になっているともいえる。広小路通りにも地 下街がない。広小路の路面の魅力を保っている。

しかし名駅4丁目のような表通りに囲まれた面的エリアで、これだ け人が交流する施設が集積しているエリアでは、むしろ屋外路面の 素晴らしさを押し出すメリットがあるはずだ。渋谷型というにはエ リアが小さすぎるが、少なくともナディアパーク型の路面店が賑や かしく、その結果が地価に反映されるエリアを標榜すべきである。 本来土地開発事業者であるステークホルダーが望む点もそこにある はずだ。

いつもながらの勝手なこと言うならば、ミッドランド背後から名古 屋クロスコートタワーそしてシンフォニー豊田ビル前の車道を一方 通行にして歩道を拡大して路面店の収益を重視すれば、名古屋駅前 エリアで初めて散歩、道草がしたくなる上質な回遊性があるエリア が出来上がり、防災面からも機能性が出てくる。近隣地権者と将来 の在り方を模索する必要があろう。

いずれにしても、東京資本の波及効果により地元資本にコミットメ ントされたエリア開発が名古屋駅前エリアに登場したことは久方ぶ りの光明である。さらに栄の地元資本、地元行政資本が触発される ことが望まれる。

以上

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