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主宰:川津商事株式会社
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名古屋市場が伊勢丹に期待するもの

〈2016年 5月 15日〉

自動車の自動運転に対する議論が進み、いろんなイメージがわくよ うになってきた。そこでふと素人的な発想をしてしまった。コンピ ュータがメインフレーム時代IBMという旗艦セクターが成長した。 やがてクライアントサーバー時代パーソナルコンピューターが普及 して多くのパソコンメーカーが乱立した。

自動車も同じようにフォードがT型フォードを世に出し社会にモー タリゼーションを引き起こした。車のパーソナル時代となり多くの 自動車メーカーが登場した。

パソコンは各メーカーが基本ソフトを開発していた。マックも含め てヒューレットパッカー、日本のNEC・富士通などである。やがて ウインドウズなどのパワーOSが登場すると、これらのパソコンメー カーはパーツのアッセンブルメーカになり下がり、パソコン自体が コモディティ化していく。個人でもパソコンパーツを簡単に購入し、 カスタマナイズした組み立てが可能となった。それと同時にパソコ ンメーカーが企業として成り立たなくなり、パソコン自体もタブレ ットにとってかわられるようになってしまった。

では自動車はどうなるのであろうか?単なる自動車を制御するコン ピュターソフトではなく、社会システムと自動車をリンクさせる人 口頭脳いわゆるAI的なパワーOSが登場すると、自動車もパーツ化し アセンブル商品になってしまうのではないだろうか?そうなると自 動車産業はどうなるのであろうか?だれかに明確に否定してもらい たい。

さて前置きはこのくらいにして、伊勢丹ハウスが今年3月に名古屋 駅前に登場した。伊勢丹ハウスはその後どうなのだろうか?という 質問を各方面から問われる。特にアパレル従事者から聞かれること が多い。そもそも名古屋の市場は伊勢丹の何に何を期待したのであ ろうか?

伊勢丹の新宿店は、以前からそして今も百貨店業界の頂点に君臨す るビジネスモデルである。特にアパレル業界をけん引するモデルで ある。

2013年の年間売り上げで、伊勢丹新宿店が2654億円、2位阪急梅田 本店1922億円、3位西武池袋店1844億円、4位三越日本橋本店1736 億円、5位高島屋横浜1353億円、6位高島屋東京1299億円、7位松 坂屋名古屋店1241億円、8位高島屋大阪、9位JR東海高島屋1204 億円である。

しかし新宿以外の伊勢丹百貨店店舗は浦和、立川が序列上つらなる が、これらは売り上げランクで40位から50位台まで下がる。因み に名鉄百貨店が35位である。つまり伊勢丹百貨店すべてではなく、 伊勢丹新宿店だけが突出しているわけだ。皆が騒ぐ伊勢丹のビジネ スモデルとは、新宿伊勢丹のビジネスモデルであり、他の伊勢丹店 舗のビジネスモデルとは違うわけだ。

新宿伊勢丹に商品を卸すアパレルメーカー・商社は、季節ごとに発 売するトップモードをいち早く投入し、そこで成功することがその 後の市場を席捲する成功商品となるわけだ。その為にメーカからの 派遣社員もそれらを売るための意気込みも全く違う。伊勢丹新宿店 で働くプライドがあり、決してスタンドプレーすることなく店舗全 体で伊勢丹新宿店の売り上げにコミットメントしている。

そして伊勢丹に買いに来る購買層も、季節に先駆けて登場するトッ プモードをいち早く購入できるいわば市場のトップの購買層である。 彼らこそ次の季節のファッションの先駆けとなり、それに対し価値 を見出せる消費者リーダーである。

それに比べて、おそらく百貨店上位ランクといえども2位以下の百 貨店はステレオタイプのコマーシャル、プロモーションでさんざん 見慣れて、購入を検討し、他と比較しまくり、迷いに迷って、それ をあわよくばクリアランセールで購入しようとする購買層が多数を 占めている。追随者である。

名古屋などの地方都市の市場購買層が、来季の最新のファッション を見てすぐそれを手に取り価値を見出し購入できるだろうか?おそ らくあっちの店舗でも見かけ、こっちの店舗でも見かけた、だれか 知り合いが着ていたブランド商品の少しだけ差別化された商品によ うやく財布が開くのがせきのやまである。

名古屋にも伊勢丹に商品を納入しているアパレル商社が多くある。 しかし彼らが地元だからと言って名古屋の百貨店に季節のトップモ ードを最初に投入するかといえばあり得ない。

伊勢丹は単に他の百貨店とは差別化した商品開発をするのではなく、 先端の商品の提供を行うのがビジネスモデルである。名古屋の消費 者が、初めて見る商品にその先の季節のファッションリーダーをイ メージしてその場で購入することができるだろうか?これができな ければ、新宿伊勢丹のビジネスモデルは空を切ることになる。大阪 の伊勢丹の失敗もここにあったのではないだろうか?

名古屋の百貨店は売り上げランクにして7-8位である。このような 市場はファッションリーダー追随型市場でしかない。クリアランセ ールを当てにする消費者が大勢を占める市場である。そして名古屋 にいるファッションリーダーはやはり新宿伊勢丹に行く。

さて名古屋駅前の伊勢丹はどのようなポジションをとることになろ うか?立川・浦和などの中堅駅ナカビジネスになる可能性もある。 必要がある人は、いずれリニアができれば、今以上に便利に新宿伊 勢丹に行けるから特に大きな問題はなかろう。

以上

イセタンハウス新宿伊勢丹名古屋駅前消費者ファッションリーダー